第198話 光の奇跡/神の事情
さて。そろそろ私もお祈りせねば。
集中するぞ!
今回は、浄化と新たに作った魔法との複合技だから気を抜けないのだ。
ウル様からは、神力を45万くらい使えばラ・フェリローラル王国の端まで浄化が届くと言われている。それから魔法創造で作成した新たな魔術を端まで届けるには魔力60万くらい必要なんだって。
神力も魔力も足りるくらいあるけれど、今回は神力と魔力を合わせるのがちょっと難しいので時間がかかります。って言うかゴリ押しでいきますよ!
私が祈り始めた頃、ウルハルパが輝き始める。
そろそろ選手交代です。
「子らよ。我は汝らの行く末を見ておるぞ」
光と共にウルハルパが消えるとすぐに、光の花が咲き乱れはじめた。
フロルミスティルの登場です。
「
ウル様に続きフロルフローレ様が登場したので、会場の皆さんは感動に包まれている模様。
歓喜で涙を流す者。祈りを捧げる者。うっとりとお姿を見つめる者。
シュレおじいちゃん達はひたすら祈り、涙を流していた。
だ、代理でごめんね?
でもウル様とフロルフローレ様の言葉には変わりがないので許してね?
「子らを見守っておりました」
ミスティルの優しい声が響く。
「今までよく頑張りました。これよりは子らで努力を重ね、良き御代を歩み、穢なき地となることを、
『大丈夫そうですね?』
はいっ。
思いっきりお祈りしたので、神力と魔力が満々ちております!
と言うか、溢れそうです。
放出して良かとですか?
フロルミスティルが光の花と共に消えると同時に私の出番です。
天使をイメージしたウイッグと衣装でフワリと現れる私。
鳳蝶丸渾身の作、浮遊で浮かぶ私の背にはリアルな羽(のCG)がついている。
合わせた両手の映像に合わせ、神力と魔力を集中させる。
ひ・ろ・が・れー!
キンッ
サアァァァアアアァァ………
光の輪が広がって行く。
浄化の光はラ・フェリローラル王国の端辺りまで届くはず。
そして同時に光のお花が空から降り注ぐという演出が続くのです。
そう。
私の新魔法、[付与の光]。
魔力を光に変えて、広範囲に送ることができる魔法。
死の森を浄化した時に無意識で治癒を付与したのと同じだけれど、目で見てわかりやすいように光をお花の形にして、そこに治癒を付与をしたの。
この魔法はウル様とフロルフローレ様からのリクエスト。
犯罪者まで元気になっちゃうけれど良いの?と聞くと、今回だけはそれで良いとの回答だったので実行しました。
フロルフローレ様のお膝元なので光をお花の形にして、重病も重傷も古傷も欠損も意識不明もおじいちゃんやおばあちゃんの腰痛膝痛も全部まるっと治しちゃうぞ!死にたての人も蘇っちゃうぞ!という思いを込めて治癒の付与をしたよ。
浄化の光は広がり続け、治癒の光は家の中にまで降り注ぐ。
痛み、辛さ、悲しみ………。
多くの心が浄化され、体が治癒された。
その光はラ・フェリローラル王国の民を健やかなる力へと導いたのだった。
「1名消滅し、2名は正常化。滅びは回避されました」
「うむ。1名は助けられなんだか。
「はい。あの子は優しい。知ればきっと悲しむでしょう。
「うむ」
普通は人の子の穢れごときでダンジョンは生まれない。
だがよりにもよって、その3名はドラゴンよりも多い魔力量の持ち主達だったのだ。
穢れた魔素が魔力保有量の多いドラゴンを1頭でも喰らえば、新たなるダンジョンが生まれる可能性が高い。
それが3名分だ。
しかも本人達が穢れを撒き散らしているがゆえに、ダンジョンの誕生は必須である。
新たなるダンジョンは頻繁にスタンピードがおき、人々の命を喰らい、やがてSSS級の魔獣を吐き出すようになることが、神による未来視でわかっていた。
死の森の脅威から救った大地が、それよりも酷い状態になるところであったのだ。
「穢れきる前に
「消滅した1名は、すでに救えないところまで進んでおりましたゆえ」
「うむ」
ウルトラウスオルコトヌスジリアス神にもフロルフローレ神にも、今回の浄化で1名救えないことはすでにわかっていた。
だがそれでも。
自らが直接手を差し伸べられぬが故、半神たる
憎悪から穢れを吐き出し元に戻れぬ魂は、
そして肉体と魂が消滅すると同時に、長かった苦しみからようやく解放されたのだった。
教会の中は未だ時が止まったような状態だった。
皆さん微動だにしない。
「あっ。あえ………」
「お嬢、気にしてしまっただろう」
新国王が持つロッドの魔石が魔力満タンになり光り輝いていた。
「あやや…」
ま、まあ、良いよね?
悪いことじゃないし。
ついでだから結界を付与しちゃうよ!私からのお祝いね!
発動は「結界よ、我らを護り給え!」でいいかな?
鑑定ちゃんによると、王都を覆うくらいの結界が張れるらしい。
やったね!
「主さん、太っ腹」
ミルニルがサムズアップをしたので、自分のポンポンを叩きました。
ポンッ!
「さて。一応教皇に声をかけるか」
皆に待機してもらい、気配完全遮断の鳳蝶丸と私でシュレおじいちゃんのところへ行く。
人が密集しているので、3人だけに結界を張り、音を外に漏らさないにした。
「鳳蝶丸だ。そのまま動かないでくれ」
鳳蝶丸の声にビクリとするシュレおじいちゃんが微かに頷いた。
「お嬢がプレミアムヒールを国中に放った」
シュレおじいちゃんが震えだす。その目からはとめどなく涙が流れた。
「俺達は行く。多少混乱があると思うがよろしく頼む」
コクリと微かに頷きながら、涙が止まらないシュレおじいちゃん。
大丈夫かな?
「シュエおじいたん、皆たん、だんばった。おちゅたえ、しゃま、でちた。あと、おめでと」
結界を解いて神像の側にいる皆の所に戻る。
おおお………。
我慢できず嗚咽をあげる。
周りの者達が心配してシュレおじいちゃんを支えていた。
涙が止まらないシュレおじいちゃんはキリッと顔を引き締め、新国王に耳打ちする。新国王は何度も頷き、それから神像のウル様に祈りを捧げ立ち上がった。
「皆、聞け!クラレツィア教皇が神より啓示を賜った」
人々にどよめきが起こる。
「先代から受けし苦しみによくぞ耐えたと我らは褒美を賜ったようだ。先程の光は、神の御業による治癒の光」
するとわれに帰った人々がざわめき始める。
侯爵閣下!御御足が!
目が、失った我が右目が蘇っているぞ!
体の重みや痛みが無くなっておりますわ!
ワシの曲がっていた腰がシャッキリ伸びたぞい!
皆歓喜に湧き、心震わせている。
「ウルトラウス神は仰った。我らの行く末を見ておられると。フロル神は仰った。良き御代を歩み、穢なき地にせよと」
ゆっくりと辺りを見回してから、力強く頷く。
「我が名はメルヴェイユ・ラ・フェリローラル。この国の王として神に誓う!我が代で豊かなる世に変えてみせよう。そして我が一族は良き国へ民を導くと約束しよう。民よ、我に続け!共に清廉たる道を歩もうぞ!」
おぉーーー!
会場中が湧いた。
皆興奮していた。
しばらくして、新国王が手を上げて静まるよう合図をおくる。
会場はシンと静まった。
新国王が水晶を枢機卿のおじいちゃんに渡し、左手にロッドを持ったまま壇上を降りる。
そしてゆっくりした足取りで要人席に近付き、右手を胸に当てて軽くお辞儀をした。
「本日いらしてくださった隣国の友よ。
サバンタリア王国やロストロニアン王国、他国の代表達も、胸に手を当て軽くお辞儀をした。
その後、教会関係者に導かれ神像の前に新国王が立ち、その横に王妃様が立った。2人の前に聖典を持ったシュレおじいちゃんが立ち、右手を軽く上げる。
「神はお認めになられた。ここに新国王が誕生したことを宣言する」
わあーーーーー!
歓声があがった。
皆生まれ変わった国に盛大なる拍手を送っていた。
嬉しそうな人々の笑顔に私も自然と笑みがこぼれるのだった。
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