第9話 学園にゾンビ襲来

 それは突然の事だった───。


 とある授業中、急に廊下から騒がしい足音が聞こえてきたのだ。


 皆不思議に思い、廊下の方に視線を向けていた。


 すると、ガシャァァァン!という音を立てドアが壊れた。そうして剣を持ったたくさんの人が押し寄せてきた。


「ギャァァァッ!」


 その人達は人間か疑わしいような奇声を上げ、見るからにおかしい。なぜなら全員体のどこかしらに紫に光る剣が刺さって居るのだから。


 まるでゾンビのような……………。そうゾンビのようなんだ!


 僕は心が踊った。一度も考えたことの無かったシュチュエーション、まさか学園にゾンビが襲来するなんて!


「おいおい、何かやべぇーぞこいつら!」


 オルト含め全員席を立ち、教室の端の方に追い込まれていた。


 前でやる気のない授業をしていた先生は多分やられたんだろう。


 どうする?どう動く?今僕にはたくさんの可能性が存在する。


 そんな事を考えている間にもゾンビは近づいてきていた。


 とにかく手前のゾンビを一掃してから決めるとしよう。


[空間断裂]


 血しぶきを上げゾンビ達は倒れていく。首が切れているもの、上半身と下半身が真っ二つになっているもの、と少々グロいが仕方ない。


「シンやるじゃねぇか」


「俺らもとにかくやるぞ!このままいたら死んじまうぜ…………」


 オルトの掛け声と同時に怯えていたクラスメイトは覚悟を決めゾンビに向かっていった。


 ゾンビ達の攻撃は読みやすい、まるでプログラムされたロボットのようだ。


 だがその攻撃は重たい。人間は自分の体を壊さないために本当の意味での全力は出せないようになっている、だが彼らにはそれを感じない、骨が折れようとなんだろうと全力で剣を振るってくる。それに半端な攻撃では動くのを止めない。まるで完全に操り人形だ。


倒したゾンビから皆、真剣を奪い取ったことにより一気に優勢になった。


「オルト、こいつら首飛ばすのが一番良さそうだよ」


「おお、そうか」


 するとオルトは拳に力を入れ、ゾンビの顔目掛けて振るった。


 まるでボールかと思うほどに首だけが吹き飛んだ。


「こんな感じでいいか?」


 普通の顔でそう言うオルト。


 さすが馬鹿力だ。


 オルトが劣等生にされているのは魔力変換不全症という病気のようなものらしい。


 人は大気中に存在する魔力を吸収し、自分に合った波長に整えることで始めて自分の魔力を得る。オルトはその変換にかかる時間が普通よりも長いのだ。結果的に体内の魔力量は常に少なくない状態になる。この症状があることで起こる問題は魔力不足や魔力切れになりやすいという事、当然魔力が無くなると魔法も打てなく、その他にも体に力が入らなくなるなどとそこそこ危険なのだ。


 少ししてクラス内にいたゾンビは片付いた。だが廊下にはまだうじゃうじゃいる。初めての戦闘により、クラスメイトの疲弊が凄まじく、怪我人も出ていた。幸い死者は出ていない。


「シンくんこれからどうしますか?」


 そこに来たのはクロエだった。


 クロエは疲れている様子はなかった。


「とにかく今は戦うしかないよ。クロエも手伝って」


 ここで僕が活躍しすぎるのはいい選択とは言えないからね。


「えっと、私は戦わない方がいいと思うのですが…………」


「どうして?」


「私、魔力量の調整がほとんど出来ないんです。なので放つ魔法がどれほどの威力か予測がつきません。最悪巻き込んでしまう可能性が……………」


「なんだ、そんな事?」


「───えっ………!?」


「それならクロエの正面に誰もいなければいいんでしょ。廊下のやつを倒すなら問題ないよ。直線なら誰も巻き込まないでしょ」


 クロエさんの魔法の威力は未知数だけど、多分大丈夫でしょ。


「わかりました。それなら手伝わせて頂きます!」


 クロエは嬉しそうに答えた。ほんとは手伝いたかったのだろう。


 廊下に出てこちらに向かってくるゾンビにクロエは立ち向かう。


 周りにクラスメイトが居ないことを確認しクロエは口を開いた。


「それじゃあいきます」


 するとクロエは両手を前に出し、魔力を込め始めた。


「[魔力波]」


 クロエの両手から極太の魔力の柱が放たれた。それは廊下を完全に覆い尽くし、全ての窓を破りながらゾンビたちを一掃した。


 クロエの魔法が切れた時、そこにはもうゾンビの姿はなかった。


「はぁぁぁ………」


 クロエは脱力し、倒れ込む。


「大丈夫?」


 僕はそんな彼女を支えた。


「はい…………魔力が一気に出ていったので体から力が抜けてしまいました…………」


 弱々しい声でそう言うクロエ。


「ありがとうクロエ、休んでて」


 規格外の威力じゃないか、僕の分も持っていかれてしまった。


 後、壁にヒビ入ってない?崩れないよね?


 ゾンビが居なくなった廊下から一人の少女がこちらに向かって走って来ているのが見えた。


「シンくん!大丈夫?」


 その正体はシエナだった。


「シエナさん…………」


「みんなは大丈夫?」


「怪我してる人はいるけど大丈夫」


 でも先生はやられたのかも…………。まぁ良いよね、自己責任だ。


「この人達は何者なんだろ…………」


 そうして倒したゾンビを見てやっと気がついた。全員がオオカミのバッチを付けていることに───。


「狂犬…………。てことはまさか───」


 シエナが何かに気づいた様子だった。それは僕も同じだ。どうやら始まったらしい、ガウス主催のビッグイベントが。


「確かにこの人達は全員、劣等生のクラスを狙っていた。偶然とは思えない」


「でも何か動きがおかしかったのよね…………」


 シエナが訝しげな表情を浮かべた。


「あ、あの…………」


 そこに来たのはキリコだった。


「こ、この人達に刺さってる剣に支配の魔法がかけられています」


「支配の魔法───」


 シエナは顔をハッとさせた。


 誰かに操作されてたからあんな無理な動きしてたのか。そりゃゾンビみたいになるよね。


「ねぇシンくんもしかしたら…………」


 シエナが何かを口にしようとした時、またしてもゾンビの軍勢が押し寄せてきていた。


「キリがないわね」


 どうやらここに来るまでに一戦混じえている見たいだ。シエナの剣にも血が付いていた。


「とりあえず僕は先に進むもう。一旦こいつらを倒して……………」


「ここは私に任せて」


「良いの?」


「うん、大丈夫」


シエナがそう言ったので僕は先に進むことにした。


 そう、僕は決めたんだ。今回のイベント、ガウスに僕の力を知ってもらうことにしようって。


待っててガウス学園長今行くから!


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