第150話 タタタタンタンタンタッタターーーン♪レベルアップ!

 眼鏡を上下上下上下させながら、ウル様が持っているクラッチバッグの裏地を食い入るように見ているウィステイリア様。


「ウィシュ、テイニア、しゃま」

「はい?」


 眼鏡上下運動が止まらない。


「ちにいゆ、絵、どえ、でしゅた?」


 気に入っている絵はどれですか?と聞いたら、描きたてほやほやの絵を眺め、やがてお気に入りのイラストを指さした。


「全部可愛いのですが、とくにこれが良く描けたと。いえ、これも。これも気に入っています」


 それは、私が笑顔でヨチヨチと歩いているもの、両手を挙げて歌っている姿。ウサギが月を見て跳ねる歌を歌った時ポーズのイラストだった。


「かちて、くだしゃい」


 羊皮紙を借り、無限収納に入れて複写する。原紙は直ぐにお返しした。


 オリハルコンバイパー(SSS級)の皮を使って、カッチリした形のレディースビジネスバッグに再構成する。ファスナーを開けるとウィステイリア様お気に入り絵をプリントした裏地が見えるよ。

 そして今回は外ポケットをマジックバッグ化しました。



 うーん、ちょっと物足りないかな?



 ウィステイリア様お気に入り絵の缶バッジを3種類作る。

 それからシンプルな生成りの帆布トートバッグを再構築し、真ん中にドドーン!とウサギポーズのちびキャラをプリント。

 こちらはマジックバッグ化はせずこのまま渡すつもり。



「ちょと、持てて、くだしゃい」


 ウィステイリア様にレディースビジネスバッグを持っていてもらう。そして………。



 じゃじゃーーーん!

 時間操作の杖えぇぇ!



 マジックバッグを売って良いのは年1回。でも最近バンバン作っているような?

 「時間操作の杖」の制限がかからないし、ウル様から許可が出ているからセーフだよね?

 人間界で売りさばいているわけじゃないので時間操作が許されるよね?


 もう、すっかり開きなお……慣れてしまったので、しっかり魔法幼女するよ!



「マイカユ、アブイン、萌えちゅんちゅん☆時間停ちになぁえ♪」



 シャラララ~☆



 ハイッ、マジックバッグの出来上がり♪



「わあ!魔法幼女ちゃん!」


 ウィステイリア様が瞳をキラキラさせている。

 気が付くと他の上位神の神々も集まってめっちゃ盛り上がっていた。何で?



「神は新しい刺激に飢えているんじゃよ」


 うん、そうだった。

 長い長い時間神界におわす神々。ウル様の言う通り新しい刺激が楽しいのかも。

 そのうちマンネリ化して私に飽きるかな?注視するのも今だけだろうから、まあいいか。


 ひとまず、マジカルラブリンを楽しんでいただけて何よりです。 



「こえ、ウィシュ、テイニア、しゃま、どうじょ」

「マジックバッグをわたくしに?」

「あい」


 正直言えば、神様にマジックバッグは不要の物。だって神様自身が無限収納をお持ちだから。

 私が贈ったマジックバッグは神様にとって嗜好品って感じになるかな?


「嬉しいけれど、わたくしは無限収納を持っておりますので………」

「ここ、あてて?」


 ここを開けてくださいとお願いしたら、ファスナーを開けて中を覗くウィステイリア様。


「はあぅっ!」


 裏地を見て衝撃を受けたあと、「可愛い、可愛いわ……」とビジネスバッグを胸に抱いてうっとりしていた。



 そしてそれだけじゃないのです。

 プレゼントはもう1つあるのじゃよ。マジックバッグ化してないけれど。


「あのね、こえ………」

「はあぁ、可愛い!」


 無限収納から先程作った缶バッジを出しお渡しすると、両手で缶バッジを掲げながらブルブルと震えだすウィステイリア様。


「これは見たことがあります。缶バッジ、ですか?」

「あい」

「私の絵が缶バッジになるなんて素敵!ああ、これが推しグッズというものなのね」


 勝手にグッズ化しちゃってすみません。でも喜んでもらえましたでしょうか?

 ん?推し?



御神子みかんこさん。これをどうすれば?」

「こえ」


 今度は帆布トートを出して渡す。


「んまあ!可愛すぎませんこと?!奥様っ!」



 お、奥様!?



 キラキラした瞳でトートバッグにプリントしたウサギさんポーズのちびキャラを見つめるウィステイリア様。


「ここ、しゅき、場所、ちゅけゆ」


 この缶バッジをトートバッグのお好きな箇所につけてくださいと説明すると、ビジネスバッグとトートバッグと缶バッジを胸に掻き抱いて大喜びしてくれた。



 しばらくバッグや缶バッジを眺めたあと、眼鏡をクイッと上げニコリ笑うウィステイリア様。


「とてもとてもとても気に入りました」

「良たった、でしゅ」

「ところで御神子みかんこさん」

「あい」

「こちらを3個ずついただけますか?」

「みっちゅ?」


 全部を3個ずつ複写すればいいの?


「ええ。永久保管用、自分で使用する用、そして皆に見せて回る用ですっ!」


 おお!保存用、鑑賞用、布教用ってやつですね!

 私はすぐに複写してウィステイリア様にお渡しした。


「ありがとう存じます。お礼にわたくしから貴女に加護を贈りますね」


 えっ!ご加護をいただけるんですか?缶バッジで?!

 慌ててステータスを確認すると加護にウィステイリア神の名前が増え、魔法創造でつくった[彫塑・成形]が半神スキルにレベルアップしていた。




 [彫塑・成形]

 素材の種類関係なく思い通りの形に彫刻したり、塑像したり、成形したりする

 ウィステイリア神の加護で補正がかかり、歪みのない最高レベルで作成できる




 わあ!凄いものをいただいた!


「あにあと、ごじゃい、ましゅ」

「どういたしまして。ああ、どこに缶バッジをつけようかしら」


 ウィステイリア様はすぐにトートバッグのどこにつけるのか、真剣な面持ちで配置を考え始めている。

 そして、その姿を微笑ましい表情で見つめるウル様。



 あとで聞いたんだけれど、ウィステイリア様はウル様の神力から生まれた神様なんだって。つまり、可愛い可愛い娘ちゃんってところかな?


 私みたいに元人間と言うこともあるけれど、神様の多くは自然界から生まれたり、信仰心や想いから生まれたり、神様の神力を分けて生まれたり。色々なパターンがあるらしい。



 神様の誕生って不思議。






 ビュッフェのは大盛況だった。

 忙しさにすっかり忘れていたけれど、そろそろアレを投入するよ。



 魅惑の和牛。そして船盛のお刺身!



 まずはビュッフェテーブルを1台増やし、少し温めてある各ソースを置いていく。そして、すでに再構築してある焼きたて熱々のステーキ(小盛り)を出してウル様にオススメした。


「こえ、わじゅう、シュテーチ」


 和牛ステーキです。お好きなソースをかけて召し上がってください。


「おおお!これがウワサのワギューとやらか!ワシ、食べてみたかったんじゃ」


 まずはわさび醤油をかけて席に戻る。


「どれどれ…ンむ!」


 ウル様がゴクンと嚥下すると目を見開いた。


「美味い!」


 何回も和牛ステーキのおかわり。そして和風ソースの時は日本酒。洋風ソースの時は赤ワインを堪能している。


「本当に美味い物を食す時は言葉を失うのう」


 唇をちょっぴりツヤツヤさせながら、嬉しそうにお肉を口に運んでいた。


「どのソースも美味いのう。他に何があるのかな?」

「おしゃかな、あゆ」

「ん?魚?」

「おしゃしみ」

「おお!それも食べてみたかったんじゃよ」



 はい、どーーーん!

 超豪華な船盛でございますー!



「これはこれは。美しいな」

「しょおゆ、わしゃび、食べゆ。穂紫蘇、しょおゆ、こうちて、入えゆ」


 醤油とワサビで召し上がってください。お好みで、穂紫蘇の実をしごいて醤油に入れほのかな香りをお楽しみください。


 ウル様は全種類を平皿にとって食べ始める。

 中には、創造神様に魚を生で出すなど…と私に対し眉を顰める神々もいらしたけれど、ウル様はお構いなしに口に運び全種類を堪能していた。



「んむ、しみじみと美味いのう」


 そして、マグロの中トロをゆっくりと味わっている。


「日本酒にもビールにも合う。ホレ、皆、食してみよ。ワギューもサシミもこの上なく美味じゃよ」



 ウル様の言葉に上位神の皆様が動き出す。

 神様には何の問題も無いと思うけれど、念のため船盛のお刺身は再構築したあと清浄してあるのでアノ虫さん問題もクリア済みですよ!


 最初は戦々恐々としてしていた神々も、パクリと口に入れた途端その美味さに魅入られ平皿一杯に盛り始めた。

 そうでしょう、そうでしょう。おススメはプリップリで甘いホタテですよ。

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