第15話 二校戦②

 二回戦まで暇だな。


 一試合ずつ行われているのでやはり時間がかかる。直ぐに終わる試合もあれば、実力差があまりないからか長引く試合もある。


 シエナの試合は本当に一瞬で終わってしまった。ユウキも一緒に出ていたがほとんどシエナが敵を倒していたのでそれほど活躍を見ていない。


 やっぱ雷魔法は強いな。


 当たれば痺れて動けなくなるのでこの大会では当たれば終わりみたいな最強魔法と化している。


 暇だし魔法で遊ぼっかな…………。


 僕は席を立った。


「シン、どこ行くんだ?」


「散歩」


 席に座りすぎるのは腰が痛くなってしまうのであまり良くない。魔法で遊んでいれば案外時間を潰せるのだ。


 廊下を歩いていると正面からミカエル学園の人達が来た。


 あの目立つ髪色、王女さんかな?


 確か……………サナカさんだっけ?


 僕はそんな事を思いながら通り過ぎようとした。


「ちょっとお待ちいただけるかしら?」


 僕はサナカの方に振り返る?


「そちらの生徒さんから聞いたのですがあなた劣等生とされているとか。お名前は確か……………シンさんでしたか」


「うん、そうだね」


「おい、お前。サナカ王女になんだその態度は!」


 王女の側近って何でこう噛み付いてくるのだろうか。


「ユーリ、慎みなさい。シンさんはアルカディア王国の方です。私を敬う義理なんてありません」


 さっきまでと変わらない穏やかな顔でありながら、謎の圧を感じた。


 シエナさんにもこんな感じなんだけど……………。


「すみませんサナカ王女」


 謝るのは私にじゃない、とでも言いたいような顔をするサナカ。


「ところでシンさんはガウス学園長の事件をご存知ですか?」


「もちろん知ってるよ。あの学園に通ってるからね」


「それもそうですね」


 苦笑するサナカ。


 すると何か見透かしたような目を向けてきた。


「あなたはガウス学園長を倒した方をご存知ですか?」


 どうしよ。僕だって、言うのもなんか面倒くさそうだし、災厄広まってムーブが終了してしまう可能性も……………。


「エナ騎士団長じゃないの?学園に来てたの見たし。変な集団の対処に忙しかったから僕にはわかんないかな」


「……………そうですか」


 サナカはまた穏やかな顔に戻った。


「お時間をとってすみませんでした。もう少しで私たちの試合が始まりますのでこれで失礼します」


「うん、それじゃあ」


 そうして僕はサナカと別れた。


 彼女の試合はちょっと気になるな。戻ってみるか。


 席に戻るとそこにはシエナが座っていた。


「そこ僕の席なんだけど」


「うん、知ってるよ」


「じゃあどうしたの?」


 僕がシエナと淡々と話している姿を見て周りは少し驚いている様子だった。今思えばみんなの前でそんなに話した事はなかった。


「なんて言うか…………クラスに居ずらいの。劣等生を無くしたのは私、みたいな空気があって、特になにかして来たりとかは無いんだけど……………」


 確かに入学式の時、そんな感じのこと言ってたしな。


「それにサナカさんの魔法は見ておきたいから」


「そっか、わかったよ───」


 僕は少し空いている席に無理やり座る事にした。


「ちょ、ちょっと!」


 頬を赤くしてそう言うシエナ。


 シエナとは肩がぶつかる距離になった。


「悪いなオルト」


「おう、大丈夫だぜ」


「シンくん、近い……………」


「シエナさんが僕の席に座ってるからだよ。我慢してくれ」


 なんか顔が赤くなっていたが熱でもあるじゃないかと少し心配した。


『試合開始!』


 そうしてサナカとの試合が始まった。


 サナカのそばに居たユーリと言われる男はが見えなくなった。


「消えた…………?」


 シエナが驚いた顔をした。


「キリコ、あれは何の魔法でしょうか?」


 僕たちの後ろに座っていたクロエがそう言った。


「あれは色彩魔法かな」


[色彩魔法]


 背景に同化して相手から認識しずらくする魔法。カメレオンみたいな感じだ。


 そんな事より、今思った。キリコさんは危ない!


 シエナにはまだ魔法を秘密にしている、だが彼女は一試合目を見ているから多分わかっている。


 シエナさんが興味を持たなければ……………。


「ねっ、ねぇなんでわかったの?」


 目を輝かせてキリコにそう聞くシエナ。


 ま、まずい……………。


「えっ、えっと……………。私はゴットアイを持っているんです……………」


「へぇー!凄いね」


「あ、ありがとうございます」


 キリコは嬉しそうにそう言った。


「待って、ていうことは…………」


 僕の方を見てシエナはニヤついた。


 あっ、やばい…………。


「ねぇ、キリコさん。シンくんの魔法とかわかったりする?」


「はい!分かります」


 キリコは王女さんに話しかけられたことが嬉しいのか簡単に口を滑らせてしまう。


「ま、待て───」


「空間魔法です……………」


「えっ、今なんて言った?」


 あ、危ない。


 咄嗟に思いついた手段、空間でシエナを囲い、キリコの声を反射させて聞こえないようにした。


「キリコ、悪いが秘密にしてくれ」


「あっ、ご、ごめん」


 僕が魔法まで使ってそう言ったのでキリコは直ぐに察したようだ。


「キリコさんもう一回言ってくれない?」


「ご、ごめんなさい。やっぱり分かりません」


「さっき分かるって言ったじゃん……………」


「そ、それは……………」


 キリコは目を泳がせていた。


「シエナさん、試合見なくていいの?」


「あっ、ほんとだ」


 シエナは今までのことを忘れたかのように試合を見始めた。


 試合はもう終わりかけといったところだ。


 色彩魔法を使うユーリが背後に周り一人を倒した。


 それに焦り残りの二人はサナカのいる方へと詰め始めた。


 するとサナカは氷の塊を高速で飛ばしあっという間に残りの二人も倒した。


『勝利、ミカエル学園』


「あれが氷魔法…………」


 シエナは驚いた様子だ。サナカはまだ初歩的な技しか使っていない。まだたくさんの隠し球を持っているだろう。


 その前に二回戦が始まりそうだ。

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