第176話 ピヨコちゃん、取り尽くす

「さじょう、部屋、ちゅちゅゆ?」


 鳳蝶丸の魔道具部屋のような作業する部屋を作りますか?


「いいの?」

「うんっ」


 ミルニルの希望で、鳳蝶丸の作業部屋のような空間を追加する。

 防音・防火の結界を張り、許可のある者しか入れないにしたよ。


「こえ、だいじょぶ?」

「うん、ありがと!主さん」

「あいっ。よよちく、おねだい、しましゅ」


 ミルニルの作業部屋にキング魔石を10個くらい出した。


「じゃあ早速。と、その前に。ピヨコ」


 ミルニルに呼ばれてワラワラワラ〜っと現れるピヨコちゃん達。


「金剛鋼鉱石、お願い」


 ピョンピョン飛び跳ねるピヨコちゃん達。

 皆それぞれ、力こぶや胸を叩く、人差し指を天に向けて1等賞ポーズをしている。そして、皆同時に私に手を振りながら空間に消えていった。


「だんばえぇ!」


 私が遅れて声援を送ると1人だけひょっこり戻ってきて、王子様がお姫様にするみたいなポーズをしてパッと消えた。



 ピヨコちゃん達紳士ぃ。



「これで良し。じゃあ、剣を作るよ」

「見て、いい?」

「いいよ。念のため結界張って欲しいかな」

「あい」


 ミルニルが端っこにベビーチェアを出し座らせてくれたので、自分に結界1を張った。


「てったい、張った」

「じゃあ、作るね」


 ミルニルは直ぐに真剣な職人の顔になって、魔石を両手で掴む。



 にゅにゅにゅにゅにゅ〜。



 魔石を伸ばすような仕草をすると、大まかな長剣の形になった。

 手離すと剣がミルニルの腰のあたりに浮ぶ。



 ボオウウゥ!!



 そして手を翳すと金色の炎が剣を包み、ミルニルが鎚を振り上げ剣を打つ。



 キンッ



 鉱石を打つ音がして、刀鍛冶が鍛錬する時のような火花が散った。



 キンキンッ

 キンキンッ



 金色の炎で手が熱くならないのかな?不思議。



 キンキンッ

 キンキンッ



 鎚打つ音が何度も聞こえ、ミルニルが時折魔石の剣を手にとって刃の具合を確認する。そして再び金色の炎に入れて鎚を打った。



 何度も繰り返すその動作を見ているうち、だんだん眠くなってくる。

 見ていたいのに瞼が落ち、カクンとして目が覚める。


「寝にゃい………うぅ、寝にゃいの……見ゆ…の…………」


 そのうち本当にわからなくなり夢の中へ。

 まだ見ていたいのにぃ………むにゃ。






 自分の部屋の寝室で目が冷める。


「おはよう、姫。今日も可愛いね」

「おはよ、イェーバ」


 まだ眠くてしょぼしょぼしていると、清浄カードで身綺麗にされる。

 抱っこされネコちゃんロンパースのまま寛ぎ部屋に行くと、全員が揃っていた。


「おあよ、ごじゃいましゅ」

「おはよう」「おはようございます」「おはよ」「おはようございます」


 眠くて眠くてレーヴァの胸に頭をこすりつけていると、ミルニルが私に長剣を差し出した。


「主さん、出来たよ」

「あっ」


 作っているところを見たかったのに途中で寝ちゃった!


「回避のネックレスも出来ていますよ」


 ネックレスも作っているところを見せてもらおうと思っていたのに寝ちゃった!


「あにあとっ。おちゅたえ、しゃま、でちた。寝て、ごめんちゃい」

「いいよ」

「見たたった」

「今度釣り道具作るからその時見ればいいよ」

「うんっ」


 そうだ。まだ釣り具があった。

 今度こそ起きているぞ、おー!


「ハユパ、見しぇて、ちゅえゆ?」


 ハルパも見せてくれる?


「私のスキルは呪術に近く、危険なので見せられません」

「しょったあ」



 しょぼん……。



「でも、ただのアクセサリー作りまでなら大丈夫です。それでも良いですか?」

「あいっ」


 アクセサリーはレジンとかビーズで私も色々作っていたな。


「とんど、いっちょ、ちゅくろ?」


 今度一緒に何か作ろうと言ったら、ハルパが楽しみですねと笑った。




「わあ、たっといい!」


 ハルパのネックレスは小さな宝石がついたシンプルかつスタイリッシュなデザインで、凄くカッコイイ!

 鑑定してみると「回避」身の危険からの回避率20%増と表示される。

 元から持っている能力にプラスされて、咄嗟の危険を回避できるようになるんだね。


「ハユパ、しゅどい、あにあと」


 効果の高い素晴らしいネックレスをありがとう!


「どういたしまして」


 皆で話し合い、ネックレスはラエドさん達と兵士さん達皆にプレゼントすることに決まった。

 ハルパ自身は作り終わった物にそれほど関心は無く、兵士達がネックレスを必要としなくなった時、売って資金にすればよいと言っていた。




 次は魔石で作った剣。


「ちえいねぇ」


 ミルニルが作ってくれた魔石剣は刃が透明の剣で、グリップやガードは銀古美の様な色合い。装飾もされていてとても美しかった。


「ここ、金剛鋼鉱石」


 グリップやガードの部分はピヨコちゃん達が探しに行っていた鉱石を使っているらしい。


「金剛鋼鉱石とは随分凄いのを使ったな」


 鳳蝶丸が魔石剣を上下左右と振っている。


「主さんの釣り竿に使おうと思ったら、ピヨコ達が沢山持って帰ってきた」


 金剛鋼鉱石とは、この世界で一番硬く魔力を貯める性質がある、大変貴重な鉱石なんだって。

 難点は重さ。尋常じゃない重さらしい。


 え?でも、鳳蝶丸簡単に振っているよね?と聞いたら、「まあ、このくらいならな」と言いニッと笑った。


「オット、ショユト、重い?」

「金剛鋼鉱石かい?うん、オッコソルトより重いかな」

「おぉ〜」


 相当重いんだね?

 オッコソルト持ったことないけれど。


「それに、金剛鋼鉱石と魔石は相性がいい」


 鳳蝶丸から剣を受け取って、ミルニルが私に差し出す。

 グリップを鑑定すると魔素取り込み中とあり、刃を鑑定すると魔力充填中と表示された。


 ミルニルの話では、金剛鋼鉱石と魔石が一部でも接していると、大気中の魔素を金剛鋼鉱石が取り込んで体積分蓄積し、魔石がそこから魔力として吸収、微量ずつではあるけれど魔力充填をしている状態になるらしい。


 充填量は微量でも、放置しているだけで貯まるんだから凄い便利だよ!



「そしてお嬢。想像できると思うが金剛鋼鉱石は大変な希少品だ」


 う、うわあ………。

 ハンドボールブルーダイヤモンドAgain?


「ブルーやレッドダイヤモンドよりも希少だぞ?」



 わあっ。

 フィガロギルマスが喜びすぎて空まで飛んで行きそう。



「主さん、これ余り」


 そしてミルニルから渡されたのは、大き目の帆布シートに山盛りになっている大小様々な金剛鋼鉱石だった。


「あにあと」

「多分この辺りにはもう無いから複写して」

「うん」


 ピヨコちゃん、取り尽くしたのね。

 取り尽くしてこの辺りの人が困らない?と聞いたら、人の子じゃ探せないくらい地中深くだから大丈夫とのことだった。


 じゃあ、遠慮なく無限収納に閉まっちゃおう。

 釣具作る時は複写するね。



 で、この超重量な鉱石をグリップとガードにした超高価で超美麗な剣である。


「このままだと人の子らには持てません」

「私達は問題ありませんが、彼等は流石に扱えないと思いますよ」


 ミスティルとハルパが美剣を眺めて困惑している。


「うん。だけど主さんが馬具に浮遊魔法をかけるって聞いて、この剣もそうすればいいかなって思った」


 ミルニルは私の話を聞いて作ってくれたんだね。

 そう言うことならもちろん浮遊かけるよ。


「その前に、姫はまず結界付与をしないと」

「あいっ」


 そうだった。

 仕上げに結界を付与しなくては。



 持ち主に悪意、敵意、物理攻撃、魔法攻撃の存在を察知した場合、また持ち主に危険が生じた場合は結界3を発動する。

 [解除]と念じれば結界は解除される。

 中側からの攻撃は通す。



 これでいいかなあ。


 皆に説明すると良いと思うと言われ、早速剣に付与を施す。

 ついでに魔力も満タンにしておいた。



 あとはラエドさん達に触れてもらって重さを決めると良いと言われ、無限収納に入れる。そしてミルニルが作ったものをオリジナルとし、3本ほど複写した。


 浮遊で重さを調節すれば切れるし壊れ難い剣の完成だよっ。

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