第17話 王女vs王女

三回戦、準決勝でもも シン達はミカエル学園の生徒に難なく勝っていた。


そうしてついに始まる。両王国の王女たちの戦いが───。


欠伸をしていた生徒たちも皆この試合にだけは目をかっぴらいて眺めていた。


あのシンでも少し興味を持っていたほどだ。


だからこそ、シエナはプレッシャーを感じていたのだ。


「シエナ王女、大丈夫ですか?」


この試合が近づくにつれて口数が少なくなっているシエナを見てユウキは心配していた。


「うん、大丈夫だよ」


シエナは無理に笑みをこぼしていた。


「とにかくこの試合も勝たないとね」


「ええ、そうですね」


シンくんと戦ってみたい、シエナはそうも思っていた。


『試合開始!』


その声と同時に両生徒からの声援が会場を包み込む。だがその声が本人達には聞こえていない。


シエナ達は周りに意識を集中し、ある人を警戒していた。


そう、色彩魔法を使う、ユーリだ。


意識していなければ気配すら感じない。本当にタチの悪い魔法だ。


「シエナ王女、辺りに気配はありません」


「そうだね」


じゃあ少し詰めるよ、とシエナは続け、前へと進み出す。


「見えたよ……………」


サナカ達を見つけたシエナは少し焦った顔をした。


そう、ユーリの姿が無いのだ。


すると後ろにいた一人がうっ、と呻き声を上げた。


「ユウキ、後ろ!」


シエナの支持に従いユウキは剣を抜き、後ろに振るう。


カンッ!


見えない空間に何かが当たった音がした。


「シエナ王女!」


[雷速斬]


シエナは瞬間的に剣を抜き空間に抜け攻撃した。


手応えは十分にあった。


「ぐっ───」


色彩魔法が解け、ユーリの姿が鮮明になった。なんとサナカの側まで戻っていたのだ。


「ユーリ、良くやりました」


「すみません、限界です」


ユーリは意識を失った。


これにて二対二となったのだ。


「サナカさんは私がやる、ユウキはもう一人をお願い」


「わかりました」


ユウキは草原をモンスピードで走り、サナカの後ろにいる男に間合いを詰め始めていた。


「乗ってあげましょうか」


サナカは不敵な笑みを浮かべた。


シエナは[雷速斬]で一気にサナカとの距離を詰める。


「[氷魔法]」


するとシエナが来ている方に向かって氷の塊が地面から生えてきた。


「───っ!?」


シエナはギリギリのところで後ろに飛び、それを避けた。


サナカは氷の塊を飛ばし、追撃する。


シエナはそれを避けるのに精一杯なり、なかなか距離を詰められない。


(このままやっててもサナカさんに近づいけない。なら───)


シエナは仕掛けることにした。


[雷魔法]


サナカに向け雷を飛ばし、牽制する。


サナカがそれを避けている間にシエナは間合いを詰めた。


またしても地面から生える氷の塊、だがシエナはそれをも砕き、サナカに近づく。


シエナはある予測をしていた。シエナと距離を取ろうとするサナカは魔術士なんだろうと。


その予測はあっていた。現にサナカは腰にすら剣を持っていない。


だがシエナが振り下ろした剣は防がれた。


「危ないですね」


サナカは氷柱の形をした氷二本で受け止めていたのだ。まるで双剣のような使い方だ。


「近距離もいけるんだ」


シエナは一歩引きもう一度剣を振るう。


カン、カン、カン


シエナとサナカは激しく打ち合っていた。


お互いに魔法を使いながら打ち合うその器用さに会場は大盛り上がりしていた。


「なかなかやるわね」


「あなたもやりますね」


「でも近接は私の方が上みたいね」


「どういう意味でしょうか?」


するとシエナはサナカの前から消えた。


サナカは周りを警戒し、シエナをおう。


するとサナカの視線の端ににシエナが映り、サナカは氷柱を振りながら顔を向ける。


だがそこにはシエナのすがたはなかった。


「こっちよ」


既にシエナはサナカの背後をとっていたのだ。


シエナはサナカの顔に蹴りを入れた。


「がはっ───」


サナカはカードを出来ず、蹴りをもろにくらい地面を転がった。


「サヤカ王女!」


ユウキと戦っていた男が視線をサナカに向けた。


「なに目を逸らしているのですか?」


「[魔力斬]」


ユウキがよそ見をしている男に魔力の斬撃を飛ばす。


「ぐはっ───」


その男はもろにくらい、動けなくなった。


「ほんと、使えませんね」


さっきまでの穏やかさが消え、サナカからは身を振るえさせるほどの寒気を感じる。


「良くも私の顔を蹴ってくれましたねシエナさん」


サナカの口からは血が出ていた。


「シエナ王女、援護します」


「サナカさん、これで終わりよ」


シエナは剣をかまえなおす。


「ふふっ、私はまだ全力を出していませんよ」


「[絶対零度]」


するとサナカの足元から地面が一気に氷出した。


「何?」


それはシエナ達が逃げる暇もなく広がった。


「あ、足が動かない……………」


ユウキとシエナの足は氷にがっちりと固められてしまい、動けなくなっていた。


「これでも全力では無いのですよ。相手をころしては行けませんから」


シエナの顔に焦りが見えた。


雷魔法を使っても砕けないほどに硬い氷、動かない足。ほぼ詰みである。


「とりあえずあなたからよ」


サナカはユウキの方に目を向ける。


ユウキは剣を構え、攻撃に備える。


サナカは絶えず、氷の塊をユウキに飛ばす。


それを全て避けるなどユウキには出来ず、あっという間にやられてしまった。


「シエナさん、確かにあなたはお強いです。本気の一撃なら私はもう死んでいましたから」


「そうだね。大会ってほんと不自由………………」


サナカはシエナに側まで近づく。どちらも戦う意思はもうなかった、というかシエナが諦めていた。


「今回の優勝は私が貰わせて頂きます」


「ふふっ、そんな簡単にいかないよ。シンくんは強いんだから」


「なるほど、もしかしてシンさんがガウス学園長を倒した方でしょうか?」


それを聞いてシエナは目を見開いて驚いた。完全にバレバレだ。


「やはりそうなのですね。それでしたら私も本気を出さないといけませんね」


「私はシンくんが勝つって思ってるよ」


「同じ学友ですから、応援するのは当然のことです。ですがその賭けは外れるとお考えてください。私も負けるつもりはありませんから」


そっか、とシエナは言い、降参した。


『勝利、ミカエル学園!』


観客ではミカエル学園の歓声が響いていた。もう優勝は確実だという空気が何となく流れていた。


アルカディア学園も同じだ。元劣等生のチームがサナカに勝てるなど誰も信じていない。


「シン、ルイ、全力でやるぞ」


オルトが二人の方を叩いた。


「そ、そうだね………………」


「そうだな!」


げっそりしているルイと楽しみなシン、温度差は見なくてもわかるほどだった。

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