第7話 内田の過去

食事を終え部屋に戻る途中風呂に入るようにと呼び止められた内田は、一度部屋に戻り着替えを持って風呂に入った。

風呂は普通のユニットバスではあったが、とても広くゆったり入れた。

風呂から出て部屋に戻る途中、滝澤と廊下で出会い内田は軽く会釈をしてやり過ごそうとすると、滝澤に「何をしている?」と聞かれた。

「ふ、風呂に入っていました。」

そう、内田は少し目を逸らしながら言った。

滝澤は初めて会った時から目はとても鋭く無表情でとても威圧的な空気を出していた。

内田は、その空気を察知してから滝澤に恐怖を感じ避けるようにしていた

しかし、それが滝澤には気に入らなかった。

「本当か?」

「はい」

「内田君、人と話すときは目を見て話しなさい。

それと、1人で勝手な行動をしないように、ここは井川家の皆さんの家であって君の家ではない。光一様のご厚意でここに住ませて貰っているという事を忘れないように、わかったかな?」

「はい」

と内田が下を向いたまま答えると滝澤は、少しため息をついて歩いて行った。

内田は、そのため息にビクッとなりながらも急いで2階の自分の部屋に戻った。

内田は、自分の部屋に入ると大きくため息をつきながら椅子に座り、そのまま前屈みになって両手で頭を抱え考えていた。

食事でのこと、さっきの滝澤のこと、この家に来た理由、過去のことやいままで周りの人達に言われてきた事を思い出していた。

「まだ23歳か」「ご厚意で住ませてもらってるんだぞ?」「私恋人役やります」「何言ってるんだ結衣!」「目を見て話なさい」

「お前はいつも下を向いている」「全く暗いなー、お前を見ているとこっちも暗くなる」

「当たり前だと思うなよ!」「お兄ちゃんでしょ!」「男だろ!」「お前だけできてないんぞ?」「ちゃんとしろや」「はっきり喋れ」


一度思い出すと、いろんな記憶が何個も一緒に流れてきて内田の頭の中をめちゃくちゃにしていった。

その言葉たちは過去に内田を苦しめた物でそれを思い出すと毎回内田の心は締め付けられ苦しめられていた。

やがてその言葉は内田の心に溜まり続け耐えられなくなると、それは内田の叫び声として一気に吐き出された。

「ゔぁあーーーーーーー!

あーーーーーああーーー!!」

「もう嫌だもう嫌だもう嫌だ、死にたいやめたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい!!」

「あーーーー」

内田は、少しでも辛いことがあるとよくこうやって叫んでいた。もともと、そんな人間ではなかった。しかし、いままでの苦しみとストレスが彼をここまで追い詰め、そして彼はそれに耐えるための方法として、定期的に溢れた分を発散させていたのだった。

彼を追い詰めた物、それは彼の過去にあった。


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