第10話

 神様なんてなるもんじゃない。


 自分の世界の事柄に関しては絶対的な権限を持っていて、命あるものの生殺与奪の権利や、時には天変地異によって世界の形を変えたりもすることができる。

 時には森羅万象のありようにすら干渉し、奇跡と称して変革すらも起こしうる。

 その力は絶大であり、他の追随を許さない。

 神として持っている力が大き過ぎ、干渉するエネルギーは時には破滅へと導くほどのもの。


 だから小さな修正は、どうも苦手だ。


 少女は、神としてこの世界を作った創造神。

 人々が地球と称するこの世界は、少女のものであり、愛らしい存在だ。


 豊富な水は地球の色を決め、浮かぶ雲の形は見るものを飽きさせない変化をもたらし、緑に覆われた大地は、丸く代わり映えのしない世界に、新しい可能性をもたらした。


 初めは小さな変化だった。

 人という種族が大地に根付き、独特の繁栄を謳歌し始める。


 そうだ。

 初めは可愛らしい変化だった。

 まるでいつもの食事に、未開の地の香辛料が隠し味として加えられる様に、その変化は全くもって許容できる範囲のものであり、喜ばしいものだった。


 ただ、人はどこか慢心する傾向にある。

 力を過信し、果ては神と同等であると自称するほどに驕り高ぶることがある。


 少女には未来が見えていた。

 栄枯盛衰。

 驕り昂った果てには、破滅の未来しかない。

 だから少女は心を鬼にして、神罰を下す。

 増長した心を挫く様に、人の努力を洗い流したこともあれば、言葉を分かつことで互いの意思の疎通を阻害したりもした。


 そうしなければ、行き着く果ては人類の滅びだったからだ。



 真っ白な世界。

 それは神が鎮座する世界だ。


 果てしなく続く白い世界には、正方形の箱庭がある。

 それは神が趣味として、育てる世界そのもの。


 人が天の川銀河と呼称する世界が凝縮され、5m四方の正方形の箱庭の中に収められている。

 その中で唯一青く澄んだ点があった。


 それは人が地球と呼称する惑星。


 その地球を眺めるのは、金髪の少女。

 白いワンピースをきたその少女は、地球と同じ青い瞳を持っている。

 その視線は冷たく、嫌悪の心が滲み出る様に、黒く澱んでいた。


 その少女は、生まれ変わった神。

 この世界のモノに、ギフトを配った張本人だ。


 なぜ少女がギフトを配ったかって?


 少女は気づいてしまったからだ。

 人を救うことで、他を疎かにしてしまっていたことに。


 少女は見えてしまったからだ。

 世界の成れの果てと、人間の所業の行く末を。

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