第201話 気まぐれ突っ張り棒はお休み。仲間のところへ向かおう!
皆で集まるテントのリビングには、自分達が持っている懐中時計の他に各国時計が置いてある。
今日はデリモアナ王国に行く予定なので、マカマカの10時ころに合わせてポンポさんの工房に向かった。
「こんにちはあ」
「はーい!あらっいらっしゃい」
ハノアさんが応接室に案内してくれた。
「ごめんなさい。今日ポンポはでかけているの。でもポノアはいるのでちょっと待っていてね」
ポンポさんはおでかけで、息子さんのポノアさんがご在宅らしい。
ポノアさんは粘土のついたエプロンを脱ぎながら、にこやかに応接室にやって来た。
「汚い恰好ですみません」
「だいじょぶ。こんにちは」
「こんにちは」
ポンポさん一家はご家族総出で磁器の研究をし、試行錯誤しながらもなんとか形になってきたところだそう。
試作品を見せてもらうと、素人作りの私達の作品よりも精度の高い、素敵なお皿やティーカップ&ソーサーが出来上がっていた。
陶器づくりのプロだし、流石だね!
「しゅどい!ちえいね」
「凄く綺麗だと姫が言っているよ」
「ありがとう。なかなか上手くいってると俺も思う」
ポノアさんが嬉しそうに笑っている。
「あ、そうだ!『HAU+POMPO』の屋号登録と
「おお~」
1つは前回私が考えたものに手を加えられたもの。
もう1つは『H+P』と簡略化したロゴデザインで、小さな作品にもサインが出来そうなもの。
「これを皿などの裏側に手書きする予定なんだ。母や妻もわりと手先が器用だから、見本を見ながら描いてくれることになった」
「よたったね」
でも1枚1枚の手描きは大変そうだな。
地球の工場みたいな機械は難しいとして、もうちょっぴりだけ楽な方法は無いかなぁ…。少し考えてみよう。
それから商業ギルドから磁器についての回答が届いたらしい。
現在まで磁器自体にも硬化したマカマカクレイの使用方法にも登録は無く、独占契約を交わすことは可能である。ポンポさんがすでにサインした書類があるので、私達がサインをすれば正式に独占契約が完了するとのこと。
私達とポノアさんで商業ギルドへ行くと、すぐにギルド長室に通された。
「待たせてすまないね」
「とつじぇん、ちて、ごめんね」
「突然来てすみません、と言うことです」
「いやいや。貴女達の訪問はいつでも大歓迎さ」
今回もミスティル通訳です。
さて、とリコギルド長から話が進められる。
まず、出来うる限りの範囲で商業ギルドの情報を調べたけれど、磁器自体の登録は無かった。でも粘土の配合がわからないことには『磁器』の登録は出来ないとのことだった。
磁器に関しては、登録するつもりもないのでそれはかまわない。
「とうよちゅ、ちない、いい」
「主は磁器に関しての登録をするつもりはありません」
「うーん。もったいないねえ。まあ、粘土の材料がわからないから仕方がないか」
リコギルド長が残念そうな顔をした。
「だがマカマカクレイの新たなる使い道には登録が可能だ。独占契約のためにも特許登録しなければならないが進めてもいいかい?」
「あい」
あとは契約に関するサインを何枚か書いた。
信用していないわけではないけれど、念のため内容をしっかり読んで、鑑定しながら契約を進めたよ。
あ、『桜吹雪』としてミスティルがサインをしました。
私の文字はまだアレな感じだからね。エヘヘ☆
「これでマカマカクレイによる磁器の特許および意匠登録、『桜吹雪』と『HAU+POMPO』間による独占契約は完了した。この間も話した通り独占契約年数は6年。それ以降は新規契約者にのみ情報を公開することになる」
製作件の料金等が支払われた時は、私達の口座に振り込まれる形にした。
手続きしてくれてありがとう。
お疲れさまでした!
そうだ。
最後の仲間に会えて落ち着いたら『HAU+POMPO』のお祝いをしよう!
バーベキューでいいかな?
リコギルド長も誘ったら、固定のお店とか商人とだけのお付き合いは出来ないけれど、私のお友達としてならば参加できると返事をもらいました。
「おとももち!」
「このババとでも友達になってくれるかい?」
「うん、おとももち、なよう」
お友達になろう!
この世界に来て沢山に人に会って、お友達が増えて嬉しいな。
【幼児の気持ち】が爆上がりでウキウキする私。
とっもだっちたっくさん、でっきるっかな♪
さて。
約束事はひと段落したので次の目的地に行こう。
旅は気まぐれ突っ張り棒はお休み。最後の仲間のところへ向かうよ!
この国は、リッデル王国、シェルド王国、モーネ王国、イスカルド王国、オップダゲルセ王国、5つの小国からなる連合王国なんだって。
ソールヴスティエルネ連合王国は1年中雪と氷に閉ざされた国。
リッデル、シェルド、モーネ王国の一部は夏の時期に雪が少なくなるらしいけれど、イスカルドとオップダゲルセは雪と氷が溶けることは無いんだって。
私達が目指すのはオップダゲルセ王国。今いる場所からかなり遠い。
でも今回は
…………予定は未定です。
今いるのは連合王国が管理している飛び地領土の港町。ここから船で本土に渡ることになる。
本土では色々な場所で入国許可証を確認されるため、歩いて廻るならこの港町で入国許可証を得る必要があるんだって。
許可証を貰ったら船に乗り、到着するのはリッデル王国とシェルド王国の国境近くにある港町。そこでまた入国審査があり、許可が出れば色々な町に行けるとのこと。
「入国が許可されなかったら
「うん、わたた」
わかりました。
その場合は漫遊を諦めて、オップダゲルセ王国に直接行くね。
その時の状況に合わせるから大丈夫だよ。
まずは飛び地領土の港町に入るため、列の最後尾につく。
南方面の街に比べて人は少なめだけれど、商人らしき人が多く並んでいた。
皆さんフワモコな毛を内側にした毛皮を着用している。
空はどんより曇っていて、雪もチラチラ降っているもんね。
念の為、周りに合わせて似たようなコートを再構築・再構成して着用する。
柔らかいフェイクレザーとインナーファーのコート、インナーファーの耳当て付き帽子、インナーファーのレザーブーツ。
レザーブーツには結界3を張って、濡れないようにしたので快適だよ!
靴の中が濡れると気持ち悪いもんね?
寒さを体験しようと思ったので、今のところ自分達に結界3を張っていない。
皆も私も凍傷になることはないのでそれで良いということになったんだ。ただし、私が辛くなったら直ぐに結界を張るようにと注意付き。
大人だったころは辛抱強い方だったけれど、赤ちゃんになってから我慢出来なくなったので、寒かったらもちろん結界張るよ!
商業ギルドカードを提示して町中に入る。
建物はどっしりとした石造りだった。空も建物も灰色だからか全体的にモノクロの世界みたい。
「主殿。地図で役所の場所を探していただけますか?」
「うん、わたた」
地図を開くと、小さな町の真ん中辺りにソールヴスティエルネ連合王国運営の役所がある。
「行こう、主さん」
「あいっ」
ミルニル抱っこされ、皆で役所に向かうのだった。
「全員分の入国許可証を取りたい」
「目的はどのような?」
「俺達は行商人で、商品の売買を目的としている」
そう言って全員分の商業ギルドカードを提示した。
黒い板にかざしてカードが本物であると確認する。
「見たところ身軽ですが、商品は何を?」
「俺達はマジックバッグ持ちだ。商品は食料が主で、他には食器類や布地、アクセサリーや宝石、武具類、魔道具もある」
「そ、そんなにですか?野菜はどうですか?量はありますか?見せていただくことは?」
「ここは役所で商業ギルドでは無いだろう?」
何故そんなに見たいんだろう?
「大変失礼いたしました。実は………」
ソールヴスティエルネ連合王国では、現在深刻な野菜不足に陥っているらしい。
農業が盛んなモーネ王国にトラブルがあり、他の連合国に行き渡らなくなったんだって。
モーネ王国以外にも農家さんはいるけれど、小さな地域で食べるほどしか数は無く、量産は難しい。
このような事態に連合王国の幹部や貴族、役所、商業ギルドも協力し、モーネ王国のトラブル解決の方法と、野菜の確保に尽力しているところだという。
小麦は外国から輸入出来ているが、距離的に生野菜は難しいとのこと。
じゃがいもは輸入出来ないの?日持ちするんじゃない?と聞いたら、一部の貧民は食べているようだけれど、毒性があるから一般的に食べられていないと驚かれた。
前にもあったなあ、こんな話。
確か死の森バーベキュー大会の時だったよね。
「ミユニユ………こしょこしょ」
「ん、わかった」
時間停止のマジックバッグ持ちなので、新鮮な野菜を売ることは出来る。量もかなりあるので大量納品可能。
ただし貴族や金持ちばかりでなく、平民達にも分配、もしくは売り出すこと。
なんなら役所で会場と人を貸してくれれば、臨時で野菜を売っても良い。
ただ我々は定期的にこの国に来るわけではないので、何らかの改善策を考えたほうが良い。
「とにあえじゅ、お芋、食べて、みゆよ」
芋類は葉野菜よりも日持ちするから輸入は難しくないだろうし、何なら栽培しちゃえば良いんじゃない?
まずは美味しく食べてもらって、何に気をつければ良いのかを説明しよう。
先に進みたいから臨時販売会は早くしてねと告げ、明日役所に顔を出す約束をする。
ちなみに入国許可証はアッサリ発行される手筈となりました。私達がこの町を発つ前までには渡してくれるって。
良かった、良かった。
巡れ!半神と仲間たち 半神幼女が旅行とごはんとクラフトしながら異世界を満喫するよ! ~天罰を添えて~ あいのの. @ainono-01
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