第7話
外に出ると、もう夕方だった。
昼に起きてから、ダラダラと漫画を読んでいたら、もうこんな時間になっていたのか。
タロウはいつもの道の、いつもの電信柱の匂いを嗅いでいる。
俺が大学に通っている時は、ずっと妹が散歩をしていたはずだが、飽きもしないでずっと同じところの匂いを嗅いでいた。
坂道を土手に向かって降っていく。
すれ違う車もなく、人ともすれ違わない。
土手には、まばらに人がいた。
ランニングをする人や、散歩をしている人がいる。
少し年配な人が多い印象だった。
河川を横断する鉄橋に、3両編成の電車が走っていて、そこに乗っている人もまばらだった。
「今日は人が少ないな」
タロウに話しかけるが、タロウは蝶々に夢中で聞いていない。
「まぁそんな日もあるか」
このままだと蝶々を狩りとりそうなタロウを引き止めて、俺は土手を抜けていつもの散歩コースを進んでいく。
商店街にはそれなりに人が多い。
夕飯の買い物にきている人がいて、そこそこ賑わっていた。
精肉店が目についた。
加工精肉を販売していて、店内でコロッケなどの揚げ物も販売していた。
「そういえば、今日何も食べてないな」
気づくとお腹が鳴ってしまった。
「タロウもお腹へったか?」
ワン、と答えるタロウは、もう目がきらきらしていた。
コロッケとメンチカツを買おうと思って、店に入ろうとすると。
「あ、すみません、ペットは外で繋いでおいていただけますか?」
40代ぐらいの店員さんに静止される。
「あ、すみません」
飲食店に犬を連れて入るなんて、何考えてんだ、と自分でも恥ずかしくなって、タロウを店先の看板につないだ。
「ちょっと、待っててな。タロウ」
タロウの少し寂しそうな視線が、智也を見上げている。
少し違和感を感じた。
商店街でタロウを外につないで、何かを買った、ということがどうしてもしっくりこない気がする。
なんとなく。
タロウの頭を撫でて、店に入り直し、自分用にコロッケとタロウ用にメンチカツを買ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます