第19話 マルクの正体

バァァァァァン!


けたたましい音を立て爆発が起きる。


[転移]


シンはサナカを抱きかかえ、空に移動する。


(危なかった〜。ユーリ対策のために試合の初めからずっと空間干渉に集中してたのにオルトが危ないって言ってから目の前に来るまで気配すら感じなかった)


シンを襲ったのは魔法を全て貫通するミサイルだ。この世界だったら核よりタチが悪いだろう。


これはサナカさんを狙った攻撃かな?多分そうだよね、今回と僕は巻き添えか…………。なんて思い、シンは肩を落とした。


「サナカさん大丈夫?」


「は、はい。大丈夫ですよ」


サナカが頬赤らめてそう言う。


「あの、シンさん助けてくれてありがとうございます……………」


「サナカさんが無事でほんと良かったよ」


「そ、そうなのですか……………!」


サナカの頬はさらに真っ赤に染まった。


「シン!無事か!」


オルトの焦った声が聞こえた。


シンはオルトの方に戻ることにした。


「無事だよ」


「さすがだなシン」


「あの爆撃から逃げれたの?」


ルイは驚いた顔をしていた。


シンはサナカを降ろし、これからどうするかを考えていた。



「あなた、今何をしたのですか?」


エナはマルクに剣を向ける。警戒し、マルク を注意深く見ていたエナは彼が犯人だと見抜いていたのだ。


「どうして私を疑うのですか?証拠も無いのに、失礼なのでは?」


「あなたが別の人間に指示を出しているのを見ました。その瞬間、シンくんとサナカさんがいた場所で爆発が起きた。あなた以外で誰がいると言うのですか?」


するとマルクはため息を吐き、口を開く。


「さすが黒の騎士団の騎士団長といったところですね。あなたの目を騙すことは難しい」


「あなたは何者なんですか?」


エナはマルクを睨みつける。


「私は狂犬───」


それを聞いたエナはマルクに向かって思い切り剣を振るった。


「なっ!?」


その県はマルクには当たらず、その場に止まった。シンとは違う、別の力に押し返されているようだ。


「殺戮担当エースと申します」


マルクと名乗っていた男の正体、それはエースだったのだ。


剣を振るわれているというのにエースには全く緊張感がなく、不気味な笑みを浮かべていた。


エナは後ろに飛び距離をとる。


「狂犬…………。あなた達はどうしてこんな事をするのですか?」


「僕の目的は対象を殺すこと、組織の目指すところなど興味がありません。まぁ王女さんならだいたい分かると思いますけど」


エナは剣に炎を纏わせ、エースとの間合いを詰める。


エースに近づく程に剣は重くなり、ついには動かなくなった。


「あなたはお強いみたいですが私の脅威にはならなそうですね」


「とりあえずそこで寝てください」


エースがそう言った瞬間、エナは見えない何かに押しつぶされ、地面にうつ伏せた。


「な、なんだ…………?」


どれだけ腕に力を入れても、地面が凹んでも、エナは起き上がれない。


「今回の目的は終わりました。シンくんはあのミサイルを避けられない」


「ミサイル?」


「ええ、魔法貫通のミサイル、貴重なアーティファクトなので使いたくは無かったのですが、試合を見ていても彼の魔法は分かりませんでした。なので仕方なく使うことにしたんです」


「その程度でシンくんがやられるわけ無いでしょ。現に映像には彼が映っていますし」


それを見てエースは驚いた顔をした。


『もう一発打ってください』


エースはまたしても指示を出す。


だが応答がないのか、エースは何度も同じ指示を繰り返した。


「これは面倒な事になりました…………。なら、私が直に叩くことにしましょう」


「それを私達が許すとでも?」


「君達には他の駒を当てさせてもらいますよ」


「ではまた後ほど」


そう言ってエースは特別席の部屋から出ていった。



(雑魚はこんなもんかな……………)


シン達は周りにいるエースの仲間を全員倒し終えていた。


「こんな者たちに私達は殺られそうになったとの事ですか。とても恥ずかしいことですね」


「だね…………」


確かにシンはオルトから声をかけられていなければ食らっていただろう。


「シンくん!大丈夫だった…………みたいね」


そこへシエナが走ってきた。


「うん、こんなもんなら余裕だよ」


「シエナさんがシンさんと仲良くする理由が何となくわかりました。私もシンさんとは仲良くしたいと思いましたし」


サナカはシンを気に入ったという。


「そうなんだ。でもシンくんはアルカディア学園の生徒だし、サナカさんとシンくんが仮に友達となったとしてもなかなか会えないと思うし…………」


シエナは必死にサナカとシンが仲良くなることを止めようとしていた。サナカにボロ負けしたシエナは少し自分に自信がなくなり、シンを取られてしまうと思っているのだ。


「そこは問題ありません。私が会いに行くだけですから」


サナカは満面の笑みを浮かべる。


シエナにとっては大問題だ。


「そんな事よりよ。今からどうするだ?」


オルトが話しを戻す。


シエナは顔をハッとさせた後、真剣な顔になった。


「みんな着いてきて、姉さん達と作戦を決めるよ」


「それは私も参加してよろしいのですか?」


「ええ、今回はサナカさんの力も借りたい、と姉さんが言っていたからね」


それほどまでに敵は強者だということだ。シンは胸を高鳴らせていた。

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