異世界で、伝説的な某任侠映画な人生を楽しもう

煙草のわかば

第1話

 茶仁優作ちゃにゆうさくは、享年56歳。



 胸に、突然、いとも激しい痛みを覚え、

借りているアパートの共用階段を上がって

いる途中でうずくまり、バランスを崩した

までは思い出せる。




 その後の記憶は無い。



 長い眠りから、心地好く目覚めた感覚は

久しくなかった。今は、まるで、頭の中と

魂を洗い清められたかのようなスッキリ感

にあふれている。



 死んだ実感は、不思議とある。

 てことは、ここは死後の世界ということ

になる、と茶仁ちゃには思う。




 しかし、茶仁の中にある、あの世だとか

地獄だとか黄泉の世界といったものとは、

イメージとか雰囲気が、いささか違うような…………



-あの世って?こんなにも清冽で清々しい

 ものなのか?しかし、見渡す限りなーん

 にもないぞ?-



 見渡す限り、何もなく、まるで雲の上に

いるような感じ。しかし、寒くもなく暑く

もない、無風ではあるが、澱んだ不快さを

感じることもない快適空間。



 天空には、ただただ澄む蒼天が拡がり、

頂点には、太陽とおぼしき小さな光点が、

燦燦と光り照らし、恵みを育む。



-心、洗われるようだ……-






「おっ♪♪来たな」



 突如!?茶仁の前に、びっくりするほど

の、美丈夫が現れた。どこから来たのかは

分からない。



「だ!?誰??」



 焦りと困惑で挙動不審になる茶仁は少し

美丈夫から後ずさり、距離をとった。



「落ち着いて、茶仁ちゃによ」



 白く、美しき美丈夫は、眩しいばかりの

微笑みを浮かべ、茶仁を落ち着かせようと

した。



 茶仁は、美丈夫の美しさと、そこはかと

ない色気に中り、動悸が激しい。




 美丈夫は、何か思いついたように、左掌

を、右拳で、ポム♪♪と叩く。


 右手でフィンガースナップを一つ鳴らすと、限り無く何も無かった空間

に、下町の下宿風の六畳間を出現させた。



「夕焼けの六畳間!?昭和か!?」




 茶仁は、懐かしさにドキドキした。

 今や、昭和世代のやっすい六畳一間なぞ

ほぼ絶滅危惧だ。地方であっても。しかも

擦り切れ、日焼けした畳まで再現してある

のだ。ラメ入りの土壁だし。木の格子の窓

ガラスも若干薄いし、今では、ほぼ見ない

加工のきつい薬を使ったボカシ処理の曇り

硝子だ。



 本当に、マニアックだ(汗)



 部屋の真ん中には、少し小さめのコタツ

が設置。こたつ布団も、時代設定にマッチ

している。今ほど、薄く高性能では無い。

分厚い。柄も、色も、昭和。どぎついww



 天板も、裏は布張りくさいww麻雀用で

緑の布張りなのだ、きっと。



 茶仁は、感動していた。

 感謝もした。

 茶仁は、昭和マニアだったw

 キラキラした眼差しが、若干怪しいw




「貴方は……神か…………」



 美丈夫は、ポリポリと頭をかきながら、



「まあ、君の認識なら、そうなんだがね、

 ほんとはね。今の場合は、最高の賛辞と

 受け取って♪おくよ」



 神は、にっこりと笑った。



「まあ……みかんでも食べながら、話すと

 しようか、茶仁君」


















 












 






 

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異世界で、伝説的な某任侠映画な人生を楽しもう 煙草のわかば @wacabatabaco

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