第12話 ビッグイベント終了

 学長室にゾンビの集団が押し寄せてきた。首が飛んだ者でも指示をされたら動くらしい。


 ゾンビはガウスの傍に着くと次々に剣に吸収されていく。


「ぐァァァァァァァッ!!」


 ガウスがそう叫ぶと大量魔力が飛び出してきた。


 そうしてゾンビを吸収し終えた時、そこには先程までのガウスの姿はなかった。


 二回りほど体が大きくなり、剣は大剣かと思う程に大きくなっていた。


「支配の剣は切った相手を強制的に操る事が出来る。つまりは自分の力にさせることも可能なのだよ」


 めちゃくちゃだな……………。


「力が魔力が湧いてくるよ。今のわしは負ける気がしない」


 するとガウスは一気に間合いを詰めてきた。


 先程までよりも何倍も早い踏み込み、地面がえぐれていた。


 これ、剣で受け止めたら折れちゃうよなぁ。


[空間変形]


 剣の軌道を逸らした。


 ドンッ!


 剣が地面にぶつかったと同時に部屋全体にヒビが入り、揺れた。


 いやいや、崩れるよ。ここ先生の部屋でしょ。


 ガウスはなりふり構わず剣を振るう。


「どうしたシン、避けてばかりでは終わらんぞ」


「焦らないでくださいよ。今は準備中ですから…………」


「ほぉー、それは楽しみだ」


 ガウスは剣に大量の魔力を注ぎ込む。


「はっ───!」

 

 ガウスは剣を振るう。


 だが空間で周りを固めている僕には当たらない。


 あれ?空間が裂けてく。魔法妨害のせいかな?


[空間断裂]


 ガウスと距離を置くために放つ。


 一度引いたもののガウスは直ぐに襲いかかってきた。


 ドンッ。


「───っ!?なんだ?」


 ガウスは目の前にある、透明な壁にぶつかった。


「準備が終わりました。僕の勝ちです」


「どういう事だ?」


 ガウスは僕との距離を取ろうと後ろに下がる。


 だがそこにも透明な壁が存在した。


「何をした?」


 ガウスの顔が徐々に引き攣り始める。


 当然だ。四方八方透明な壁で覆われており、完全に閉じ込められてしまっているのだから。


「とりあえずその剣、邪魔だ」


[空間断裂]


 剣を持っている方の腕ごと切り落とした。


 ガウスは剣を拾おうともう片方の手を伸ばす。


「だめですよ」


[圧縮]


 透明な壁が狭くなり、ガウスは剣を取れなくなった。


「時間かかったよ、先生速いからなかなか閉じ込められなかった」


「これは魔法なのか?君は劣等生のはずだ。こんなこと出来るはずが…………」


「何を勘違いしてるんですか?僕だって魔法くらい使えますよ」


 ガウスは透明な箱の中で僕を睨みつけてきていた。


 少ししてガウスは口を開いた。


「なるほど透明な壁に見えない斬撃。シン、君の魔法が何となくわかったぞ」


「なら、聞かせてください」


「空間を操る魔法、と言ったところだろ?」


「さすがですね」


 するとガウスは諦めたのか穏やかな顔に戻った。


「またわしの負けか……………。空間魔法など聞いた事も無いわ。君を劣等生にした自分が情けない」


「だがわしを倒しても何も終わらんぞ。狂犬はこの国を狙っている。わしがこの依頼をした時、ある物を渡した」


「ある物?」


「時期にわかる」


「最後に教えてください。先生が苦戦した人の名前」


「いいだろう。狂犬の幹部の一人、殺戮担当のエースと言われる男だ」


 コードネーム的なやつか。何かテンション上がるなぁ。


「ありがとうございます。それじゃあさようなら」


[圧縮]


 空間で作った透明な箱。僕はその間隔をゆっくり狭めていった。


 すると学長室に話し声が近づいてきた。


「シンくん大丈夫!」


「シン大丈夫か!」


 シエナにエナ、オルトといった数人が焦った様子でこの部屋に入ってきた。


「良かったですね先生。最後を見てくれる人がこんなに居て」


「ああ、そうだな…………」


 この状況を見て皆、顔をポカンとさせていた。


[圧縮]


 一気に空間を狭め、ガウスは圧力で潰れた。


 こうしてビッグイベントは終わった。


 ※


 今回の事件で死者はでなかった。やはりシエナとエナの姉妹コンビが強かったらしい。


 オルトは魔力不足を起こして一日寝込んでいた。さすがに暴れすぎたのだろう。


 本人は楽しかったぜ、と言って相当呑気だったけど。


「まさかシンくんにあれほどまでの力があるとは驚いています」


 エナもあの状況には度肝を抜かれたらしい。ゾンビ達が学長室に向かって走っていったので僕が危ない、と急いできてくれたという。


「騎士団の中でも少しあなたの噂は流れていますよ。ほとんどは信じていないようですが」


「そうですか」


 騎士団の方で噂されるのは予想外だ。やっぱ元剣豪といえど有名人だったしね。


「姉さん、ガウス先生がい無くなったってことは劣等生は無くなるの?」


「制度としては無くなるわ。今の普通生徒と変わらない待遇に戻すつもり。ただ染み付いた風潮は無くなっていない。なのでクラス分けは今と同じようにするわ」


「それが良いでしょうね」


 やはり劣っているのは事実だ。普通生徒と完全に混ざるのは嫌がらせをされる可能性が高くなる。


「という事はシンくんも大会に出る事ができるようになったんだ」


 シエナが満面の笑みでこちらを見てくる。


「もう少しで二校戦が始まることですね」


「二校戦?」


「二校戦はね、隣にある国、ミカエル王国の王都にあるミカエル魔法士学園とこの学園で争う、魔法大会みたいなやつ」


「へぇーー」


「ミカエルの王女はなかなかの実力者だと聞きます。シンくんには是非参加してもらいたいと思っています」


 確かに面白そうではあるな。


「わかりました。参加します」


「ありがとうございます。でしたら後二人クラスの中から誘ってチームを作ってきてください。二校戦は三対三のチーム戦です」


「私も参加するからどこまでいけるか勝負だよ」


「はいはーい」


「興味無さそう」


 シエナが頬ふくらました。


 二校戦、どんな相手が来るか楽しみだ。



 ────────────────────


 読んで頂きありがとうございます。


 これにて一章完結です。


 引き続き読んでいただけると嬉しいです(*^^*)

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