第2話 健康診断

公園から帰ったあと、彼は真っ暗な部屋で男から渡されたパンフレットのことを思う出していた

ホームレスを対象とした健康診断、表向きはただの健康診断で帰りにはパンまでもらえる、健康体で望むと楽に死ねる訳、パンフレットの内容もおかしな点はなく企業主催のチャリティーイベントと言うような内容だった

「健康診断、、何が目的なんだ、、」

彼は1人考えていた、騙されているのではないか、危ない目に遭うのではないか何かに利用されるのではないか、、?

「まぁいいか、どうせ死ぬつもりだったし仕事も辞めてどのみち生きていけなくなる、、」

そう独り言を言って彼は1人眠った


次の日の朝と言うより昼前、彼は怠そうに目覚めた、天気はとても良いが相変わらず彼の心は晴れてはいなかった

軽く食事をしてパンフレットを見ながら目的地のビルを目指していた、近くまで行くとボロボロの服を着た男たちがビルに入って行くのが見えた、彼はそのボロボロの男たちに紛れてビルの中に入って行った

ビルの中ではすでに何人かのホームレスが椅子に座り順番待ちをしていた、静かに待っている者、健康診断なのにすでに酒を飲んでいたりいま飲んでいる者、早くパンをよこせと叫ぶ者まさにそこは無法地帯だった

彼がそんな景色を横目に受付と書かれ長机の所に座っているスタッフの所に行った

「こんにちは、まずはこちらの名簿に名前と性別と年齢をお書きください」

そう言われ彼は名簿に記入を始めた

「内田健斗(うちだけんと)さんですね、男性でご年齢が23歳ですかお若いですね!それではあちらの椅子でお待ちください」

そう言われ内田は、無法地帯の待合室に向かい出来るだけ離れた所で静かに後悔しながら待っていた

しばらくすると別のスタッフに名前を呼ばれ診断室3と書かれた部屋に入って行った

ドアを開けると中は大部屋だった体重測定や血圧検査、採血、心電図などの基本的な検査項目を順番にしていた

内田は、スタッフに言われるまま採血の列に並び採血が終わると次の検査を言われそこえ向かった

約1時間ほどかけて全ての検査項目を終えた後検査結果が出るまで最初の待合室とは別の待合室で待つようにと言われた

案内された待合室ではいろんな種類のパンが置いてあり、検査を終えたホームレス達は菓子パンを食べたりこっそり持ってきたカバンにパンを詰めたりしていた

ここにくる前に少し食べてきたとはいえ、内田も空腹を感じパンを選び空いている椅子に座ってパンを食べながら検査結果を待つことにした

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