第151話 満ち満ちる幸せ
さて。ムゥ様と桃様にも和牛ステーキと船盛をお渡ししよう。
お肉とお魚の他に、各ソースや醤油、薬味を共有に入れる。神様ラインに食べ方がわからない時は連絡をくださいと書いておいた。
『ムゥだよ☆』
『連絡出来なくて』
『ゴメンネ』
『しょぼん(スタンプ)』
『お疲れ様です』
『大丈夫です』
先程は連絡の無かったムゥ様の返信があった。
『とても尊い神の』
『接待なう』
な、なう?!
『美味しい』
『楽しい』
『ビュッフェ大好きだって♪』
『もちろん、ムゥもだヨ☆』
『喜んでいただけて』
『嬉しいです』
『ステーキを入れました』
『お召し上がりください』
『了解デス♪(スタンプ)』
『楽しみ☆』
『甘いものも』
『期待しちゃうゾ♪』
『はい!後で共有に入れますね』
『うんうん(スタンプ)』
『首を長くして』
『待っ』
あれ?ラインが途絶えた。
ムゥ様大丈夫ですか???
『これは届いているかい?』
え?どちらさまですか?
何故かわからないけれど、一瞬にして自分の上司すっ飛ばし社長とか会長クラスの人と話している気分になったよ?
日本で長年蓄積された何かが、より丁寧に受け答えせよと警告を発している!
『美味しいものをありがとう』
『君の用意する食事はどれも美味しいね』
『お褒めいただき光栄にございます』
『それから君の事は時折見ているよ』
『見守って下さり感謝いたします』
『今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます』
ああ。ここにも1柱、私を見ている神がいらっしゃる。
『ワギューとサシミはとても美味しいね』
『少し多めにムゥ神に渡してくれないかい?』
『承知いたしました』
そりゃもう沢山複写し、ムゥ神の共有に入れる。
『ああ、届いたよ』
『早々にありがとう』
『とんでもございません』
『それから』
『甘いものも楽しみにしているよ』
『それではね』
『はい』
『うわああぁぁん!(スタンプ)』
『ありがとうございました』
『ムゥ様?』
突然文章が変わってビックリした!
『ムゥだよ☆』
『あの方にムゥちゃんラインを見られたあ!』
『恥ずかちい(スタンプ)』
ムゥ様ご本人はとても無口な神様だけれど、文章はちょっと特殊だもんね。
『ああ!知ってたよっておっしゃってるぅ~』
『もう、恥ずかちいぃ~』
『ムゥ様の文章は』
『とても愛らしいです』
『ホント?』
『はい』
『いつも楽しみにしています』
『そうなの?そうなの?』
『照れ照れ(スタンプ)』
『私にはいつものムゥ様で』
『連絡ください』
『うん、そうする!』
『あの方には』
『ご自身の神様ラインを作るよう』
『伝えておくネ』
えええ!
社長から直接連絡いただくのはちょっと……緊張しちゃうよ!
『あと、甘いもの楽しみにしているって!』
『じゃあ、また♪』
『バイバイ☆(スタンプ)』
『ありがとうございました』
はああぁぁぁ。
それにしてもどなただったんだろう?ヒミツ様と言い、神の世界は謎が多いね?
ムゥ様はウル様に限りなく近い位置におわす、上位神の中でも更に高次な神。
そのムゥ様があの方って………?
もう、ゆち、わたななぁい!
「ウユしゃま」
「うん?何じゃ?」
念のため、ステーキと船盛をムゥ様と桃様にお渡ししたことと、ムゥ様ラインに謎のあの方が登場したことを報告する。
「ングッ!ゲホゲホ!」
あの方の部分でウル様が突然むせだした。
「ウユしゃま、だいじょぶ?」
手を伸ばして背中をさする(届かない)。
「すまんすまん。大丈夫じゃよ?ウィステイリア」
「はい、お呼びでしょうか」
ウル様が名を呼ぶと直ぐに姿を現すウィステイリア様。
「ちと席を外す。しばしこの場を頼むぞ」
「畏まりました」
「
「あい」
そう言い残し、ウル様は光りながらスーッと姿を消した。
どうしたんだろう?
しばらくしてからウル様がお戻りになった。
呼ばれたのでそばに行くと、先ほどの
「それで、じゃな。甘味をムゥ神のところに入れてくれないかのう?」
「あい」
「飲み物も全部追加して欲しいのだが」
「わたい、まちた」
すぐさまムゥ様の共有フォルダに一式入れる。
「それから食べ方の説明のため、ここにも一式出してはくれぬか?」
ムゥ様達はこのお祭りを覗いていて、皿への盛り方や食べ方を確認しながら食べているらしい。
まだ食事をしている神々はいらっしゃるしちょっと早いけれど、ウル様のお願いを聞いておいた方が良さそうなので、野点傘の横にデザートビュッフェ4台を出した。
おお………。
何と美しい………。
その途端、辺りから聞こえる感嘆の声。
ウィステイリア様が神々は特に甘い物、次にお酒が好物なのだと耳打ちしてくださった。
「これはまた見事に美しいのう」
ウル様も全部の台を見て回りながらウキウキしている様子だった。
「伝説の武器の眷属達じゃな?」
「あい」
私は仲間達を呼んで、それぞれのモチーフや飴細工などで出来ていることなど説明してもらう。そしてあらかじめミスティルに書いてもらったデザートの説明書をウル様に渡し、各台の説明をした。
こちらは鳳蝶丸の眷属をモチーフにしたテーブルです。
水が流れる器にあるフルーツのシロップ漬けやフルーツゼリーは蓋つきの瓶に入っております。瓶はお持ち帰り可能です。フルーツシロップはヨーグルトと一緒にいただくと更に美味しさが増しますよ。
こちらはミスティルの眷属をモチーフにしたテーブルです。
この丸く被せているチョコレートはスプーンの背で割ってください。コンコンッと、このように。ラズベリーとチョコレートのハーモニーをお楽しみください。
こちらはレーヴァの眷属をモチーフにしたテーブルです。
このタルトにふんだんに使われているダークチェリーは酸味が少なくとても甘い異世界のフルーツです。カスタードとの相性も抜群です。ぜひご賞味ください。
こちらはミルニルの眷属をモチーフにしたテーブルです。
ミニパフェの冷たいアイスとコリコリとした食感の金平糖をお楽しみください。あちこちの飾られている琥珀糖も食べることができます。サイダーに入れて琥珀糖サイダーなどいかがですか?
プレゼンばっちり!
ウル様がケーキ各種やフルーツのシロップ漬け、タルトやミニパフェを食べ始めると、他の神々もデザートビュッフェテーブルのスイーツを食べ始める。
さて、いよいよメインです。
チョコレートファウンテンもどうぞお楽しみください!
「こちらはチョコレートファウンテンと言って、フォークで果物や焼き菓子を刺し、この流れるチョコレートというものに潜らせてから食べる甘味です」
「わたしが実演をいたしましょう」
レーヴァが説明すると、ミスティルがフォークを手にしてイチゴを刺し、ミルクチョコの滝に潜らせてウル様に渡す。
「ほう。これは面白い。4つは全て味が違うんじゃな?」
「ええ。色々お試しください」
そして、チョコのついたイチゴを口に入れる。
「んん!確かに甘く、且つ果物の酸味が爽やかでとても美味じゃな」
次は小さめにカットしたパウンドケーキをビターチョコに潜らせて食べる。
「こちらは少し苦みがあるな。でも甘い焼き菓子と合ってこれもまた美味」
そう言いながら色んなチョコを試し始める。
「さあ、皆。ともに食べようぞ」
「我らが父神であらせられる創造神様と、同じ台のちょこれーととやらをいただくなど大変恐れ多く」
「よいよい。我が神子が皆の為に用意した食事や甘味。そなたらも食すが良いぞ。花の神よ。本日はそなたのための祭りでもある。さあ」
「はい。あの、では、遠慮なく……」
フロルフローレ様はお花の神様であり、また土地神様でもあるのね。
白く優雅な指先が、私超オススメのウエハースのナッツキャラメリゼのせを摘み、コーヒーフレーバーチョコに潜らせ口に運ぶ。
「んん!」
ふわわわ~。
髪の蕾が一斉に開花し咲き乱れる。
そしてパチパチと瞬きをしてから、マシュマロ、クッキー、パウンドケーキ、シュークリームと手を止めることなく口に運び出した。
その姿を見た他の神々もデザートビュッフェに手を伸ばし、思い思いに食べ始める。ある神は楽しそうに。ある神は静かに。ある神は談笑しながら。
そんな姿を眺めながら、ウル様が嬉しそうに微笑んだ。
「うむうむ。フェリアの神々も良い息抜きとなったであろう。ありがとうの、
「わたち、たのちい、あにあと、ごじゃい、ましゅ」
私も色々な神様にお会いできて楽しかったです。
ありがとうございます。
十分に食事を楽しんだ神々が、ポツリポツリと天界へとお帰りになっていく。
中には美味しかったのでまた祭りを開催して欲しいと言う神もいらして嬉しかった。
「
「あい!お家、だんばいましゅ。フヨユ、フヨーエしゃま、てんじょくちん、皆しゃま、あにあと、ごじゃい、まちた」
フロルフローレ様とお手伝いしてくださった眷属神の皆様に感謝の意を伝えると、笑顔で頷いてくださった。
フワモコバッグは一旦回収、中身の消去と共有解除をしてからまたお渡しする。
「ありがとう。これは可愛らしいので気に入っています。大切にしますね」
そう言って、フロルフローレ様も天界へと戻って行った。
「さて。わしもそろそろ帰らねばならん。どれも全てとても美味かったぞ。皆も存分に楽しめたようじゃ。お主にはとても感謝しておるよ」
「あにあと、ごじゃいましゅ。こちやこしょ」
ウル様が私の頭をナデナデして微笑んだ。
「
「あい。ウィシュ、テイニア、しゃま。おでんきで」
「はい。
ウィステイリア様は私の手をにぎにぎして、頬をムチムチして、頭をナデナデしながらニヤ…ニコニコ微笑んでいた。
そして、スッと立ち上がり右手をひと振り。
会場中あちこちに設置されていたビュッフェテーブルや食事用のテーブル、椅子、その他モロモロが全て片付けられ、一瞬で綺麗なただの空き地に戻る。
「うむうむ。では
「またお会いしましょう」
「あい、またね!」
パアアァァ!
強い光と共にウル様とウィステイリア様は神界へとお帰りになった。
その後すぐに土地の広さが元に戻り、ウル様による神域の結界も解かれたので、私も重ね掛けしていた結界を一旦全て解く。
そして新たに通常の結界と、結界内が見えずプロジェクターで空が映し出される2重の結界に戻したのだった。
ああ、それにしても漂う神気。
落ち着いたらシュレおじいちゃんにお願いしなくては。教会の皆さんで押し寄せないでくださいって。
こうしてなんちゃって地鎮祭は幕を閉じた。
「皆、あにあと!おちゅたえ、しゃま、でちた」
「おう、お嬢もお疲れ」
「神だらけの空間はなかなか壮観でした」
「とにかく目的が果たせて良かったよ」
「主さん、お疲れ様です」
気付けば空が薄暗くなってきている。
私はランタンを浮遊させ灯りをつけた。
「ブユッ、、、ヘ、バーベチュウ、どっち、食べゆ?」
「結局ほぼ口に出来なかったからビュッフェがいいかな」
「賛成」
「良し、酒のテーブルも出そう」
「いいですね」
地鎮祭でこんなに大事になるとは思わなかったけれど、一緒に祭事を執り行ってくれて、私を助けてくれて、皆ありがとう!感謝です。
心行くまで食べて、飲んで、楽しんでください。
夜空にじんわりにじむランタンの灯りを、ああ…綺麗だな、と眺める。
あれだけ沢山いらした神々がお帰りになり、静まり返った広い会場。
ちょっぴりだけ寂しいと感じたけれど、仲間達の笑い声が私の心を満タンにしてくれる。
私って幸せ者だなあ。
皆、これからもどうぞよろしくね。
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