第161話 どこの世界にも悪いやつぁいるねぇ、ホント
すると、ウル様ラインがシュッと開く。
『お疲れ(スタンプ)』
『悪いが』
『協力して欲しい』
『お疲れ様です』
『もちろんです』
『詳しくはメルテール神に』
『聞いておくれ』
『じゃあの』
『バイバイ(スタンプ)』
『ありがとうございました』
そして、すぐにフロル様ラインが開く。
『初めまして。
『フロルの連絡手段を借りております』
『初めてお話いたします』
『ゆきと申します』
『今後ともどうぞよろしくお願いいたします』
『あのお祭りに参加しておりました』
『とても美味しかった』
『また呼んでくださいね』
『はい。何か催した時は』
『またいらしてください』
『そしてメルテール様のご加護と素晴らしいスキルをいただき』
『感謝しております』
『ありがとう存じます』
『ええ』
『今後に役立ててください』
そしてメルテール様の本題はこうだった。
先日私がいた村辺りと砂漠一帯は同じ国で、この辺りを広く見守っているのはメルテール様。
そして最近、砂漠にあるダンジョンにスタンピードの兆しがあって困っていると言う。
死の森ほど直ぐに穢れが溢れるという危機的状況では無いけれど、この場所でスタンピードが起これば砂漠の民が壊滅してしまい、また地続きの国も滅んでしまう。
だから、もし今のうちに解決できるならばして欲しいということだった。
この国は森林地帯が少なくほぼ砂漠で、ダンジョン『迷い砂漠・エルグ』からドロップされる岩塩と岩糖、フィッダという鉱石、オパール、魔獣の素材が主な収入源となっている。
岩塩はわかるけれど岩糖?って思ったら、見た目は岩塩と似ている大きな結晶で、口に含むととても甘く美味しい砂糖の塊らしい。氷砂糖みたいな感じ?
岩塩はダンジョン以外でも採取出来るけれど岩糖はダンジョン産だけなので大変な希少品なんだって。
他に魔獣の素材も素晴らしく、とくにイノーマスロリポリ系が落とす巨大な外殻はしなやか且つ硬く、武器にも防具にもなるため人気があるし、極まれに出現するターコイズスコーピオンが極々まれに落とす鉱石は、王族や貴族の間で大変な人気があり高値で取引されていた。
かつてのダンジョンは、一攫千金を狙った沢山の冒険者達が集まりダンジョンに挑む、活気あふれる場所であった。
だがダンジョン一帯を治める領主が、命懸けで獲得した冒険者達のドロップ品を安値で買い叩いたり、領外での販売を禁止にしたり、難癖をつけて強奪し始めたため、冒険者達の足が遠のいてしまった。
また、中立であるはずの冒険者ギルドや商業ギルドにまでしつこく口を出したため、ダンジョンがあるにも関わらず一部を残して両ギルドともほぼ撤退してしまった。
今は小さな買取店舗やダンジョンの管理部門があるだけなんだって。
冒険者達が減り、ギルドが撤退し、かつての賑わいがなくなると、今度は住民の財に目を向ける。
税金と言う名で大金を巻き上げ、従わない者や気に入らない者達は処刑するか奴隷に落として財を強奪した。
そのため多くの民が苦しみ、怒り、恐怖し、気が澱んで穢れ、ついにダンジョンに影響が出始めた、ということらしい。
この町、というか街道に関して言えば……うーん。
ダンジョン素材がお金にならなくなれば冒険者達の足は遠のく。冒険者がいなくなれば収益が減る。税金が取れなくなるなら費用をかける必要はない。魔術師団は解散。
でも国からの補助はいただきまっす♪
ってこと?
国はなんで黙っているの?
そもそも自分のせいで町の収益が下がったのでは?
いやもう、やることがメチャクチャだよ。
『ちなみに余談ですが』
『現領主はこの国の王族関係者で』
『あの森の現領主と』
『兄弟です』
兄弟で似たりよったりの政策だったー!
メルテール様からの指示は、今の国を良くしようと動いている者達がいるので味方して欲しいということ。
彼らはこの国を導く存在となりスタンピードの起こらぬ世にしていくだろう。彼らに直接自分の神力を与えることは出来ないため、どうか
どこまで出来るかわかりませんが仲間と相談して行動します。
メルテール様と連絡を取るにはどうしたら良いですか?と聞くと、あとで神様ラインを開いておくとのこと。
どんどん増えていくね、神様ライン。
把握しきれなくなったらどうしよう?
鳳蝶丸とレーヴァがキックさん達とお話している間に、ミスティルとミルニルに軽く内容を伝える。
「メルテール神は、主に動いてもらう前提で加護を授けたのですね?」
「スキルも」
「わたち、たみしゃま、ねだい、しゅゆ」
私は神様の願いを聞いて各地を浄化するのが役目のひとつなので、加護をいただかなくても頑張る所存。
でも、いただけるものはありがたくいただきます。テヘッ♪
さて。
領主は正直どうでもいいんだけれど、まずはメルテール様のおっしゃる人物に会ってから考えたほうが良いのかな?
多分、会えると思うんだけれど……。
「どうした?お嬢」
「姫?」
考え込んだ私の表情を見て鳳蝶丸とレーヴァが心配してくれた。
「ちゅわちい、あと、話しゅ」
詳しいことはあとで話すね。
「了解」
取り敢えず今は、
「おなた、しゅいた!」
唐突ですが、お腹が空いたのでまずは空腹を満たそう!
お腹が一杯になれば何かいい案が浮かぶかも、……しれないし眠くなるかもしれないけれど。
頑張ろうって気持ちになるよね?
「そうだな。腹が減った」
「うん」
「そうですね」
「姫、何を食べる?」
「ホット、シャンド、食べゆ」
「ホットサンド?」×4名
ホットサンドスコーピオンのおかげで、ホットサンド食べる気満々になっちゃったんだ。
ではでは。
無限収納内でホットサンドメーカーを作る。
電気式じゃなくて直火式の、四角くてひっくり返すと両面が焼けるフライパンみたいなやつ。我が家で使っていたちょっと小さめのホットサンドメーカーだよ。
鳳蝶丸のマジックバッグに、ホットサンドメーカー4つとミミ無しの8枚切りの食パン、ハム、とろけるナチュラルチーズ、半熟スクランブルエッグ、マヨネーズ、ほぐしてあるコンビーフ、ケチャップ、チリコンカン、常温で柔らかくしてあるバター、オリーブオイルを入れる。
よし。準備万端!
帆布シートの隣に簡易テーブルやコンロ、材料を出してもらい、防塵・防砂、清浄付与の結界1を張る。
そしてホットサンドの作り方を説明した。
我が家流なので、作り方間違っていても許してね?
1.両面焼きのホットサンドメーカーを開き、両内面にオリーブオイルもしくはバターをお好みで薄く塗る。
2.ホットサンドメーカーの片面にミミ無し食パンを入れ、好きな具材を入れる。
3.ミミ無し食パンを重ねてサンドイッチの形にする。
4.ホットサンドメーカーのもう片面をしっかり閉じ、持ち手についている金具を繋げて両面が離れないようにする。
5.コンロで1、2分両面をひっくり返しながら焼いて、焼き足りなかったらもう少し火にかける。
そしてこんがりキツネ色に焼けたら出来上がり!
我が家のホットサンドメーカーは小さめなので、パンの端4面がプレスされて一体化し、その部分が香ばしくサックサクに焼けてすっごく美味しいのだ!
ホットサンドメーカーにバターを塗った鳳蝶丸が、食パン、ハム、とろけるナチュラルチーズ(少)、スクランブルエッグ、マヨネーズ、とろけるナチュラルチーズ(多)、ハム、パンを重ね、ギュウギュウに蓋を閉じて金具をかける。
「これでいいか?」
「あい」
ミスティルはコンビーフ、スクランブルエッグ、とろけるナチュラルチーズ、ケチャップ。
レーヴァはチリコンカン、とろけるナチュラルチーズ。
ミルニルはハムのミルフィーユ重ね、マヨネーズ、とろけるナチュラルチーズをはさんでいたよ。
どれも美味しそうな組み合わせだねえ?
ちなみに私はミルニルのハム少なめバージョンを作ってもらいました。
コンロで焼き始めると、香ばしいパンの香りと、チーズの濃厚な香りが漂ってくる。
その間に鳳蝶丸が飲み物を用意。
アイスコーヒー、アイスティー、アイスカフェオレ、アイスロイヤルミルクティーだよ。
「うん、美味そうだな」
「良い香りです」
「食べる前から美味いってわかるよ」
「早く食べたい」
「なた、あちゅい、ちおちゅてて」
挟んである具が熱いから気をつけてね?
皆で、
「いただきます!」
「いたーち、ましゅ!」
うん、美味い。
これ、スパイシーで凄く美味いよ。
次にそれ食べます。絶対食べます。
ハム沢山で美味しい。
おいちーね!
………………………。
「あ、あのにぇ?ゴニョゴニョ…」
「わかった。旦那達も食べるか?」
「え!」
だって、8人全員で凝視しているんだもん。
それに………。
命の危険を顧みず皆の為に依頼を受ける、その意気や良し。
ここはひとつ、ご馳走しちゃうよ!
「主さんが皆で食べようって」
「誘ってもらえるのは物凄く嬉しいが、いくらくらいだ?」
「姫がごちそうするそうだよ」
「い、良いのか?」
「今回特別だそうです」
「良かったな」
レーヴァが商業ギルドカードを提示すると、優秀商!と皆さんめっちゃ驚いていた。そして優秀商の商人に会えるなんて俺達は幸運だと凄く喜んでいる。
優秀商の信頼度半端ない。
食べ物を提供するに当たり、結界を広げてクリーンをかけるので了承して欲しい。パンや具材、飲み物を出すので、自分達で焼いたり飲み物を用意したりして欲しい。
それで良ければ。と言ったら、一斉に皆さんが両手を上げて喜んだ。
私達のとは別に簡易テーブルを用意し、コンロ4台とパンや具材、飲み物を出す。
「最初にやり方だけ説明する。あとは各自好きなものを挟んで食べてくれ」
「ここに置いた食べ物は全て皆さんに差し上げます」
「足りなければ追加するって。君達は運がいいね?」
「皆たん、どうじょ」
8人の皆さんは鳳蝶丸達の説明のあと、嬉しそうにそれぞれパンを焼き出した。
うんまーっ!
こんな美味いもの食ったの初めてだ!
美味しい!やだ、どうしよう?美味しい!
ウマウマウマ………。
皆さん夢中で食べ、遠慮がちながらしっかりおかわりをして、それから落ち着いて飲み物を飲み始める。
「本当に美味い。ありがてえ」
「忘れられないほど美味かったぜ。次回支払うから売ってくれる?」
「わたし達はこのままサハルラマルに行きます。その間に会えればお売りします」
「やった!」
絶対に会えるとは限らないのにめっちゃ喜ぶロックスターさん。
メルテール様の件もあるのでしばらく滞在するから多分会えると思うけれど。
その時は別の食べ物も用意するからね!
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