巡れ！半神と仲間たち 半神幼女が旅行とごはんとクラフトしながら異世界を満喫するよ！ ～天罰を添えて～

第149話 カッコイイが迷子になった

　次は、テント近くに設けた神様スペースに食事の用意を始める。

　ビュッフェテーブルを無限収納から出していると、ウル様や上位神の皆様が集まって来て、美味しそうに並べられた料理や多種類の飲み物を興味津々で眺めていた。

　ミスティル抱っこで廻りながらビュッフェテーブルをどんどん置いていく。

　お皿やカトラリーが乱れるとレーヴァが直してくれた。

　鳳蝶丸とミルニルは飲み物の準備に余念がない。

　うん、準備完了！

「たみだみ、皆しゃま、こえよい、ウユトヤウシュ、オユトト、ヌシュ、ジニヤシュ、しゃま、ちぼう、ご飯、でしゅ。たくしゃん、食べゆ、くだしゃい」

　神々の皆様、これよりウルトラウスオルコトヌスジリアス様ご希望の食事会となります。心ゆくまでお楽しみください。

　先ほどまでとても静かだった会場がザワつき始める。

　神々はソワソワしながら食べ物を眺めているが、誰も手を付けなかった。

「どれ、それではいただこうかの。わしは今日をとても楽しみにしておったのよ」

　ウル様が嬉しそうにビュッフェテーブルに近付いた。

「まずは何か飲み物が欲しいのう」

「ウユしゃま、のみもも、こっち」

「どれどれ」

　飲み物用のテーブルに連れて行くと、即座にビールサーバーに手を置いた。

「これ、これ。これがしてみたかったのよ」

　鳳蝶丸がビールを美味しく注ぐコツを説明すると、ふむふむ、と楽しそうにジョッキへ注ぎ始めるウル様。

　我らが父たる創造神様になんということをさせるのだ！と怒り出す神々がいらしたけれど、ウル様が手で制す。

「良い良い。わしがやりたいと言うたんじゃ。どれ、そなたにも注いでやろう」

「えええ！いえいえ、眷属にやらせます」

「体験せねばこの楽しさはわからんぞ？フォッフォッフォッ。まあ、良いわ」

　そう言ってウル様は自分のビールを注ぎ、席に着いた。

　私はビュッフェには用意していない枝豆と唐揚げをそっと出す。

「おお！これがエダマメ！食べてみたかったのじゃ。食べ方は知っておるぞ。こうして」

　枝豆を口にはさみプチッ。

　ゴッゴッゴッゴッ、んはぁ………。

「ビールが冷えていて美味い！そして、エダマメの香ばしさと甘さがとても合う！」

　ザクッ、ほふほふ………。

「この唐揚げも最高に美味いのう。ビールが進むわい」

　本当に美味しそうに味わっているウル様。

「さあ、皆も料理が冷める前に食べるが良い。天上界に無いものばかりで本当に美味いぞ。食べ逃すと後悔すること間違いなしじゃ」

　勧めていただいたからか上位神の皆様が動き出す。

　ウル様はもう周りを気にせず欲しい料理をお皿いっぱいに盛り、ペロリと平らげ、ワインや日本酒も堪能している。

　創造神自ら料理を取りに行っているからか、他の神々も自分で取りに行き、盛り付けなどを楽しみ始めているみたい。

　少し時間をおいてから下位の神々が食事を始める。

　美味しい！私はこれが好きだ。

　わたしはこちらが好みだと、あちらこちらから声が聞こえる。

　楽しんでいただけているかな？

「正直言えば我ら神にとって食事は不要の行為。食事に当たるものは…そうじゃな。敬虔な信者の祈りや信仰心となる。だが食べ物の味を楽しむことは出来るでな。まあ、言わば嗜好品じゃ」

　ビュッフェを堪能する神々を眺めながら呟くように話すウル様。

「皆、長きに渡り刺激の無い天界にいるのでな。こう言った祭りは神々にとって楽しみのひとつとなるんじゃよ」

「人の子、しゅゆ、おまちゅい、たのちみ？」

「そうじゃな。その時手が空いていれば人の子達の祭りは覗いておるよ」

　そして声を潜める。

「楽しませてもらえれば、気まぐれに恋愛を成就させたり、仕事運を少しアップさせたりしておるようじゃぞ」

　おお！リアル暇を持て余す神々の遊び。

　Ｂｒｉｎｇ Ｇｏｏｄ Ｌｕｃｋな方の。

「お主には神の堕落に巻き込んでしまい済まないと思っておるし、フェリアの新しい波紋となってもらい心から感謝しておるよ」

「わたちも、たんしゃ、ちてましゅ。たくしゃん、べんに、ちたや、でんしぇちゅ、ぶち、出会い、あにあと、ごじゃい、ましゅ」

　沢山の便利なスキルや能力と、何より伝説の武器達と出会わせてくださってありがとうございます。

　心より感謝しております。

　そう伝えると、ウル様はただ微笑んで私の頭をそっと撫でた。

　最初は南の島に放り出されてどうなるかと思ったけれど、沢山の能力をくださったからここまで来られたし、伝説の武器達に会わせてくださったから寂しい思いをしないで済んだ。

　毎日楽しくて、沢山やりたいことがあって、フェリア中を巡って。

　それを苦労なく叶えられるのは、ウル様、ムゥ様、そして桃様のおかげ。そして仲間達のおかげ。

　ありがとうー！

　叫びたくなる私だった。

　ガヤガヤと喧騒の中、周りを見回すと仲間達の姿が目に入る。

　飲み物コーナーでは鳳蝶丸がお酒、ミルニルがソフトドリンクを提供していた。

　レーヴァは女神様達に食べ物を美しく取り分けている。

　ミスティルは、うん。そろそろかな？

　私がミスティルを見て頷くと、彼は上位神席の近くに大きな白いグランドピアノを出し、静かな曲を弾きだした。

「ほう。音楽を聞きながらの食事もおつじゃな」

　舌平目の焦がしバターソースを食べながら、音楽に耳を傾けるウル様。

「そうじゃ。御神子（みかんこ）や。お主の歌が聴きたいのう」

「ウユしゃま。わたち、お歌、じょうじゅ、歌えない」

「良し悪しは良いのじゃよ。お主の歌声は不思議と元気になる力が備わっておる。下位の神々にも力を与えてやっておくれ」

「あい、わたた」

　ならば歌いましょう、ええ。

　私の歌で誰かが元気になるならば歌いますよ！

　私は颯爽と、ヨチヨチ歩いてピアノ横に立つ。そして、ミスティルにいつも2人で歌っている曲を弾いてとお願いした。

「わかりました」

　ミスティルが伴奏を始めたのでお辞儀をして、まずは童謡を歌う。

　ヨチヨチダンスを踊りながら歌っていると、ウル様が体を大きく揺らし手拍子をしてくれる。

　フロルフローレ様もニコニコ笑顔でウル様と一緒に手拍子しながら揺れていた。

「ああぁぁぁ、御神子（みかんこ）さん！」

　何故かそこにウィステイリア様がスッ飛んできて、かぶりつき状態で悶えている。

「創造心を掻き立てる私（わたくし）の御神子（みかんこ）さん！描きたい！描かせて！描き始めねば！」

　キャリアウーマン風の格好で羊皮紙を出し、ザカザカ描き始める。

　い、いいのかな？

　チラリと見ると、ウル様はフォッフォッフォッと笑っていた。

　私は続けて森に生息するクマさんの歌を歌い、ピョコピョコと踊る。

　凄いスピードで羊皮紙いっぱいに絵を埋めてゆくウィステイリア様。

　しっとりとしたクラシック、歌謡曲、演歌からポップまで、ミスティルの伴奏で沢山(舌足らずだけど)歌い、演奏が終わった頃には羊皮紙が10枚くらいに積み上げられていた。

「やはり、本物を見ながらだと捗りますね」

「そうかそうか、良かったのう」

　そして、フォッフォッフォッと笑いながらクラッチバッグを出し、パカッと蓋を開けてちびキャラ御神子（みかんこ）の裏地を見せつけるウル様。

「はあああぁぁぁ！そ、それは！」

「マジカルラブリンのちび御神子（みかんこ）バッグにマジカルラブリンをしてもらったんじゃよ」

「んうんーーー！贅沢、贅沢すぎますっ。私（わたくし）も見たかったああぁぁ」

　ん、あれ？

　さっきまですんごく恰好良かったウィステイリア様はどこ？

　ウル様が笑いながらこれが通常のウィステイリアじゃよと言う。

　そして、わしのと似たようなバッグで良いので作ってやってはくれんか？とお願いされたよ。

　もちろんＯＫです！