第181話 焼き物チャレンジ(粘土作りから素焼きまで)

 今日はお家の模型を作ります。

 結局、建物の様式はなんちゃってロココ調建築、シンプル気味ロココ調内装にすることにした。

 好きなものの寄せ集めだからバロックとかゴシックとか混ざりそう…と言う意味でなんちゃって建築なのだ。


 だって建築家じゃ無いんだもん(開き直り中)。



 テントの外に大きな帆布シートを敷いて、防塵・防砂・防火の結界1、作業台数台にも防火付与の結界4(平面)を張る。

 そして皆の前にある作業台にマカマカで貰った乾ききったマカマカクレイと水差しを置いた。


「ふんしゃい、しゅゆ」


 そして微粒子粉砕をした。


「しゅこし、みじゅいえて、ねゆ」


 少しずつ水を加えながら、成形に丁度良い硬さに練ってね。



 鳳蝶丸に水を加えてもらいながら自分で練ってみたけれど、小さくて非力な私の手では上手くいかず、ただの砂遊びになってしまう………。


「量も多いし、俺が練るがかまわないか?」

「あい。おねだい、しましゅ」


 マカマカクレイを前に困惑してたら、鳳蝶丸が練ってくれることになった。

 結構な量なのに、あっと言う間に良い塩梅の硬さにする鳳蝶丸。ありがとっ。



 確か体験教室で、粘土に空気が残っていると割れたりする原因になると言われた気がするので、今度は空気を抜くため押し出すように練って欲しいとお願いする。


 もちろん器用な鳳蝶丸なので、私の分と自分の分を理想の粘土に練りあげるのは簡単だった模様。とても綺麗なまあるい粘土が出来上がった。


 うん、皆も練り終わったみたい。

 体験教室で使った電動轆轤を再構築、大型ポータブル充電器も出して使い方を説明した。


「クルクル回るんだね」

「なかなか面白い」

「あっ!」

「!」


 レーヴァとハルパは轆轤を使って、問題なくお皿やスープボールを作っている。

 でも力持ちのミルニルとミスティルには加減が難しいらしく、何回かグニュッと変形させていた。


「ミルニル。お嬢の髪を洗う時みたいに優しくな。ミスティルはクレープ作りを思い出してみてくれ」

「わかった」

「そうでした」


 鳳蝶丸のアドバイスで、失敗しながらもお茶碗や両手持ちマグカップを成形していた。



 私は轆轤を使わない。

 鳳蝶丸に粘土を四角い箱みたいな形にしてもらい、『彫塑・成形』で粘土を思い通りの形にするつもり。



 外観はロココ調建築の有名な宮殿をモチーフにする。

 そのままだと建物が大きすぎるので、その宮殿の正面部分のみを再現。



 では……。

 『彫塑・成形』!



 粘土がグニュグニュ〜と動き出し、やがて形になっていく。ウィステリア神の加護で補正が付き、細部まで美しく立派な建築模型が出来上がった。

 


「すごい、姫」

「どんどん形になって行く」

「これが俺達の家?」

「あいっ」


 やがて動きが止まり、立派な宮殿(の一部)が出来上がる。


「ん?主さん、粘土の重みで形が変わりそうだよ?」

「ぴゃっ!」


 粘土の重みで屋根と壁の一部が潰れ始める。

 このままじゃ乾燥させる前に形が変わっちゃう!



「俺に任せてくれ。エメル」


 私があわあわしていると、鳳蝶丸がエメルを呼んだ。


「はあぁい☆」


 少しして、エメルが姿を表す。


「主様、久しぶりねっ」

「こんにちは、エメユ」

「皆様もお久しぶりだわ。相変わらずイイ男達ネ☆ところで、あたくしにどんなご用かしら?」

「粘土から水分を抜いてもらいたい」

「水分?」


 エメルは水の精霊で粘土から水分を抜くことが可能なので、作ったものの乾燥を手伝ってもらうとのこと。




「まずはお嬢の模型を乾燥させてくれ。一気にではなくゆっくりな」

「わかったわ」


 私はつぶれた建物を鳳蝶丸が練った粘土の状態に再構築し、もう一度『彫塑・成形』で建物を再現する。それと同時にエメルがジワジワと水分を抜いてくれた。


「やったった」

「これでいいかしら?」

「うん、エメユ、あにあと!」

「うふふ、どういたしまして。お役に立てて嬉しいわ」


 エメルが皆の作品も乾燥している間、模型の中をくり抜くことにする。

 『彫塑・成形』でくり抜くと、簡単に削ることが出来た。削りカスを清浄で消して、一旦無限収納に入れる。


 皆も乾燥してもらったみた……。



 あっ!



「良い、これ」

「粘土を6つに分けて作ったから、旦那達にもやるよ」

「いい仕事しました」

「凄く可愛いね。部屋に飾るよ」

「私も貰って良いのですか?」

「そえ……」


 鳳蝶丸が作ったのは、ちょっとデフォルメした私の人形、いやフィギュアだった!


「なかなか良く出来てるだろ?お嬢」

「あ、あい…」


 流石、器用な鳳蝶丸。細かいところまで綺麗に作ってある。

 全部違うポーズでどれも可愛らしいね。



 なら、私も作ろう!



「エメユ、てちゅだう、いい?」

「うん?水を抜くの?任せてちょうだいっ」



 マカマカクレイを出して、鳳蝶丸が練った粘土に再構築、そして『彫塑・成形』。

 粘土がグニュッグニュッと動いて出来上がったのは、ジャジャーン!5人のフィギュアあぁぁっ。ちょっと萌え系のポーズ付☆


「これはわたし達ですか?」

「あいっ」


 ふっふっふ、なかなか良い感じにできた!


「たいしぇちゅ、しゅゆっ。いちゅも、持ってて、とちどち、見ゆ」


 大切にして、いつも持ち歩いて、時々眺めるんだ。

 ウキウキしながらエメルに乾燥をお願いする。


「あらあら、いいわね?イイ男に仕上がっているじゃないのっ」


 そして中をくり抜いて無限収納に仕舞った。



 鳳蝶丸が追加で作った作品も乾燥させ、半神人形の中もくり抜き、皆が作った作品も全部一緒に一旦無限収納に仕舞う。

 さて、次は素焼きかな。


 素焼きは数十時間かけて900~1000度で焼く。急激に冷ますと割れてしまうので、温度を下げるのにも時間をかけることになる。


 本焼きはもっと高い温度で焼いて、数日から数十日かかる、だったかな?

 焼き物体験をした時に、私達が使っている食器類は凄く時間がかかっているんだねって友達と話したことを思い出す。

 そしてその時の記憶を思い出しながら、私が覚えている限りの工程を皆に説明した。

 素焼きして、下絵付けして、施釉して、本焼きして、上絵付けして、また焼き付けて。


「焼き物はそんなに時間がかかるのか」


 うんうん。

 食器工場はどういう風に作っているのかわからないけれど、手作りの工房とかは時間をかけているみたいだよ。


 それでね、私には秘策があるんだ。

 いや、秘策ってほどでもないけれど、多少自分が恥ずかしいだけで作業が大幅に短縮できる、手抜きと言うかズルというか。


 でも、使わない手はない!



「イェーバ、すやち、てちゅだて?」


 レーヴァに素焼きの手伝いをお願いしたら、細かい温度調節は少し難しいとのこと。


「それならアイツの方が得意かも。スザク」

「お待ちしておりましたっ。姫様、お久しゅうございます」

「こんにちは。おてちゅだい、あにあと」

「とんでもございません」


 私の説明を聞いて、火属性のスザクが焼く過程を手伝ってくれることになった。


「なら、あたくしも必要よ」


 乾燥はしたけれど、焼く過程でもまだ水分が出る。だから割れやヒビ、温度調整によっては爆発とならないように、水属性のエメルが更に水分調整をしてくれる。


「じゃあ、ピヨコも力になるんじゃない?」


 呼ばれて飛び出てワラララ~。我ら見っ参っ!なポーズで現れたピヨコちゃん達。

 土属性の彼らが温度を上げたり下げたりする過程で壊れないように土の状態を維持してくれるんだって。


「主様。焼く過程だけはあたくし達にお任せくださるかしら?」

「我らが責任をもって良い状態に焼き上げますゆえ」


 ピヨコちゃん達がコクコクコク、と頷いている。


「あにあと。よよちく、おねだい、しましゅ」


 あとはアレですよ。


「わたち、じたん、はやめゆ」


 私の秘策とは………。


 マジカルラブリンで時間を早めること。

 フハハハハ!窮極の時短だじぇ!

 いや、すみません。



 では、実際に始めましょう。

 まずは眷属の皆に焼きの予定を説明する。


 マジカルラブリンの時間設定は30秒=60分に定義。

 素焼き。じっくりゆっくり温度を上げながら900度到達まで約8分。ゆっくり950度まで上げて約15分。火を落としてから約8分。

 本焼きはじっくりゆっくり温度を上げながら1400度到達まで約8分。1450度になってから約35分。そこからゆっくり冷まして約8分。

 そのあと上絵付をした場合は800度くらいで4分ほど焼いて完成。


 これはあくまでもおおよその設定。

 焼き具合はスザクとエメルとピヨコちゃん達に全面的に任せるつもり。

 仲間がチートって素晴らしい! 



 作業台2台に結界4(立体)を1つずつ張って、熱と炎を外に出さないにした。

 焼き窯代わりにこれで良いか聞いたら問題ないとのこと。


 1つめの結界4(立体)の中側に結界4(平面)の仕切り台を真ん中と下に張って2段にする。仕切り台は熱を通すにし、両脇を短くして吹き抜けのようにし、結界内の熱を満遍なく対流させられるようにする。

 2つめの結界4は仕切り台を下の方に張り、あとは1つめと同じ設定にした。



「主様にお願いがあるの」

「あい。なあに?」

「あたくし達も初の試みなので、練習をさせてもらえるかしら?」

「そうですな。出来ればワタクシも試し焼きをしてみたいのですが」

 コクコクコク。


 そうだよね。

 じゃあ、粘土の作品を複写するからそれを焼いて、上手くいけばそのままで良いし、失敗したら何度でも焼き直せばいい。

 多少の時間はかかるけれど30秒を60分にしてあるのでかなり時短になるし。


 と言うことで、皆の作品と自分の作品を私の無限収納で複写した。

 そして、作業台1の結界内に皆の作品を置いていく。

 私の建築模型は他の物よりやや大きいので、作業台2の結界に置きました。


「おねだい、しましゅ」

「わかりました。ワタクシが合図をいたしましたら時間を早めてくださいませ」



 結界の4側面にオレンジ色の小さな塊のようなものが現れた。あまり直視出来ないけれどちょっと溶岩っぽい。



「主様、今ですっ」



 よし、いくぞいくぞぉ!



「マイカユ、アブイン、萌えちゅんちゅん☆てったい、なた、30びょ、60分、なあえ♪」


 マジカルラブリン萌えきゅんきゅん☆結界の中が30秒=60分になあれ♪



 じわじわとオレンジ色が広がって、9分後には全側面になり、四角い溶岩の箱みたいになる。


 ち、ちょっと眩しい……。


 色々な種類の黒いサングラスを再構築。

 メン(M)でイン(I)なブラック(B)的サングラスは各サイズに再構成して眷属の皆に配った。

 スザクは必要ないみたいだけれど記念に欲しいということでレーヴァに預けておく。小さな亀さんのエメルと小さなピヨコちゃん達のサングラス姿はめちゃめちゃ可愛かった。


 そして何と言っても我が家のイケメン達。

 それぞれ好きなデザインを選んでもらったんだけれど、それぞれに合っていて恰好良かったよ!


 ん?私?

 私はセレブ御用達みたいなサングラスをかけてみた。ちょっと憧れていたんだ。

 エヘヘ♪

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