第138話 これでダンジョンに入れる…あ、もう入ってるってツッコミは無しね

 翌日9時頃、ミールナイトに再訪して冒険者ギルドに向かう。


「おはよ、ごじゃい、ましゅ」

「おはようございますぅ」

「あっ、ピピおねしゃん!」


 入り口付近にピピお姉さんがいて、直ぐにギルド長の部屋に案内してくれた。


「おはよ、ごじゃい、ましゅ」

「おう。おはよう、ゆき殿。久しぶりだな」

「あい、ひしゃし、ぶい」


 ニッと笑うビョークギルマスは今日もイケオジ!



 何はともあれ、我が家族の紹介です。


「あたやちい、かじょく、ミユミユよ」

「俺はミルニル。よろしく」

「冒険者ギルド・ミールナイト支部、ギルド長のビョークだ。よろしく頼む」


 一通り挨拶をして、近況を話す。


 まずはミールナイトに拠点を構えること。

 場所は商業地区外れに決まり土地だけ購入したことなどをお知らせした。


 ビョークギルマスがそうか!と喜んでくれる。


「拠点が建ったら教えてくれ。祝いに駆けつけるからな」

「あい!おひよめ、しゅゆ」


 またすごいのが出来上がりそうだな、とビョークギルマスが苦笑した。




 次に、ビョークギルマスから冒険者ギルドカードについて説明があった。


 通常の冒険者ギルドカードではなく、ダンジョンに入る許可証を発行してくれることになったんだって。

 形としては、騎士や兵士達が所有する許可証と同じようなタイプで、冒険者ギルド保有の特別に設けたカード型の許可証らしい。

 近日中にミールナイトで作成出来るようになるとのこと。


「許可証に必要なこの書類に、今いる全員の名前を書いてくれるか?」

「ミシュチユ、書いて?」

「全員分わたしが書いても?」

「ああ、かまわん」



 ゆき、鳳蝶丸、レーヴァ、ミルニル、ミスティル。



 書類に書いてビョークギルマスに渡す。


「数日中に渡せるが、ゆき殿達はどれくらいいる?」

「ちょてん、たてゆ。しばやく、いゆ」

「拠点を建てるからしばらくいるよ」



 許可証はあと2、3日で出来るので、都合の良い日にまた来て欲しいと言われた。


「あい、あにあと!」

「遅くなってすまんな」


 これでやっとマカマカシリーズを売ることが出来るね!




 次に治癒の話。

 私が滞在している間に欠損者の治癒を行うけれど、集められる?と聞くと、ひとつ確認したいことがあると言われる。


「疾病患者も治癒は可能だろうか」

「うーん…。わたなない。しゅゆ、良い。保障、でちない」

「保証は出来ないけど、治癒魔法をかけるのは良いって」


 ビョークギルマスが選定した希望者の中に、欠損者と重病患者両方いる家族がいて、治療費を人数分お支払いするので、治癒魔法をお願いしたいと申し出があったんだって。


 治癒するのは問題ないし大丈夫だとは思うけれど、完治するかは保障出来ないかもとミルニル訳で伝える。すると、それでもかまわないし治療費は支払うので、疾病患者の追加もお願いしたいと言われOKを出した。


「引き受けてくれて感謝する」


 ビョークギルマスがホッとした表情を浮かべる。

 欠損者と重病患者がいるお家って大変だよね。お役に立てるかわからないけれど力いっぱい頑張るよ!

 家族で楽しく過ごせるようになるといいな。


 

 そして、欠損者の選定は終わっており、疾病患者は今いる希望者以上増やすことはないので、私の都合でいつでも可能と言うことだった。


「人数、どえくやい?」

「26名ほど。想定より多くなってしまった。すまん」

「いいよ」

「希望者とその家族には最終的な意思を確認して、治癒術者を詮索せぬよう魔法契約をする予定だ」


 それならと、こちらからも要望を出す。


 魔法契約はこちらでさせて欲しい。

 内訳は、誰かに話そうとすると、生命維持のため以外は体が動かなくなり話せなくなる。文字や身振り手振りで伝えようとしても同じ結果になる。というもの。


 その契約内容を知ったうえで治癒に参加するかを決めて欲しいと伝え、ビョークギルマスに了承してもらった。


 それから治癒の際は隣接した2部屋を用意して欲しい。1部屋に患者、私はその隣の部屋から治癒を行いたいとお願いする。


「わかった。そのように手配しよう。今日を含む5日後でも問題ないか?ゆき殿の都合は?」

「あい、いいよ」

「よろしく頼む」


 ビョークギルマスが深く頭を下げた。




 次はガラリと話は変わるけれど、最近手に入れた魔物の素材は必要?と聞いた。


「見せてもらえるか?」

「あい。ここ、出ちて、だいじょぶ?」

「かなり大きいものもあるぞ」


 鳳蝶丸の言葉を聞いて、即座に倉庫へ向かう。

 岩漿山のマカマカシリーズ以外と、水晶の洞窟のドロップ品を出そうかな。


「ほうしょ、ひん、ほうしぇち、いゆ?」

「宝飾品や宝石はいりますか?」

「何か付与が付いているものはあるか?」

「うーん、わたなない」

「次回会う時までに探しておけばいいんじゃないか?」

「しょうしゅゆ」

「悪いな。もしあったらで良いから」

「うん、いいよ」


 付与が付いているって、力とか素早さとか、魔力向上、身体強化のことだよね?あの中にあったかなぁ?探してみよう。



「ほちい、あゆ?」

「欲しい物はあるかい?」

「魔石を売ってもらえるとありがたいんだが」


 了解ですっ。

 魔石なら、いっぱいあるよ!


「こえと、こえと、こえ?あと、こえと……」

「待ってくれ、有り過ぎだ」


 フィガロギルマスみたいなことを言われちゃった。

 レーヴァ通訳で、細かいのは全部無料で渡すから、有事の時にでも使って欲しいと伝え、ゴルフボールサイズ以下の魔石を全部出した。


「こ、こんなにか?」

「じぇんぶ、まよく、入ってゆ」

「ドロップ品そのままなので、全部魔力が入っているって」


 レーヴァがひとつ手に取って、ビョークギルマスに手渡す。


「今、有事なんでしょ?貰っておけば?」


 ミルニルもオススメしてくれた。


「………これをアルシャイン辺境伯に献上しても?」

「あでたもの、自由、しゅゆ」

「あげたものなんだから自由にしてください、と言うことです」

「重ね重ね感謝する」


 ビョークギルマスが深々と頭を下げた。

 いや、こちらこそ。私にはイカ夫婦とサメ夫婦のおっきな魔石があるし、無限収納の整理も出来てありがたいデス。



 そして、そしてである。

 ここからは売り物!



 どーん!



 クラーケン夫婦の巨大な魔石をどーんと出した。


「こえ、どう?」

「…………………」


 ビョークギルマスが驚愕の表情で魔石をガン見している。


「皆、とうばちゅ、ちた」

「ああ。俺達で討伐したクラーケンの魔石だ。甲もあるが必要か?」


 ついでに巨大な甲2つと、ヒュージスレットシェルの殻、南の島産の巨大ガニの殻も出す。


「こえ、どう?」


 ちなみに、クラーケンの魔石は複写です。

 キング達のも合わせ、自分達で使う予定なので残しておきました。


 ビョークギルマスは、全部貴重な物で、ヒュージスレットシェルの殻は武具の装飾に使えるし、薬の材料にもなる。クラーケンの甲やヒュージスレットクラブの甲羅は武具、武器の材料になる、と教えてくれた。


「全て買い取ろう」


 倉庫で働いていた人達も途中から参加して、私が出すものを眺め…いや、固まっていた。


「リインを呼んで来てくれ」

「………」


 ビョークギルマスが、あんぐりと口を開けて固まっている男性に声をかける。


「しっかりしろ!リインを呼んで来てくれ!」

「はっ、はい!!」


 男性が慌てて走って行く。


「査定をしたい。時間をもらえるか?」

「悪いがこの後用事がある。お嬢が治癒する日までに査定をしておいてくれ」

「ああ、わかった。今預り証を…」

「いなない。ちんよう、ちてゆ」

「信用しているそうだ」


 そろそろ商業ギルドへ行く時間だったので、鳳蝶丸抱っこで移動しなくちゃ!

 預り証は断り、再訪を約束して冒険者ギルドをあとにした。




 途中、とても眠くなってウトウトしてしまったので、ミルニルのマジックバッグにカラーレスダイヤモンドを入れる。


「ミユミユ、よよちく………」

「うん。任せて。…主さん寝ちゃった?」

「ああ。寝ちまった」

「可愛いね?」


 そんな会話に気付きもせず、私は深い眠りの中へ。



 おやすみなさい。

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