第9話 ひとりぼっちの夜

内田は、1人になった

もともと、1人だったのかもしれない彼は1人ではないと思っていただけだったのかもしれない

しかし、彼は中学1年の夏1人である事を決めた

誰も理解してくれない、誰も見てくれない、誰も心配してくれない

他の人達にあるのは都合だけ、イジメできた人たちは、自分たちが楽しければ良い

周りの大人は、問題に向き合ったという実績があればいい

なにかしらの、節目があればそれだけで終わった事に出来るのだ

だから、内田は誰も信用しなくなった

「いつまでそんな事いってるの?」

と聞いてくる教師を

「いつまで1人でグチグチ言よるんぞ?そんなんだから周りにイジメらるんだ」

と言ってくる親も

「あいつまだ掘り返そうとしてる、いつまで

そのポジションにおるんや」

と陰で言ってくる学校のみんなも

内田は、敵として見ていた


誰も理解してくれない、誰も見てくれない、誰も心配してくれない

なんで、どうして、何のためにこんな人生歩まないといけないんだ!

必要として産まれなかった、だから妹たちのように大切にしてもらえなかった、だから、周りも適当にしか扱ってくれない!


もう嫌だ、もう嫌だ、もう嫌だ、もう嫌だ、もう嫌だ、もう嫌だ、もう嫌だ、もう嫌だ


あぁ、死にたい、、


内田の思考がそういう方向に向くまで対して時間はかからなかった

それからは、夜という時間が内田にとってとても辛い時間になっていった

夜は1日の終わり、そして人が1人になる数少ない時間、1人になってふと1日の事を思い出す

自殺志願者である内田にとっての1日はとても辛く苦しい物だった、だから内田は夜1人で誰にも理解されない苦しみをただ1人かかえ、溢れた苦しみとストレスをほぼ毎晩吐き出していたのだった


そして、今夜も内田は、1人過去のトラウマと周りから与えられた自分への評価とそんな評価をされる自分の人生に苦しんでいた

「ゔぁーーーあーーーああ!

がぁああ、、ああーーーはぁはぁ、、」

内田は、叫びながら頭を掻きむしり、自らを殴り、ただひたすら椅子に座ったまま小さく暴れていた

やがて、内田は立ち上がりベットに勢いよく倒れ込み、体を丸くし左手で胸の中心を掴みながら右手で頭を掴み、唸っていた


しばらくして、内田の部屋のドアがドンドンドンと勢いよく叩かれた


内田が驚いてビクッと反応した瞬間ドアの向こうから大きな怒鳴り声が聞こえた


「いい加減にしなさい!何時だと思ってるんだ!いままでは、1人暮らしだったから良かったかもしれないが、いまは違う!

周りの人への迷惑も考えれないのか?

それと、その体はすでに、半分はお嬢様の物であって貴方だけの物ではない、傷つけるようなことは絶対にするな!

分かりましたか?」


急な怒鳴り声と、その内容に内田は驚き目を見開いて動かなくなった

声からして、ドアの向こうに居るのは滝澤?

そんなに、大きな声で叫んだだろうか?なぜ部屋の中の事が知られた?そういえば、もしもに備えて監視カメラを置くとか言っていたな、、、声を聞いて急いで確認したのか?

どうしよう、、怖い、どうしたらいい?何か返すべきか?このまま黙っておくべきか?

どうしたらいい?どうしたらいい?どうしたらいい?


そんな事を内田が1人、パニックになった頭で考えている間に、ドアの向こうの滝澤は「はぁ」と軽くため息をついて自分の部屋へと足を進めていた

滝澤が帰る途中、廊下で鈴木が滝澤の方を見ながら立ち止まっていた

「どうしたのですか?」

と滝澤は問いかけた

「あ、いえ、内田様がパニックになっていたので鎮めようと思い向かっている途中でした」

「そえですか、内田様には私から静かにするよう伝えましたので大丈夫ですよ、貴方も早く部屋に帰って休みなさい」

「分かりました、失礼します。おやすみなさい」

そう言って鈴木は一礼をし自分の部屋に帰っていった

鈴木は、自分の部屋に帰る途中内田のあの行動と、滝澤が内田の部屋の前で怒鳴っていたのを見て自分の兄の事を思い出していた


鈴木には5つ上の兄がいたが、彼も内田と同じように部屋に篭り1人叫んだり暴れたりしていたからである

鈴木の兄も自殺志願者で、鈴木が中学1年の冬山で首を吊り死んでいた

「自殺志願者ってみんなあんな感じなのかね?、、兄さん」

と鈴木は、自分の部屋に入って小さくつぶやいていた

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