第132話 ややこしいダンジョンに突入す!
また早朝から
昼前ごろ灰色の山の向こうに町が見えてきた。
「おっちい」
「この国で2番めに大きな町です」
「一番大きいのは王都だな」
「へぇぇ」
ここはアスケヴェスト王国。
小さな国だけれど、一部の人だけお金持ちの国なんだって。
何故かというと、この国のダンジョンから質の良い宝石(原石)が採掘でき、また魔獣から宝飾品がドロップされるから。
その代わりそのダンジョンは1階層からとても危険で、命がけらしい。
貧しい人達が冒険者となり一攫千金を狙って潜るけれど亡くなる人も多く、懐が潤うのは買い取りできるほどの財力を持つ商人や、王族、貴族のみ。
ただ、極稀に大きな宝石のドロップ、若しくは採掘する者が現れ大金を掴むので、挑戦する者達があとを絶たないんだって。
「あそこに見えている領都アスケビィだよ」
アスケビィは大きな町で、ミールナイトの様に高く頑丈な防壁に囲まれていた。違うのは、ミールナイトが三重の外壁に対し、アスケビィは一重の外壁しか無いところ。
ただ、真ん中辺りにまた円状の防壁が建っていて、◎二重丸の様な構造になっている。
真ん中の防壁内は、領主や貴族、大富豪の邸宅が建ち並んでいた。
「あの真ん中にそびえ立つのが領主の住むアスケビィ城だ」
「おっちいね」
3人はこの町に何回か来たことがあるんだって。
今いる位置から見ると、防壁の外に何かの施設らしき場所が2つ。
何となく、町が丸い顔部分で、2つの施設がワンコやニャンコの耳みたいに見える。
そして、地図にはその頭頂あたりに大きな『?』が浮かんでいた。
「あたやちい、なたま!」
新しい仲間発見ですよ!いや、知っていたけれど。
「あの2つの施設がダンジョンの入り口で、向かって右が攻略しやすく、左がとても難しいと言われているんだよ」
「右も人の子には難しいけどな」
「どちらも知られているのは10階層までですが、実際は53階層です」
3人の話によると、只々通り過ぎるだけならば数時間で下まで行けるみたい。
でも、討伐や採掘をするならばそれなりに時間がかかる、とのことだった。
「しゃいくちゅ、ちてみたい」
「了解」
やっぱり採掘してみたいよね!
町の近くまで飛んであとは街道を歩き、ようやくアスケビィに到着。
商業ギルドカードを提示して門を潜ったけれど、何だかジロジロ見られて不快だった。
3人に聞いたら、この町は野盗、貧困層、体躯の欠損者などで荒んでいる人達が多く、治安は良くないみたい。
貴族街は比較的安全だけれど、そちらはそちらで腹に一物ある者が多く、安心は出来ないらしい。
「冒険者ギルドの野営場は使わん方がいい」
「宿を探しましょう。貴族街近くの宿が良いです」
「このギルドカードで貴族街に入れないかな?」
「やるだけやってみるか」
と言うことで、貴族街の門までやって来ました。
「何奴だ」
2人の門番が、カシャン!と槍をクロスさせる。
「俺達は行商人だ。貴族街の宿に泊まりたい」
全員でギルドカードを差し出すと、1人が来て確認する。
「優秀商……。しばし待たれよ」
門兵が待機所へ行き、ギルドにあるような黒い板を持って来る。
「こちらにカードをかざしてください」
言われた通りにすると、頷いて武器を引いた。
「ようこそ、優秀商殿。これより先は貴族街となります。門を潜りしばらくは商業地区。宿はこの周辺にあります」
「あにあと、ごじゃいましゅ」
「どういたしまして、お嬢ちゃん」
ギロリと睨まれたし怖かったけれど、職務を全うしただけみたい。
私には、優しそうな笑顔を浮かべた。
「いって、ちまーしゅ」
「はい、いってらっしゃい」
バイバイしながら門を潜ると、門番さん達もバイバイしてくれた。
「おおっ!」
門の中は表と別世界だった。
石造りの立派な建築物が建ち並び、広々とした道には馬車が頻繁に行き交っている。
歩いている人はあまり居らず、商人らしき人や使用人らしき人が数名歩いている程度だった。
「あの辺りでいいか?お嬢」
「うん、あの宿、ちよう」
数日泊まるだけなので、鳳蝶丸が適当に決めた宿に決定!
小さめの4人部屋を5日分支払いして、食事は全部無しにした。
「ダンジョン、あちた、しゅゆ」
部屋に入ると直ぐ、転移の門戸をイバヤちゃんドームと繋げる。
「おひしゃし、ぶい」
サワサワサワ……。
イバヤちゃんに手を振ると、同じ様に揺れて応えてくれた。
盗賊?の時に会ったけれど、ここに来たのは久しぶりだもんね?
イバヤちゃんドームにテントを張って、5日間はここで過ごす予定。
お風呂入って、ゴロゴロしているうちお腹が空いてきたな…と言うことで、今回はキムチ納豆とマグロ漬け揚げ、焼き海苔のお味噌汁だよ。
お出汁と醤油に漬けたマグロの漬け揚げは、片栗粉でサックリ揚げた。
キムチ納豆は私の好みでひきわり納豆。ごま油を少しまわしかけて完成!
香ばしい焼き海苔のお味噌汁はまさに絶品だよ。
うん、白いご飯に合う!
皆でモリモリ食べてたら、神様ズから漬け揚げのリクエストがあったので、ご飯、味噌汁、漬け揚げセットを共有フォルダに入れました。
キムチ納豆を入れようとしたけれど、いらないって言われちゃいました。
美味しいのに、残念。
ぐっすり眠り、目覚めたら仕度をして出発です。
うーん。時差が良くわからない………。
イバヤちゃんドームからアスケビィに戻ったら、時計を再構築して現地時間に合わせなきゃ。
転移の門戸で宿の部屋に戻り、外を見ると辺りは真っ暗で夜中の3時過ぎだった。
早速懐中時計を再構築。再構成でアンティーク(イメージはスチームパンク)っぽくして、デュアルタイム文字盤とサン&ムーン表示付きにする。
メインの時計は今いるアスケビィの時間で、デュアルタイムの方はミールナイトタイムにするつもり。
サン&ムーン表示で午前・午後がわかるし、なかなか良い感じの時計が出来上がったよ!
宿の部屋に置いてある時計と懐中時計の時間を鳳蝶丸に合わせてもらい、無限収納に入れて複写。
「あい」
鳳蝶丸に2つ、2人にはそれぞれ1つ渡す。
「鳳蝶まゆ、魔道じゅ、よよちく、おねだい、しましゅ」
鳳蝶丸に渡した中の1つは魔道具してもらおう。
「ああ。任せてくれ」
鳳蝶丸は嬉しそうに懐中時計を眺めていた。
時計の部品ってワクワクするよね?
たぶん、鳳蝶丸の好みだと思うよ。フフフ…。
アスケビィ時間の6時頃まで休み、レーヴァ抱っこで宿を出た。
もちろん向かうはダンジョンの入り口向かって左。難しい方?って聞いたら、私達は特に問題無いんだって。
気配完全遮断で左の外門の近くまで行く。
そこにはやたら大きくて立派な建物が向い合わせで建っていた。どちらの建築物も違ったベクトルでお金がかかっていそう。
「凄く派手な方が商業ギルド、多少大人しい方が冒険者ギルドです」
「これと同じ建物が右側にもあるんだよ」
「しゅどい、派手」
「ええ。凄い派手です」
3人が人伝に聞いたところによると、採掘した鉱石は冒険者ギルド、原石やドロップの宝飾品は商業ギルドで買い取っているんだって。
私達はこの町で売りに出すつもりは無いので、多分どちらのギルドにも寄らないと思うけれど、外見を見て建物内もちょっと見てみたくなった。
中も派手なの?ドキドキ…。
ギルド見学は、このダンジョンの攻略が終わったら考えよう。
気配完全遮断のまま結界3でダンジョンに入る。
地図で確認すると、入り口付近から道が5本あり、そしてどの道も1つの大きな空間に繋がっていた。
その先には更に沢山枝分かれした道が続いているみたい。
「あえ?ここ」
「ああ。これがこのダンジョンの難しいと言われる理由の1つだ」
5つの道は全て広い空間に通じているんだけれど、その内の2つが行き止まりだった。
「あっ!」
地図を見ていたら1つが開通し、別の道が行き止まりに変わっている。
「ここまで人の子の足で1時間位かかるんだが、行き止まりが変則的に変わるので、向こう側に行けるのは運となる」
では、次に変わるまでその場で待てば良いのでは?と聞いたら、切り替わるタイミングも変則的で、30分で変わることもあれば、数日そのままの時もあるらしい。
しかも、どの道も罠があって、罠の種類は道によって固定だけれど、仕掛けられる場所が変則的に変わるので印付けが難しいとのこと。
このダンジョンも容赦ない!
最初からそんなじゃ、人が沢山入らない………いや、推奨しているわけじゃないよ、決して!
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