第2話

 良い声だ。

 ほんの少し昔だったかに、ネットを席巻

した、オープニングが神ゲーだった、あの

黒いかたを彷彿とさせる、実におだやかな

良い声で…………




神は、言った。



「今は、みかんを食べろ」



と……ww。



 茶仁は、言われるがままに、正座となり

コタツへと足を入れみかんを剥き始めた。

 見た目は、実にべっぴんだった。

 食べてみた。甘い!酸味はほどほどだが

みかんの甘さが際立つ。素晴らしい。



「良いみかんだろ?茶仁。

 このみかんだけは、あつらえた時代設定

 と、合ってないんだよね。

 愛媛の秘蔵っこ『紅まどんな』だから」



 嗚呼!?

 通りで、バカ美味いわけだわ。



(愛媛県の秘蔵っ子みかん、紅まどんなさん

は、ガチで美味い!!´艸`)オイシ♪♪です

わかば註)



 でも、たっ!?かいんだよ!?



「やっぱり、バカ美味いね(汗)

 はるみちゃんとは、双璧をなす美味さ!

 ですな」



 その発言を聞くとにっこりと破顔する神。

バチくそ、人たらしな笑顔である。本能的

に危機感を持ち、精神的に身構える茶仁。



「はるみも、美味しいよね♪♪」



 つい、茶仁と一柱で、紅まどんなさんを

食べ尽くしたところで、神が、あらためて

話を始めようとする。



「ところで、茶仁よ。君はね、死んでしま

 ったのだよ。残念なことにね」


 神は、そう言うと、少しいたましい表情

を浮かべた。



「あくまで、死因は病死であり、その根本

 は、君自身の不養生が起因するもので、

 よくある、こちら側のミスとか事故など

 ではないことを、ここに言っておく」



 茶仁は、うなずいた。

 身に覚えがあったからだ。

 ここに来る前、かつて感じたことのない

ほどの強い胸の痛みと、血の流れを失った

と錯覚するほどの、虚脱を感じたからだ。



「神よ。死因は、心筋梗塞?ですか??」



 神は、首を横に二度振り、言う。



「いや、胸部大動脈解離から大動脈弁まで

 剥離が急速に進み、弁が破壊されてから

 の急性大動脈弁閉鎖不全症を起こして、

 心不全、が死因だよ」



 茶仁は、天を仰いだ。



 そりゃー、死ぬわ………



 と。



「原因は、極度の運動不足と塩分と脂肪の

 摂りすぎ。予兆はあったはずだ。ひと月

 前と、一週間前。その時面倒くさがらず

 少し大きい病院に行っていれば…………



 即!!入院!!



 で、もう少し命をつないでいたんだが」



 それを聞いた茶仁は、即座にまたしても

思い当たる節があり、悔恨す。




「あと、ここは、はっきりとさせときたい

 とこだから、言っとくけど、こちら側と

 しては、君が、君の因果に起因する死を

 確定させるまでは、一切の手出しは出来

 なかったということだ。ましてや、僕は

 元、君がいた世界の神の一柱ではない」




 神が、人差し指を立てた。



「異世界の神だ」












 





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