第137話 はじめてのデッカイおかいもの
「はぁ……」
フィガロギルマスが悩まし気なため息をついた。
「実はこのルビー、サファイア、エメラルドも脅威の大きさと品質なんですよね。脅威のブルーダイヤモンドで少しばかり霞んでしまいましたが…………。こちらの宝飾品も素晴らしいものばかりです」
そう。どれもこれも私の鑑定ちゃんが高品質&最高品質だよ!と教えてくれたものばかり。
ブルーダイヤモンドのインパクトが大きすぎてちょっと霞んでいるけれど、地球だったらありえないくらい大きくて美しい原石や、ダイヤモンドをふんだんに散りばめた大きいルビーの指輪他、超高級宝飾品ばかりなのだ。
あっそうだ。これもあった!
「こえは?」
「…………………………んもう!ゆき殿!!!」
南の島の海底貝拾いした時襲ってきた貝に、ソフトボールくらいの真珠が入っていたの。
「貝殻はございますか?」
「うん、こえ」
「ヒュージスレットシェルですね」
「あい。おいち、たた」
「ああ、焼いて食ったが美味かったな」
「わたしは炊き込みご飯とお吸い物が美味しかったです」
鳳蝶丸とミスティルが美味な貝を思い出して頷いている。
「皆さんの基本は美味しいかどうかなんですね?」
「そりゃそうだよ。あと、酒に合うかも重要かな」
「かき揚げ、吸い物、それと焼きおにぎりが最高だった」
「ソ、ソウデスカァー」
レーヴァとミルニルの言葉に力なく笑うフィガロギルマス。
やがてウンウンと力なく頷いてから、食事も大いにそそられますが、私はマイコレクション品を買い取れるかが気になります。と、原石や宝飾品を吟味し始めた。
「ああ……これも、これも、これも希少な物ばかり。欲しいけれど、高額すぎて買えません」
フィガロギルマスは、悩みに悩んで小指の爪くらいのピンクダイヤモンド、アレキサンドライト、ベニトアイト、グランディディエライト、パパラチアサファイア、パライバトルマリンを購入した。
全部で3千万エンほどいただきました。お買い上げありがとうございます!
めっちゃお金持ち!
沢山ご購入してくれたお礼に、ヒュージスレットシェルの真珠を差し上げますわ。オホホ。
丁寧に断られたけれど、こんなに巨大な真珠はいらないのでと言って受け取ってもらった。こんな珍しいものを!と喜んでいただきました。
あとは、前々から考えていたアレ。
今回門から入りにくかったし、何度もミールナイトに来ることを鑑みて、もうここに拠点作っていいんじゃない?って思ったの。
住むわけじゃないけれど、転移の門戸繋ぎたい放題(?)だし、いつでも来られるしね。
「鳳蝶まゆ、土地、おはなち、ちて?」
「ああ、あれか。わかった」
フィガロギルマスに、小さくても良いから空いている土地はないかと相談する。
「え?住んでいただけるんですか?大歓迎です!」
「いや。住まないがこの町に来ることが多いし、その間滞在する拠点を用意したい」
「拠点を構えていただけるだけでも嬉しいです」
「なじぇ?」
何故私達の拠点作りが嬉しいの?と聞いたら、単純に高品質希少品ハンターの私達が拠点を構えてくれるのは嬉しいとのこと。
正直者め。
でもそんなフィガロギルマス、嫌いじゃないよ。
そして、ラ・フェリローラル王国に住む者としては、
「念の為言っておくが、俺達を利用することは出来んぞ」
「神の使いとしての頼み事は受け付けないからね」
「我が主の嫌がることをしないように」
「主さんは俺達が守ってること、忘れないで」
「勿論です」
力強く頷く。
ギルマスが何かするとは思わないけれど、念押ししておかないとね。
「提供できる土地ですが」
フィガロギルマスが机にミールナイトの縮図を広げた。
「ご希望の場所はありますか?貴族街ですと………」
「貴族街じゃなくていい。このあたりの外れは?」
「治安が悪いのでオススメ出来ません」
治安が悪くても結界があるから問題無いと言ったら、商業ギルドが
フィガロギルマスの立場が無くなっちゃうよね。ごめんなさい。
「では、この辺りはいかがですか?商人の倉庫などが多い場所で居住者はそれほどいません。空いている土地も広いです」
「いいね。どう?姫」
「あい」
本当は土地の見学をした方が良いんだろうけれど、地図を見る限り周りに何も無いようだし、住むわけでもないからいいや。
この区画で良いと指すと、領主様にお話すれば、
でも、それは嫌なので買い取りたいとお願いした。
タダほど高いものはないって言うじゃない?
土地を貰って手放し辛くなるのも嫌だし、購入するよ。
「わかりました。では価格の確認をして参りますね」
一旦退室し、紐で閉じられた分厚い本を持って戻ってくる。
「こちらの区画は土地の購入価格だけで約5億エンとなりますが、どうされますか?」
5億エン!
地球にいたころの私には到底支払えない金額。
手持ちに現金は無いけれど、宝石だらけの今なら払えそう。
支払いは宝石でも良いかと聞いたら、問題無いと言うことだったのでそうさせてもらおう。
「どえ?」
「カラーレスダイヤモンドでどうでしょう?」
「ええと、こえ?こっち?うーん。こえ?ちあう?こえ?」
「ああぁ………あり過ぎです」
フィガロギルマスが引きつり笑いをしている。
だって高品質の大きめなカラーレスダイヤモンド、いっぱいあるんだもん。
「こちらくらいで良いと思います」
選んだのは60カラットくらいの大きさで高品質なカラーレスダイヤモンド。推定7億エン。もし予想より価値が下がっても、5億は確実に確保できるらしい。
土地購入の支払いとして宝石を渡せば、その時点で土地使用の権利書を渡してくれるみたい。
今の混乱が落ち着いたあと王国、または商業ギルド主催のオークションにかけて、落札価格から土地代金と手数料を天引き、残金は私達に戻してくれると言うことだった。
うん、それで良いです。
土地5億エンなんて、日本で目にしたことすら無いから尻込みしちゃった。
でも思い切るよ!某所の舞台から飛び降りる勢いで!
くーだーさーいーなっっっ
「お買い上げありがとうございます」
私史上初の土地購入と相成りましたでございまする。
購入する土地の契約書や権利書等を用意するため時間が必要とのことで、明日にまた訪問してその時に宝石を渡す約束をする。
土地を買う算段がついて良かったぁ。
「でんしぇち、高品しちゅ、以上、しゃいくちゅ、ちたのよ」
「高品質以上の原石だけを選んで採掘をしたそうだ」
「姫が指したものを片っ端から採掘したから沢山あるよ」
「もしかして、アスケビィのダンジョンですか?」
「うん、しょうよ」
「どの階まで行きました?」
「勿論、最下層までだが?」
「よくご無事で…」
「わたし達にとって危険なダンジョンではありません」
「………そうですね、ええ。そうでした」
ハハハ…と力なく笑うフィガロギルマス。
「ちなみに何階層までありますか?」
「人の子が入れるのは52階層?」
レーヴァがミルニルを見て言った。
「そういうことにしとく」
「と言うことで、52階層だよ」
「と、ともかく、それくらい深いと言うことですね?」
「あい」
フィガロギルマスがちょっと思案顔をする。
「ブルーダイヤモンドを狙っているなら俺たち以外無理だと思うぞ」
「何故ですか?」
「高いところにあるし、採掘した途端に天井が崩れる」
「え?」
「天井が崩れる」
大事なことなので鳳蝶丸が2回言いました。
フィガロギルマスはガッカリと項垂れて、ため息をつく。
「では、先程のブルーダイヤモンドは世界にひとつ、になりますね?」
「んーん。わたち、持ってゆ」
「え?!」
「主も同じ大きさのものを持っていますよ」
「えええ!!!」
2つも採れたのですか?と聞かれたけれど、どう手に入れたのかは秘密だと言っておく。本当は複写なんだけれど、完全に私のコレクションで売り出すつもりは無いからね。
だから、世に出回るのは今のところ世界にひとつと言える。と、伝えておいた。
「姫の気が向いたらまた潜るし、その時はまたブルーダイヤモンドを採掘するかもよ?」
「主が別のが良いと言えばブルーダイヤモンド以外になります」
うん。次はやっぱり天井にあったレッドダイヤモンドがいいな。
鑑定ちゃんがファンシーレッドって表示していたし、地球では数個しか存在しない超希少なダイヤモンドだったはず。
「ちゅじ、ダイア、あたい、ほちい」
「次は赤いのが欲しいって」
「なら、次はブルーダイヤモンドは手に入らないね?」
「いえっ!赤、良いです!更に希少なレッドダイヤモンドということですよね?!」
フィガロギルマスが超絶興奮している。
やっぱりこの世界もレッドダイヤモンドは希少品なんだね?
じゃあ、次に潜る時はレッドダイヤモンドにしようかな。…でもデドゥリーポイズンタランチュラには会いたくないなぁ…。
そこが悩みどころだよね。
話も纏まり、明日土地を案内してもらう約束をして商業ギルドを出る。
冒険者ギルドに顔を出したけれどビョークギルマスが不在だったため、明日午前中にまた来ると伝言してもらう。
そして、人気のない町外れから転移の門戸で南の島に戻った。
明日の本契約、楽しみ!
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