巡れ！半神と仲間たち 半神幼女が旅行とごはんとクラフトしながら異世界を満喫するよ！ ～天罰を添えて～

第175話 思ったことを言ってしまう。だって幼児だから

　あとは、今後について。

「もうひとつ、伝えるべきことがあります」

　ハルパの言葉にラエドさん達が緊張する。

「スタンピードです」

「やはり………」

「我らはスタンピードの兆候を知り、この街に戻って来ました」

　そうだったんだ。

「今いるこの一角以外の人間や獣人達は荒んでおります。ダンジョン受付職員も仕事にならない状態のため、正当な手続きではダンジョンに入れません」

「だが我らはこの街にもダンジョンにも入れる別ルートがある。今は斥候達がそこから入り調査中なのだ」

「俺は魔力でダンジョンを探っているけれど、質の悪い魔力がかなり膨れ上がっている」

　だからサハルタル王国奪還が疎かになっているという。

「スタンピードは俺達でどうにかする」

「そうそう。斥候が帰ってきたら直ぐ公爵三家を討ちに向かったら？」

「任せて」

　鳳蝶丸とレーヴァ、ミルニルが真面目な顔で提案していた。

　でも心はウキウキしているよね？

　わたち、知ってゆ。

「この街は主の結界に守られているので安全です」

「ここに住んでいる者達は街から出ないよう声がけをしてください。あとは私達と主殿に任せるように」

　うんうん。

　浄化するよ、ガッツリと。

　でも、また澱みが溜まらないように国を立て直してね。

　私達がダンジョンに行くからね！そしてチャンスがあれば狩るんだ。

「シャン、シャーモン」

　あ、心の声が口から飛び出しちゃった！

「え？」

「………………」

　ラエドさん達が困惑する。

　スタンピードを防ぐべくダンジョン行くわけだけれど、サンドサーモンが気になりすぎて、私の中の幼心の君が突っ走っただけなの。

　幼児は欲望に忠実です。

　ゆゆちて？

「しゅたんぴーど、しゅーしょく、しゅゆ。問題ない」

　キリッ

　フォローのため、スタンピードが終息させるから問題無いよ。と言ってみる。

　あ、仲間達が爆笑してる。

「主さん、キリッとしてもバレてるよ」

「お嬢はサンドサーモンが気になるもんな？」

「我が姫のご希望通り、このレーヴァ。身命を賭してサンドサーモンを狩りましょう」

　命賭けちゃダメ。

「命がけって相手でもないでしょう？大袈裟に言わないでください。主が気にしてしまいますよ」

「出現率は低いですが、今のダンジョンならば遭遇出来るのでは？主殿のキリッのお礼に探索しますよ」

「ちょ、ちょっとまってくれ！」

　ラエドさんが慌てた様子で私達に待ったをかける。

「サンドサーモン探しは通常の時にして、スタンピードの方を頼みたい」

「だいじょぶ。しゅたんぴーど、おわや、しぇゆ」

　キリッ

　気に入っちゃったのでまたキリッ顔してみたよ。

　幼児は気に入ったことがあると、何度でも繰り返すのだっ。

　あ、また仲間達にウケている。

　でもブームは直ぐ終わるよ。何故なら飽きるのも早いから。

　一抹の不安を感じている表情のラエドさん達はスタンピードを私達に託し、出発日を早めることにしたと言っている。

「あちた、おてまみ、見て」

「明日マジックバッグに手紙を入れるので読んでほしい、と言うことです」

「承知した。この度は貴重な情報と、兵達への心配り心より感謝する。今は何もできないが、全てが終決したら礼をさせて欲しい」

「それは全てが終わってから。まずは決着をつけてください」

「はい。必ずや」

　必ずや勝利しますと誓いを立て、ラエドさん達は帰って行った。

　その格好じゃ寒いのでは？と心配したら、物陰にマントを置いてきたんだって。暗がりに消えゆく後ろ姿を見ながら気を付けてね！と声をかける。

「だんばえー！」

　またね。

　次会う時は皆さんが笑顔でありますように。

　翌早朝。

　皆でトーストとベーコン＆スクランブルエッグを食べながら雑談や今後について話をしていた。

　今ならアノこと聞けるかな？

　実は昨夜、ちょっと思いついたことがあって皆に聞いてみようと思っていたんだ。

「こえ、シャンシャーモン、ちゅえゆ？」

　父の残した釣り竿を複写して、サンドサーモンが釣れるか聞いてみた。

　日本にいた頃の私は釣りをしたことが無い。

　いや、あるにはあるんだけれど、小さい頃に父が連れて行ってくれた記憶が微かにあるだけ。だから釣りのやり方やコツを全く知らないんだけれど、何となくやってみたくなったんだ。

「これでは釣れん」

「喰い付いた途端に折れてしまうんじゃないかな？」

　鳳蝶丸とレーヴァの言う通り、折れちゃいますよねえ。

　相手魔獣だもん。

「主さん、釣りしたいの？」

「しゅこし。ダメ、いいの」

　ちょっとやってみたかっただけで駄目ならいいの。

　ミルニルが複製した父の竿をじっくり見ている。

「うん。武器としてなら作れそう」

「え？」

　ミルニルは「武器・武具造形」と言うスキル持ちなんだって。

　私の持ち出した釣り竿を見て興味を持ち、作ってみたいと言う。複写だし解体してもいいよと告げると嬉しそうにマジックバッグに仕舞った。

　釣り竿が武器ってどんなになるんだろう？

　楽しみ！

　次は鳳蝶丸に[身に危険が及ぶと結界発動]って出来るかを聞いたら、[危険]の定義が曖昧だから難しいかもしれないと言われた。

　私がゴリ押しで魔石に何らかの付与をしたとして、小さい魔石では私の魔力に耐えられず割れてしまうとのこと。

　うーん。

　ですよねえ。

「何か気になることでも？」

「わたなない。でも、ちになゆの」

　わからないけど胸騒ぎがして気になると告げると、それならばとハルパが回避を付与したアクセサリーを作ってくれると言うことになった

　ハルパは「呪術付与」というスキルを持っているんだって。

　呪い的な呪具の方が得意だけれど、守護系のアクセサリーも作れるということで作成をお願いをした。

「結界は付与できませんが、何も無いよりいいと思いますよ」

「うん、あにあと！」

　でも、やっぱり結界の魔石を渡したいんだ………。何となくだけれど。

　小さな魔石に付与できないし、大きな魔石は持ち歩けないし………。

　あっ、そうだ！

　大きな魔石にゴリ押し付与しておいて、小さな魔石と魔法陣で繋ぐって言うのはどう？

　いざという時結界だけ放出できれば小さな魔石は割れちゃってもいい。

　ハルパの話では彼らは強いみたいだから、もし命の危機があるとしたら不意打ちとか予測不可能な攻撃をされた時でしょう？

　小さな魔石は複写で増やせるし、割れたらマジックバッグに入れておいてもらえれば私が処分する。

　そして大きな魔石はどうするのかと言うと、馬具につけて私の浮遊魔法を少しかければ良い。そうすればお馬さんにも負担がかからないんじゃないかな？

　と、皆に話すととても良い考えだと言われた。

　でも、馬を連れて行かない場所もあるんじゃないか？とも指摘もされる。

　徒歩で敵に近付くことだってあるか……。

「だったら、剣を作るのはどう？」

　考え込んでいたら、ミルニルが提案してくれた。

「俺が大きな魔石で剣を作って主さんがそれに直接結界を付与すれば、小さな魔石を作らなくていいんじゃない？」

　なるほど。

　剣型の魔石なら大きいし、私が付与しても壊れない。

　でも魔石で剣を作れるの？私、鉄のインゴット持っているよ？

「ミルニルは物体であれば、どんな材質でも武器や防具が作れるんですよ」

「でも肉とかでは作りたくないかな。あと液体は無理」

　ミスティルとミルニルがそう教えてくれた。

　魔石でも武器や武具が作れるなんて凄い！

「ミルニルが作るならば丈夫で使い勝手の良い武器になるし、長剣くらいの魔石なら付与も問題ないと思う。うん、なかなか良い提案じゃないかな」

　レーヴァが太鼓判を押した。

「ミユニユ、さちに、ちゅちゅゆ、おねだい？」

　ミルニルには釣り竿より先に武器を作って欲しいとお願いする。

「わかった。任せて」

「よよちく、おねだい、しましゅ」

　そしてレーヴァに[今日の夜か明日朝にまた来てもらえませんか]とラエドさん宛ての手紙を書いてもらい、共有の1枠に入れておく。

「じゃ、早速作ろうかな」

「いっしょ、行て、いい？」

「もちろん」

　私も一緒にミルニルの部屋へついて行くことにした。