第139話 可愛い。土の精霊可愛いよ!

 鳳蝶丸抱っこで目覚めると、広くて何もない敷地にいた。


「お目覚めですか?」

「あい…」

「まだ眠そうですね」


 私の向かいにエレオノールさんが立っていた。

 カラーレスダイヤモンドの支払いで契約完了し、今は敷地の案内をしてもらっていたらしい。


「道に囲まれたこの敷地内がお嬢の土地だそうだ」

「おお!ひよいね?」

「ああ、広いな」


 以前は大きな商会の倉庫だったところらしい。その商会が代替わりして店舗を縮小したため、この土地を手放したんだって。

 その後は高価な土地だからか買い手がつかず、現在に至ったらしい。


「契約書と権利書、原石の預り証はわたしが持っています。あとで主に渡しますね」

「うん。あにあと」

わたくしの案内は以上になります。また何かございましたら何なりと、商業ギルドにお申し付けください」

「あい。エイェオノーユしゃん、あにあと、ごじゃい、まちた」

「こちらこそ、お買い上げありがとうございます」


 エレオノールさんは笑顔で一礼してから、商業ギルドへ戻って行った。




 この辺りは死の森入口からは遠い、貴族街近くの富裕層エリア外れ。

 購入した土地の周りには遠くに倉庫らしき建物と、更に遠くに居住地が見える。


 人はいなさそうだけれど、建築過程をあまり見られたくないから、土地をグルリと背の高い塀で囲っておきたいな。

 皆に相談すると、ミルニルが名乗り出た。


「それなら俺に任せて。皆、おいで」


 ミルニルが声をかけると、空間から百人(?)くらいのちっちゃいおじいちゃん達が隊列を組み、行進しながら現れた。そして、ミルニルの前でザッザッザッと足踏みを止める。


 白いおヒゲとフサフサ眉、丸いお鼻。赤い三角帽がとってもキュート!

 皆、手に手にツルハシやスコップ、ハンマーを持っている。



 思い出したのは、びっくりどっきり的なアレ!



「さあ、この土地を塀で囲むよ」


 ミルニルの言葉におじいちゃん達がコクリと頷き、ワラワラワラ〜と四方に走って行く。

 おじいちゃん達の様子を見ながら、ミルニルが両手をスイッと上げる。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!



 その途端ゴツゴツした岩壁が出現し、購入した土地をぐるりと囲んだ。

 その岩壁にちっちゃいおじいちゃん達がよじ登っていく。



 トンテンカン、トンテンカン!



 軽快な音が響いて、あっという間に素敵な囲いが出来上がった。


 人の目からは中が見えない高さ。

 ゴツゴツだった岩壁はツルツルに削られ、上の方は透かし彫りまでしてある。

 このまま使っても良いかも、と思わせるような綺麗な囲いだった。


「わあ!しゅどい!ちえい!」

「これなら外から見えないでしょ?」

「うん!ミユミユ、あにあと。皆も、あにあと!」


 ミルニルとちっちゃいおじいちゃん達に感謝する。

 ミルニルはどういたしましてと嬉しそうに笑顔を浮かべ、おじいちゃん達はピョンピョン跳ねて喜んでいた。


「俺の眷属。土の精霊ノーム達だよ」


 ノームって聞いたことある!

 絵本やファンタジーの本などで見た挿絵に似た容姿なんだね?



 ああ、ちっちゃいおじいちゃん達可愛い! 



 何かお礼をしたいな。うーん。

 金平糖とかでいいかな?ちっちゃいおじいちゃんとカラフルな星のお菓子。

 間違いなく可愛いでしょ?


 私は白い不織布の袋に入った金平糖を再構築する。そして、ミルニルに見せてお礼して良い?と聞いた。


「いいの?喜ぶよ」


 許可が出たので沢山複写して渡すと、ワラワラワラ~っと寄ってきて袋を受け取り、器用にリボンを解いて1つずつ食べ始めた。


 シャクシャクと小さな咀嚼音が聞こえ、皆何かしらのアクションをとっている。



 座って食べるおじいちゃん。

 チョコチョコ動きながら食べるおじいちゃん。

 ひとくち食べてはピョンピョン飛び跳ねているおじいちゃん。



 皆違くて皆良い。



「ねえ。皆の眷属に名前をつけたんでしょ?」

「うん」

「俺の眷属にもつけて」


 えっいいの?

 ちょっと時間くださいね?うーん。どうしよう。悩む!


 ピョコピョコ動いて可愛いから、ピョコちゃん達なんてどうだろう?

 私はミルニルの手にピョコと書いた。


「ピ、ヨ、コ?合ってる?」



 うんうん。どうかな?

 伝わった?



「皆、主さんが名前をつけてくれたよ。ピヨコだって」



 伝わって無かった!

 ピョコちゃんだよ!



 ノーム達が、ブンッて音がしそうなほど私に顔を向け、両手を上げておどりだした。

 喜んでいるみたい。


 い、今更訂正出来ないよ!



「ピヨコか。可愛いじゃないか」

「姫のほうが可愛いけどね?」

「ヒヨコみたいにチョコチョコしているからですか?」



 も、もういいや、ピヨコで。

 発音はヒヨコと同じね。



 ピヨコちゃん達は、踊りながら金平糖の袋を拾い、踊りながら何もない空間へと去っていく。

 ワラワラと消えていく姿も可愛かった。


「ピヨコ達に名前と手土産ありがと」

「あい、どういたまちて」


 ピョコちゃんだったことは、永遠に秘密としよう。そうしよう。




 さて、無事ピヨコちゃん達に命名出来たところで、次の工程に移りましょう。

 今のところ、目隠しで四方を囲っただけなので扉をつけるよ。


 木製の扉を再構築。

 鳳蝶丸にお願いして、扉の大きさに岩壁をくり抜いてもらった。

 ミスティルとミルニルが大きくて頑丈なマカマカ蝶番で扉を固定する。ついでにマカマカ閂錠も取り付けた。


 ちなみに、マカマカシリーズは岩漿山ダンジョンの宝箱産です。



 あとは壁の外から結界4で敷地全部を四角く囲って終了。

 悪意ある者は扉の取っ手も触れられないスタイルだよ。



 次に生い茂っている雑草を、ミスティルが魔法で根っこまで持ち上げてくれた。

 雑草ちゃん達は私が一旦収納。あとで何かに変化してもらいます。


 雑草を引き抜いたので凸凹になった地面はミルニルが魔法で均し、綺麗な更地となった。

 そこに2ルームテントとタープテントを出すと、鳳蝶丸とレーヴァがペグ打ちをしてくれる。



 うーん。

 めっちゃ広い土地にポツンと1テント。ちょっと寂しい。

 運動会も出来そうなほど広いんだけど、家が建つ前に盆踊りでもする?




 テントのリビングでゆっくりしながら、どんな家を建てるのかを考える。

 ゴシック様式、ヴィクトリアン様式、ロココ様式、バロック様式、ルネサンス様式、ロマネスク様式。

 いっその事、書院造とかどうだろう?

 渡殿にも憧れるけれど、それだと寝殿造になっちゃうか。もう書院造に渡殿つけちゃう?



 どれもこれも捨てがたい。

 夢が膨らみまくりだよ!



 いやでも、その前に地鎮祭をしなくては。

 私は家も土地も買ったことが無いからやり方がわからないけれど、フェリアにあるのかわからないけれど、一応形式としてやっておきたいよね。



『お疲れ様です』

『報告と質問があるのですが』

『お時間良いですか?』


 ウル様ラインに書き込むと、直ぐに反応があった。


『お疲れ(スタンプ)』

『今、大丈夫じゃよ』

『フォッフォッフォッ(スタンプ)』


『ミルニルが仲間になりました』

『とても嬉しいです』

『ありがとうございます』


『うむ。良かったのう』

『おめでと!(スタンプ)』


『そして、ミールナイトに』

『拠点の土地を買いました』


『うんうん(スタンプ)』

『良いと思うぞ』


『そこで、建築する前に』

『地鎮祭を行いたいのですが』

『フェリアで行っても』

『問題ありませんか?』


『おお!ニホンで行うアレじゃな?』

『もちろん問題ないぞ』

『その辺りを守っている』

『土地神も喜ぶじゃろう』



 やっぱり土地神様はいらっしゃるんだね。



『そうじゃ!おぬしの結界内を一時的に神域としよう!』

『さすれば我らも降臨出来る』

『ちょっと待て』



 え?え?神域!?



『良し、地鎮祭の間だけ』

『おぬしの土地を神域にする』

『祭りを楽しみにしているぞ』

『フォッフォッフォッ(スタンプ)』



 何やら大 事 に な っ て ま い り ま し た !



『フェリアでは祭りの形式など』

『無いに等しいから』

『おぬしのやり方で行っておくれ』

『楽しみにしておるよ』


『承知しました』

『準備が出来たら』

『連絡いたしますね』


『おう、待っとるよ』

『ウインク(スタンプ)』

『ではの』


『ありがとうございました』



 神様をお招きするとか、どうしたら良いのかわからないよ!

 私のやり方で良いの?良いの?



 もう、色々とやったろ!



 神様怒らないよね?怒らないでね?



 …………まずは皆に相談しよう。

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