第162話 憧れのポーション作り。いつか私も作ってみたいな!

「町、シャハユ、ユ?」

「ええ。次の町はサハルラマルと言うんですよ」


 私達はサハラタル王国の、ダンジョン『迷い砂漠エルグ』の入り口があるサハルラマルと言う町に向かっているんだって。

 休憩も出来たしそろそろ次の町に向かおうか?と話していると、キックさんから声をかけられる。


「あー。もし可能なら水とポーション、食料を売ってくれないか?」

「まだ備蓄はあるが、隣町まで距離を考えると多めに補充しておきたい」


 レッターさんがバッグを覗きながら付け加えた。



 鳳蝶丸を見て頷く。

 そして一旦テントを張って、荷物の確認をしたいとミスティルに伝えた。


「わかりました。売り物の準備をするので少し持ってください。お見せできないものもあるので一旦テントを張りますが良いですか?」

「ああ。優秀商ならば上級貴族の品も持ち歩いているだろう。俺達は構わないからテントを張ってくれ」



 カモフラージュ用の簡易テントを出して私達以外立ち入り禁止、音漏れ禁止の結界を張る。出した時に組んだまま収納かっ!とツッコミが入ったけれどスルーしておこうっと。


 今まで必要無かったから日持ちする食べ物は持ってない。どうしよう?

 死の森調査隊が持っていたジャーキーと凄く硬そうなパンみたいなやつで良い?


 お水の入れ物も、彼らが持っていた動物の皮みたいな水筒にしよう。

 一度再構築し、中のお水を清浄殺菌しておく。


「こえ」


 調査隊が持っていたお水と食べ物を皆に見せる。


「これは?」

「ちのもい、ちょーしゃ、たい」

「ああ。死の森調査隊が持っていたものか」

「うん」

「冒険者が備蓄するのに丁度良いと思うぞ」


 鳳蝶丸にOKいただきました。



 次は外傷回復ポーションね?

 うーん。ダンジョン産のハイポーションしか無いや。

 買ってくれるかな?と相談したら、多分高価なハイポーションは買わないだろうとのことだった。


「カラエンの塊根とコルヒサフランの種子があれば怪我用ポーションを作れるよ。魔力補充ならザファランのめしべとジュノゲの根、キカラの種子かな。あと綺麗な水も欲しいかな」

「おおぉ」


 レーヴァは「フェリア薬師辞典」と言う特殊スキルを持っている。

 だからフェリアにあるポーションや薬材の種類を全て把握しているし、ポーションや薬剤他のレシピを全て知っているんだって。凄い!


 無限収納を探すとあちこちで採取したものと、鳳蝶丸がいた海底洞窟で採取したものなど必要な素材が揃っていたので、お願いしますとレーヴァに渡した。


「ありがとう、姫」


 レーヴァが材料を確認している間、お酒の時に作ったガラス瓶を再構成しよう。

 一番安い日本酒の瓶をコーク瓶みたいなくびれのある形にして、エンボス加工で桜吹雪ロゴを入れ、ポーション用に作り替えた。

 蓋代わりのコルクはワインと同じように一度抜くともう入らないような形状にする。コルクの上と底(瓶の中に入る方)にも桜吹雪ロゴを焼印風に入れ、偽物が出回らないようにしたよ。



「これは鳳蝶丸の洞窟にある薬草だね?」


 レーヴァはと言うと、薬材をしげしげと眺めていた。


「この薬草は高品質のものばかりだから、普通より効き目が良くなりそうだよ」


 両手を開く仕草をすると、そこに光の本が現れフワフワ浮いていた。

 光の本の上に私が再構築したミネラルウォーターを注ぐと、球状になる。

 その隣に薬草やその他素材を浮かべるとやはり球状になって粉砕され、細かい粉末状になった。


 球状のお水がいつの間にかお湯のように沸いていて、そこに薬材ボールがゆっくり重なるように混ざっていく。


「さあ仕上げだ」


 光の本が強く輝き、やがて光りが消えると、空中にキラキラと赤色に光る[怪我用ポーション]の球体が浮いていたのだった。



「これに入れればいい?」

「うん」

「出来れば瓶は2種類欲しいんだけど、いいかな?」

「あい、どんな?」

「これくらいと、これくらい」


 指で5cmくらいと15cmくらいの長さを示してくれたので、複写・再構成で瓶の大きさを変えた。レーヴァは液体を操りながら、そのポーション瓶2種類に薬液を入れる。


「わあ!」


 透き通った淡い赤色のポーションはキラキラしてとても綺麗。

 私はコルクの大きさを再構成で調整しながらポーション瓶の蓋を閉め、無限収納に入れた。



 次は魔力回復ポーションを作ってくれるみたい。

 魔力回復ポーションの作り方は、外傷回復ポーションと手順は一緒。たださっきより少し強めに魔力を込めるんだって。


 瓶は形を変えたほうが良いかな?

 怪我用の瓶は昔のコーク瓶みたいな緩やかにくびれた形状にしたので、魔力回復用はアンティーク香水瓶みたいに小洒落たフォルムにする。

 うん、可愛い!ちょっとした私のこだわりデス。


 その瓶に入れた魔力回復のポーションは透き通った淡い紫色で、とても綺麗にキラキラしていた。

 同じようにコルクで蓋をして無限収納に入れ、各種30本ずつくらいを複写する。



 水、食べ物、ポーション2種。これでいいかな?

 お水と食べ物は鳳蝶丸、ポーション類はレーヴァの行商用バッグに入れて外に出た。


「待たせた」

「なあ、さっきテントが光ったが大丈夫か?」


 ハッ!しまった!

 光漏れ防止を忘れてた!


「問題無い」

「でも、凄い光った…」

「問題無い」


 鳳蝶丸が問題なく押し切りました。ありがとっ。



 テントを仕舞って(だからそのままかよっ!ってツッコミ付)、全部載った簡易テーブルを出す。


「備蓄用の食料と凄いポーションだ」

「このポーションは特別仕様だよ」

「普通のポーションですが効き目はそれ以上です」

「お買い得」


 鳳蝶丸、レーヴァ、ミスティル、ミルニル。その口上、何だか怪しいよ?


「こえ、ためしゅ」

「え?」

「まほー、ちえてゆ。のむ」

「試しに魔法切れしてる者が飲んでみるといい」


 キックさんに小瓶の魔力回復ポーションを渡す。


「試飲だからお金は取りません」

「わかった。俺が試そう」


 キックさんも魔力持ちで、体術の時に身体強化したりするんだって。

 ホットサンドスコーピオンの時にかなり魔力を消耗したからと言って、魔力回復ポーションの蓋をキュポンと開ける。


 一口飲んで顔をしかめ、それから全部飲み干した。

 ポーション類って苦いらしいよ。



 しばらくして目が見開かれる。


「普通のポーションと比べて魔力回復量が多いことはわかる。殆ど空に近いと感じていたんだが、朝起きたての量を感じるぜ」

「そんなか?!」


 皆さんまじまじとポーションを見ている。


 そうだよね。

 さっきポーションを鑑定したら、高品質でハイポーションに近い効き目って書いてあったもんね。

 ちなみに有効期限は未開封1年で、色が薄くなると効き目が無くなっていくんだって。



「薬師でもある俺がポーションを作ったんだ。これは桜吹雪でしか売っていない特別品だよ」

「わたし達の製品は、蓋の両側に屋号印があるものだけなので、偽物には注意してください」

「薬効は未開封で1年だ」

「ダンジョン産のハイポーションもあるよ」


 念のため、ハイポーションも出してみた。


「なあ、パーティーで多めに買おうぜ。ハイポーションは高くて買えないが、普通のポーション以上の効き目で薬効1年なら[サクラフブキ]製が欲しい」

「そりゃ欲しいが大量には買えないだろう?さっきのホットサンドスコーピオンみたいに襲われて全部割れたらどうする?」


 【サンドウォーカー】さん達は散々揉めて、結局ポーションの小サイズ各種8本ずつ、大サイズ各種1本ずつ、ジャーキーとパンセット24個と水はパーティーで4つ購入してくれた。

 沢山だけど大丈夫?と聞いたら、各自分けて持つので問題ないって。


「助かった。もし町で会えたら、ポーションを追加で購入しても良いか?」

「あい、いいよ」

「おっ、ありがとうな」

「おたいあで、あにあと、ごじゃい、まちた」


 ご縁があれば、その時に。

 今度はお酒などいかがでしょう?



 【サンドウォーカー】の皆さんはこのまま野営し、明日早くに出発する予定なんだって。

 一応この先の魔石は十数個に1つずつ充填したこと、隣町付近は充填していないから気をつけてと伝える。


「わかった。充填ありがとう」

「どいたち、まちて」

「また会おう」

「あい、また」


 キックさんと私はガッチリ握手した。いや、私が指を握っただけとも言う。



「さて、俺達は次の町に向かうか」

「うん。バイバイ」

「お嬢ちゃん、バイバイ!」

「バイバーイ!」


 にこやかに手を振る【サンドウォーカー】に見送られ、私達は次の町に向かったのだった。

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