第167話 モクモクモクモク、てーん♪
「しゅどい!」
空から見ているのに、地の果てまでも砂漠しか見えなかった。
「ここは階層がありません。そして砂漠しかありません」
「ダンジョンコアが空間操作しているから、果てしなく砂漠なんだよ」
岩漿山の草原みたいな感じ?
「ちなみにダンジョンコアは常に砂の中を移動している」
「見つかりにくい」
なるほど。
こんな広い場所で仲間を探せる気がしないよ?
「あー。あまり言うのもアレだが、コアと一緒に移動はしていない」
「うん。コアはコア」
なら探せるね!
と、思ったそんな時間もありました。
私の地図で表示できる範囲を目一杯広げているけれど、ハテナマークが見当たりません。
無駄にデカイよ、迷い砂漠。
「この辺りから強いのが出る」
「ちた、おいゆ?」
皆は武器だから、時折戦闘したほうがストレス発散になると思う。
この間森でも戦ったけれど、皆にとっては弱々だもんね?
「今日は俺のおんぶだよ」
「うん。よよちくね!」
今日はミルニルおんぶ!
砂漠に降りると同時にエンカウント。
まず遭遇したのはサンドジャーボアメイジャーとか、グレージュヘッジホッグコロネルとか、一見可愛いのに巨大で兇暴な魔獣だった。
「主さん。揺れるけど、大丈夫?」
「だいじょぶ」
ミルニルの戦闘を見るのは初めてかも。
彼は戦鎚だけど、いつも出すのは小さくて可愛い鎚。
どんなふうに戦うのかな?って思っていたんだ。
パアッ!
手元が光って小さな鎚が現れる。
ブンッと振り上げると巨大化した。
その長さはミルニルの身長を超えるよね?そして
それを勢いよく振り下ろすと、グレージュヘッジホッグコロネルの頭にドカンッ!!とHITした。
ああぁぁぁ威力凄すぎる!
ダンジョンなのでやがて消えるけれど、わりと生々しい!
心の中でモザイクかけとこ。
ホットサンドスコーピオン、ホットサンドスコーピオンキング・クイーン。
フィアスサンドワームズは必ず複数で襲ってくる。
それをドッカンドッカン叩き潰しながらミルニルが征く。
私は地図見てよっと、そうしよっと。
未だ現れぬ?マークを探して、私は地図に集中するのだった。
もう、何時間彷徨っているのかわかりません。
飽きちゃったので帆布シートに浮遊をかけ、プカプカ浮かびながら皆で休みつつ、ちょっと遅いお昼ごはんを食べています。
カツ丼とお味噌汁をいただきました。大変美味しゅうございました。
そしてこの後はお昼寝をする予定です。
空に浮かんだ帆布シートに横になり寛ぐ私達。
皆は交替でダンジョンに行っていたらしいけれど、私はグッスリ眠りました。
「みちゅたん、なたった、ねえ」
見つからなかったねえ?
何をしたら見つかるだろう?相変わらずウル様は勇者に厳しいよ。
ちょっと疲れたかも。
小腹がすいたので何か食べようかな?と無限収納を開く。
ん?あれ?
自動収集箱が光ってる?
自動収集箱は皆が狩りをしてアイテムドロップすると自動で収集してくれる、ヒミツ様にいただいた優れものアイテム。
そこを開いてみると、1枠がビッカビカに光っていた。
「こえ?」
見た目は魔法のランプ。
鑑定しても『魔法のランプ』。
極まれに出現するターコイズスコーピオンが、極々々々々々まれに落とすアイテムと書かれてある。
もしかして、皆が交代しながら何度もダンジョンで戦ってくれたのは、魔法のランプを探してくれていたからなの?
ありがとう!皆、ありがとう!
「ヤンプ、あにあと!」
「どういたしまして」
「俺達はダンジョンを楽しんでいただけだから、大丈夫だよ」
「ええ。
「良かったな、お嬢」
「うん!」
じゃあ、やはりここはひとつ。映画みたいにするしかないよね。
「どうするかわかるか?」
「しぇいたい、わたなない。やって、みゆ」
正解かわからないけれどやってみるね?
鳳蝶丸の胡座に抱っこしてもらって、魔法のランプを押さえていてもらう。
そしてランプの両脇を手でこすった。
「アブヤタタブヤァ〜」
ついでにそれらしい呪文も言ってみたよ!
「あっ!」
モクモクモク………。
ランプの先から煙が出る。
魔人?真っ青なあの魔人がでるの?
それとも、呼ばれて飛び出してジャンジャジャジャーン!なオトタマなの?
違う、あっちは壺だった!
モクモクモク…
モクモクモクモクモクモク………
モクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモクモク………………
「おまたせでちゅ!」
てーん!
「あえ?」
「あれ?あ、あの、お待たせでちゅ!」
「は、は、はじめまちて、でちゅ!」
魔法のランプから飛び出したのは青い魔人じゃなく、薄水色の可愛い可愛いフェネックちゃんだった。
魔人じゃなくて戸惑っちゃった。
「ボクはあの方の眷属でちゅ。半神さま、よろしくお願いしまちゅ」
「よよちく、おねだい、ちまちゅ」
語尾ちゅ仲間でちゅ!
「さあ、行くでちゅ!半神さま、ボクの体に掴まるでちゅ」
「あー、待ってくれ。お嬢は握力がないから掴まり続けてはいられん」
「ええっ!どうするでちゅか?」
「そうだな………」
皆で相談した結果、赤ちゃん用ハーネスを再構築、両側装着できるように再構成。紐が前に伸びている方を結界3の上から私に装着、後に紐が出ている方をフェネックちゃんが装着し、私達が一本の紐で繋がった状態にした。
「お嬢。上から更に結界3を重ねがけして、紐が千切れないようにしてくれ」
「わたた」
フェネックちゃんと私に赤ちゃんハーネスごと結界3を張る。
「問題ありません」
ミスティルが紐部分を掴んで引っ張り、強度を確かめた。
「主さん。浮遊して」
「あい」
ミルニルの言う通り自分に浮遊をかける。
「姫を頼むよ」
「はい、もちろんでちゅ」
皆が心配そうにしているから、思いっきり笑顔で行ってきます!する。
大丈夫、怖くないよ。
新しい仲間に会ってくるね!
- ????? サイド -
「その行商人、胡散臭くありませんか?」
穏やかな話し方の青年が老人に声をかけた。
「そう感じるかもしれませんが、ワシは善意だと思っとりますよ。物品鑑定では全て良質の物ばかりでしたし、毒物の混入は皆無にございました」
「貴族の炊き出しじゃあるまいし、商人が無償で食事を振る舞うなんて聞いたことがないよ」
妖艶な美女が肩をすくめる。
「あの結界。悪意あるものだけ通さないって言ったんだろう?確かに俺達は通れたし、どうやったらそんなのが作れるのか知りたいんだよね。どこに魔道具を設置したんだろう?」
「魔道具のような物はみかけませんでした。広場にもクリーン付きの結界を」
「クリーン付きだって?!」
「はい。食事の場にクリーン付きの結界を張って砂や埃が入らないようにした、と言っておりました。確かに身体が綺麗になりましたよ?…髪までも」
「髪まで?そんな細かいところまで?どれだけ高度な付与なんだ。それに付与付きの結界なんてあり得ない!他には?何がある?」
好奇心旺盛で溌剌とした表情の青年が、老人に喰い付いた。
「落ち着け」
「えー、だってさぁ」
「それで、そのような奇特な商人はどこにいる?」
「はい。貴族街の噴水広場にテントを張ったようです」
「………敵なのか味方なのか全くわからんな。だが用心に越したことはない」
大きな体躯の美丈夫が思案顔を浮かべる。
「とにかく近いうちに対面するか」
「はい。そうしていただきたく」
「わかった」
一同が頷く。
「さて、近況はこの辺りで。お疲れでしょうから、本日はもうお休みくだされ」
「そうさせてもらおう」
美丈夫は、遅々として進まぬ己のすべきことに苛立ちを覚えながら、久方ぶりの柔らかいベッドに身を預け目を閉じたのであった。
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