第184話 優しくされたら自分のできる範囲でお礼をする。をモットーにしたいなと思う、1歳の春

 数日中には王都に出発しようか?と皆で話し合う。

 前回と違ってたぶんお祭りムードだろうし、街を散策しても良いよね。


 でもその前にマカマカへ行って家具がどうなっているのかと、ポンポさんの工房に行って磁器製品を作るかどうかと、商業ギルドへ行って磁器の登録があるかを確認しなくては。


「マタマタ、いちたい」


 皆にマカマカに行ってしたいことと、それに関しての打ち合わせをする。


「マカマカですか。レーヴァのいたところですね?」

「俺、初めて行くかも」


 ハルパとミルニルは、レーヴァに会っていたものの岩漿山には行ったことが無いらしい。今度ダンジョンに行ってみたいとの希望なので、最後の1人に会えたらその後に行こうと約束した。


 ………あのセミゲジゲジシカーダスコロペンドラの時は目を瞑っていていい?




 マカマカ時間の朝。町外れの海岸に転移の門戸を繋いでデリモアナ王国に入国する。


「あたたいねえ」

「砂漠の暑さを経験するとな」


 それほど暑さを感じない不思議。

 デリモアナは南国の爽やかな青空だった。



 まずはレーヴァ抱っこでカライカライさんの工房へ向かう。


「おう、嬢ちゃん!」

「おじたん、おはよ、ごじゃいましゅ」

「おはよう。元気だったか?」

「あい、でんちよ」


 外でオッコソルトを切り出している職人さんが直ぐに気づいてくれた。


「女将さーん!ゆきちゃん達が来たぜ!」

「はーい!あらあら、まあまあ、久しぶりねえ」

「おはよ、ごじゃいましゅ」

「おはようございます。さあ、どうぞ。入ってちょうだい」


 ティナティナさんに案内されて客間に向かった。


「あんたぁ!我が家の恩人がいらしたよっ」

「おーう!」


 カライカライさんが手ぬぐいで汗を拭いながらやって来る。


「嬢ちゃん、皆さん、久しぶりだな………ん?人増えたか?」

「お嬢を守る従者が増えただけだ」

「はあ、無敵だな、嬢ちゃん」

「あい」


 カライカライさんが豪快に笑う。

 そして私達の前に腰を掛け、頭を深々と下げた。


「あんときは本当に助かった。感謝する」


 ティナティナさんも一緒に頭を下げた。


 あれからまだ高貴なお方に納品がされていないらしい。

 王国の中枢とそれに関わる貴族達は例の天罰の件で右往左往しており、高貴なお方もそれに関わっていて時間が取れないらしい。


 偉い人なら家具の納品は部下に任せればいいのでは?と聞いたら、美術品や家具などは完全なる趣味で、まず自らの目で確認したいからと仰せらしい。


 まあ、楽しみにしていた物は、自分が一番に目にしたいよね。



 それとせっかくの待機時間なんだから、私が錬金魔法(本当は再構築)で作った家具ではなく、新たに作り直せば良かったのでは?と聞いたら、いつ納品の連絡が来るかもわからないので作り直しはできないとのことだった。


 それもそうだね。



 マカマキ商会長とその関係者達に関してはガッツリと天罰が下ったらしい。

 闇ギルドとの繋がりが明るみとなったため商会は解体され、商業ギルドから商人の資格剥奪がなされた。そして奴隷落ちする、もしくは処刑されたとのこと。



 ちなみに、マカマカの商業ギルドにも天罰が下った職員がいたんだって。

 恐ろしいねぇ。



「それで、嬢ちゃんの家具だが、まだ予定の半分しか出来てねえ」

「ごめんなさいね。この人達、素晴らしい物を作るんだって張り切っちゃって、物凄く時間をかけてんのよ」


 私のために張り切ってくれてありがとう。


「あー。もしかして欲しい期日があったか?」

「ううん、いちゅでも、だいじょぶ。あにあと!」


 見ていくか?と言われたけれど、出来上がった時の楽しみにしておくことにした。

 あ、でも倉庫に置いておくのが難しいなら引き取るよ?


「大丈夫。問題ないぜ」

「気にしなくてもいいのよ。卸しているお店の方にも倉庫があるから」

「じゃ、あとで、いいな」

「承知した」

「たのちみい♪よよちく、おねだい、ちましゅ」

「おう、楽しみにしていてくれ」



 そろそろ次へ行こうと思うけれど、その前にハイ・ダークウォールナットは欲しい?と聞いたら、今は資金がないから次回購入したいとのことだった。


 了解ですっ。


 ではそろそろお暇しよう。


「こえ、どうじょ」


 お約束のパウンドケーキセットと紅茶を渡す。女将さんがめちゃくちゃ喜んでいるよ。


「お嬢の都合になるが、また来る」

「ああ。何度も悪いな」

「だいじょぶ。またね」


 カライカライさんとティナティナさん、そして職人さん達に挨拶をしてから工房を出た。




 次はポンポさんの工房。

 優しくしてくれたお礼に、乾いたマカマカクレイが有用だと伝えに行きたいのだ。


「こんにちはぁ」

「邪魔する」


 まずは鳳蝶丸と私で突撃!


「はあーい、あら、まあ。以前来たお嬢ちゃんね」

「おやおや。元気だったかい?」

「あい。おじーたん、おばーたん、おし…おしゃししぶい、でしゅ」

「お久しぶり、とのことですよ」

「ええ。お久しぶりね」


 ハノアおばあちゃんに応接間へどうぞと言われたけれど、人数が増えたので遠慮する。


「俺達は乾ききったマカマカクレイの話をしに来た」

「廃棄粘土のことか。では工房に来ておくれ。あちらなら全員入れるだろう」


 皆で工房に行くと、40代くらいと20代くらいの男性が働いていた。

 ポンポおじいちゃんの息子さんのポノアさんと、お孫さんのノアノアさんだと紹介される。ノアノアさんは背が高いから20代だと思ったんだけれど、まだ17歳なんだって。


「わたち、かじょく」


 ポンポさんのご家族を紹介されたので、私も(鳳蝶丸通訳で)皆を紹介した。



「ほれ、前に廃棄粘土をあげたと言ったろう?」

「そういや言ってたな。アレは使えたかい?」

「あい。良いの、でちた」



 良い物が出来たよ!



「こえ、おしゃや」


 皆が作ったお皿やお茶碗を複写して出す。


「なっ!」

「こ、これは!」

「すっげ!」


 するとポンポおじいちゃん一家がガッチリ固まった。


「たたまゆ、粘土、だやしゅしゅちゅ、なゆ」

「固まった粘土は普通のマカマカクレイより硝子質になる。衝撃を与えればもちろん割れるが、見た目より丈夫だからこれくらい薄くても問題ない」


 私では上手く説明できないので、あとは皆に説明をお願いする。


「こんなに薄くても良いのか!」

「なんと美しい!」


 あ、おじいちゃん達が動き出した。

 そして、皆が焼いた作品を凝視している。



 キンッ



 レーヴァがお皿を指で弾く。涼やかな音がした。


「これの作り方について話す前に商業ギルドに行くんだけれど、君達と独占契約にしたいんだよね」

「えっ………ええっ!」

「いっ、いいのか?!」

「それが我が姫の望みなんでね」


 親切にしてくれたのはこちらの工房だけだった。

 だからもしポンポおじいちゃんが良ければ、独占契約にしたい。


「ありがたい。大変ありがたいが、下手をするとこの小さな工房が嫌がらせを受ける可能性もある」

「親父……。親父の気持ちもわかるが、これは大きな機会チャンスだと思う。俺は賛成だし受け入れたい」

「俺も!じいちゃん、やろうぜ」

「わかっているが、家族に危害を加えられるかもしれんと思うとな」


 どちらの言い分もわかる。

 ポノアさん達は若い分、新たな挑戦がしてみたいよね。



 と言うことでレーヴァさん、お願いします。


「そういうこともあるだろうね。だから君達を守る手段は考えてあるんだ。まずは我々と魔法契約をして欲しい」


 契約内容は以下の通り。

 乾いたマカマカクレイを使った磁器の製造方法と、私達についての全てを何らかの手段で相手に伝えようとすると、生命維持以外10秒動けなくなる。そして無理矢理聞き出そうとする行為、詰問、暴力、その指示を行った者は生命維持以外1時間動けなくなる。

 ただし、製作方法と私達について知っている者同士を除く。


 それから工房と自宅周辺を結界で囲い、悪意ある者と物の侵入、攻撃をすべて防ぐとする。


「これでどうだい?」

「……………………へ?」

「そんなこと出来るわけ無いだろ!相手にまで影響がおよぶ魔法契約なんて聞いたことがないぜ!」


 お孫さんのノアノアさんが反論してきた。

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