生きたがり屋と愛されたがり屋

菊千代

第1話自殺志願者

雲ひとつない満月の夜、田舎なら月の光で照らされるのだろうが都会は違う

街灯が明るくライトが無くても何処にでも行ける、しかし彼には行きたい所など無かった人を恨み、会社を恨み、社会を恨んで彼は1人近くの公園へと歩いていく、とても寒い12月の冬の街を1人で歩いていた

ふと周りを見ると、カップルがイルミネーションで照らされた歩道を歩いていた、その近くでは子供とその父親と母親が楽しそうに手を繋いで歩いていた

彼は、それを睨みながら1人公園に向かった

公園に着くと街頭の少なく薄暗い所を探し歩いた、途中ホームレスを何人か見かけた、「こんなに寒いのに大変だな」そんな事を思いながら先を急ぐ

少し歩くとスーツを着たいかにもエリートと思える人とすれ違う、彼が最も嫌う人種だった見るのも嫌なほど嫌っていたので下を向いてさっさとやり過ごした

しばらく歩き、ようやく人目のつかない高台を見つけた、目の前には手すりその先は海につながっている川、彼はその川をしばらく眺めていた、高さ10〜20メートルで周りは崖、落ちた衝撃では死なないが溺れて助からないだろう、そう確信し彼は手すりを登り始めた

右足が手すりの一番上にかかり、あとは飛ぶだけと言うところで後ろから「危ない!!」

と声が聞こえた、彼がその声の方を見るとさっきすれ違ったスーツを着た男がこっちに向かって走ってきていた。その男は彼が飛ぶ前に彼の右肩と左脇腹を掴み思いっきり引っ張った、彼は引っ張られ手すりから落ち2人とも地面に尻餅をついた

「何やってるんですか!危ないでしょう!」

そうスーツの男は言いながら立ち上がった

「大丈夫ですか?怪我とかありませんか?」

そう言いながら男は、彼に手を差し伸べた

「なんで、邪魔をした」

そう彼は男に言ったが声が小さくて男は聞き取れなかった

「なんですか?」そう聞き返す男に彼は苛立ち大声で男に言った

「なんで、邪魔をした後少しで死ねたのに!!お前のせいでまたやり直しだ!死ぬのがどんなに大変かわかってるのか!!」

え?と言う顔で男は彼を見ながら少し首を傾げていた、それを見て彼は続けた

「お前は人助けをしたつもりかもしれないが、お前がした事は俺の邪魔だ!お前が生かしたせいで俺はこの地獄でまた生きなきゃならなくなったんだ!

ただ邪魔をするだけの偽善者が!!なに、助けてやったのにって顔で見てるんだ、誰もが生きたがっていると思うなよ!!」

そう言うと彼は男をずっと睨んでいた、彼はこう言う人間が嫌いだった、こういうエリートが、偽善者が、そしてこう言う人間こそ正しいという社会が大っ嫌いだったのだ

産まれたからには生きなければならない、世界には、生きたくても生きられない人もいるのだから生きなければならない、皆んな頑張っているのだから耐えなければならない、そんな考え方が大っ嫌いだったのだ

そんな彼を見て、男はしゃがみ話し始めた

「申し訳ありませんてました、私の勝手な判断で邪魔をしてしまいました。お詫びと言ってはなんですが、明日こちらに来てみませんか?」

そう言って男は持っていたカバンから紙を取り出した

彼はそれを受け取ったが暗くてよく見えず灯りを探していると、男がスマホのライトで紙を照らしながら説明を始めた

「明日、近くのビルで健康診断をするんですよ良ければ来てみませんか?」

「健康診断?なんのために?」

「そうですよね、今のあなたは興味ないですよね、でも、この健康診断は表向きの話で、、もし、トップの成績を取ることが出来たら楽に死ねるんですよいかかです?」

「健康診断で成績が良かったら死ぬ?どう言うことですか?」

彼は急に怖くなったこの男は普通ではないのかもしれない、何かヤバいことに関わらされてるのでは無いのかと思い始めた

「混乱するのもわかります、、ですが私の判断でこれ以上お教えする事が出来なのですよ、、ただ、来たからと言ってすぐどうこうと言うことはありません、もちろん健康診断だけなら無料ですしなんなら帰りにパンなどが貰えるんですよ、本当はここに居られるホームレスの方にしかしていない話なのですが、貴方は特別です。そういえば、あそこにいる方見えますか?あの方は、明日行くとおっしゃってました。明日ビルにだけ来てみてもし怪しそうだと思ったらそのまま帰って頂いても構いません、どうですか?一度来てみませんか?」

彼は混乱しながら、貰った紙に目を通した内容はチャリティーの名目でホームレスの健康診断と社会復帰を目的とした活動のようだった

「ホームレス向けの内容なんですね」

そう彼はつぶやいた

「そうなんです、基本的にホームレスの方にしかお声がけしておりませんし、このイベントの内容も事実です、来るだけしてみませんか?」

男は、諦めなかった彼は「少し考えます」そういうと男は「わかりました、お待ちしております」そう言い彼の手を引いて立ち上がらせ別のホームレスの所へと去っていった

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