第127話 やつがしらって美味しいよね♪
テーブルなどを片付けてテントで休んでいると、シュッと地図が表示される。
テントの外に8人。1つは青点で他は白点。
鳳蝶丸が対応に出てくれた。
「他の奴らもラーメンを食いたいから出来れば売って欲しい、と言うことらしい」
「そうなると予想していました」
「うん。ラーメン美味いからね」
「大人数になるならギルドの許可を取ってきてくれと伝えた。一応商業ギルドカードも提示した」
「わたった」
少しすると更に人数が増えたのでテントから出ると、ガッシリした30代くらいの男性が立っていた。
隻眼らしく、左目に眼帯を着けている。
「冒険者ギルド長、カノアだ。ここは野営場だが店を出すのは許可していない。商人と聞いたが、売り物は店で出してくれ」
「勘違いをするな。俺達がここで販売したいと言ったわけじゃない」
「俺達の食べていた食事を売ってくれと言うから、ギルドの許可を取って欲しいと言っただけ。商売させて欲しいなんて言ってないけど?」
カノアさんが顔をしかめ、集まっている人達を軽く睨む。
「そうだったのか。聞き違いがあったようだ。不快な思いをさせてすまん。その確認の答えだが、野営場なので小さな売買は目を瞑るが、大人数への販売は許可出来ん」
「わたし達はそれでかまいません」
「ええっ!そんな!」
「コモマイの飯を味見したら腰抜けそうなほど美味かったんだ。一人前食いたいぜ!」
「……………そんななのか」
カノアさんがうーんと唸る。
「ただな。彼等は馬車の長旅で疲れているだろうし赤ん坊も一緒だ。明日も朝早い……んだよな?」
「ええ」
「ならば、無理はさせられねえ」
「ええぇ……」
冒険者らしき人達がガッカリしていた。
「とはいえ、お前らがそこまで美味かったと言っている食べ物は確かに気になる。これは無理にじゃねえが、例えば時間制限で売ると言うのはどうだ?」
「じたん?」
時間制限か……。
美味しい食事の布教も出来るし、短時間ならいいかな。
「ここ、売ゆ、いいの?」
「この場所で売っていいのか?」
「出来ればここじゃなく、冒険者ギルドの酒場で頼みたい」
「うん、わたった」
「が、その前に、悪いが俺にも商業ギルドカードを見せてもらえないか?」
「あい」
私がモコモコ白うさぎちゃんショルダーバッグ(と見せかけた無限収納)からカードを出すと、カノアさんがギョッとした顔をした。
「お嬢ちゃん、商業ギルド会員なのか?」
「うん」
「俺達も持っているよ」
レーヴァ、ミスティル、鳳蝶丸もカードを差し出す。
「おいおいおい、どうなっているんだ?ん?え?!優秀商!」
その後しばらく固まるカノアさん。
「…………ン、ンン。悪いがここにかざしてもらえるか?」
復活すると、後に控えていた女性職員が黒い板を出す。
順番にカードをかざすと白く光った。
「一応規則なんですまんな。確かにカードが本物だと証明された」
「商業ギルドの情報を冒険者ギルドで確認出来るのか?」
「詳しく言えないが、この魔道具で本物かどうかがわかるようになっている。これは両ギルド共有だ」
へえ、そうなんだ。
「では改めて、夜の食事をよろしく頼む」
「あーい!」
おお!
やったぜ!
途端に冒険者達と、さっき食べたはずのコモマイさんまでが拳を上げて喜んだ。
販売時間は夜の18時から20時まで。17時30分ころから準備にかかる。
客の整理、その他を全面協力して欲しいと鳳蝶丸訳で告げる。
カノアさんはそれを快諾した。
「酒は出してもいいのか?」
「酒場だから問題ないが……いいのか?」
「ああ」
鳳蝶丸達がニコリと笑う。
自分も飲むつもりですね?
ここまで決まると皆安心して散って行く。
すると、ご家族のお父さんが走って来た。
「沢山の冒険者に囲まれていましたが大丈夫ですか?」
「ん?」
心配して来てくれたらしい。
「別に諍いじゃないから問題ない」
「ちんぱい、あにあと。だいじょぶ。おでたて、しゅゆ。いってちましゅ」
私が手を振ると、3人はサッと歩き出す。
「あ!私達も夕食の食材を買いに行くんです。良かったら一緒に………」
「家族で出かけたいから遠慮するよ」
レーヴァが応え、今度こそ振り向かずに町へと歩き出した。
「下の子供とお嬢を仲良くさせようとしているな」
「俺達、羽振りが良さそうだからね」
「旅の間ついて来られないようにしないと」
え?そうなの?
仲良くなるのは良いんだけれど、ついてこられるのは困るなぁ。
「みんな、あにあと」
「ああ」
「どういたしまして」
「邪険にならない程度に離れるから心配しないでね?」
「あいっ!あにあと!」
町は観光地と言う感じでは無かったけれど、色々なお店を覗いたり、市場に行ってみたりしてみたよ。
この地方の名物だと言うパレパレポウという果物を試食したら美味しかったので、6個入りの箱を買っちゃった。
見た目はパパイヤのような楕円のツルンとした黄色い実で、中味は凄くジューシーなパイナップルという感じ。凄く甘いわけでは無いけれど、程よい甘さと酸味が美味しい、果汁たっぷりの果物だった。
「ロコガエルのモモ焼きだよー!」
市場を素見していると、威勢の良い声が聞こえてくる。
カエルのモモ焼きかぁ。カエル料理は若かりし頃、中華料理で食べたことあるな。
凄く淡白な味で、鶏のササミに似ていると言えばそうだけれど………うーん、どうだったな?
軟骨?骨?の様なものが沢山あって食べにくかったと記憶している。
「食べますか?」
私が真剣に見つめていたせいか、ミスティルが私の顔を覗いて微笑んだ。
「うん…。食べてみたい」
チャレンジしようかな?
ミスティルにお願いしてお店に近付いてもらうと、巨大ナマズくらいの大きさのお肉が焼かれて売っていた。
形がね?うん、足そのままだなって。
でも、やっぱりちょっと食べてみたいかな。
「どうだい?兄さん達。この地方の美味い肉だ。食べて損はないよ!」
「まゆごと?」
「丸ごと全部はいらないんですが」
「半分売りも四つ切売りもあるよ!」
「じゃ、よちゅじじ!」
四つ切言いにくい!
口に合うかわからないから少しで良いよね?
「では、四つ切を1つください」
「あいよっ!4百エン」
四つ切のお肉を大きな葉っぱでクルクルと巻いて、差し出される。
お肉はレーヴァが受け取ってくれた。
その他にこの国特産のポニイモというおイモも買った。
テントに戻って直ぐ、寛ぎの間でロコガエルのモモ焼きを皆で食べてみた。
「アッサイね」
「ええ。アッサリしていますね。これはこれでアリですがちょっと物足りません」
「俺はもう少しガツンとくる方が好みかな」
「俺も」
ロコガエルのモモ焼きはハーブソルト味でアッサリしていた。
「バンバンジー、ばいにちゅ和え、チージュフヤイ、ちゅうたふう、ピニカヤ炒め、かやあげ………」
このお肉に合うのはバンバンジー、梅肉和え、肉とチーズのフライ、中華風ピリ辛炒め、唐揚げくらいしか思いつかないな。
全部鶏のササミのレシピだけれど。
次はポニイモ。
鳳蝶丸にキッチンでポニイモの皮を剥いてもらった。感じとしては、八頭とかセレベスっぽい?
とりあえずお湯で煮てみた。火が通ったので食べてみると、ホクホクしているけれどネットリもしている、やっぱり八頭って感じかな?
鑑定で一番美味な物を取っておき、他は全部洗ってから皮を剥く。
少し大きめの食べやすい大きさに切って、面取りしてもらった。
塩でもんでからしっかりと水洗い。
あとは、たっぷりの鰹出汁に醤油、砂糖、酒、味醂、塩ひとつまみとおイモを鍋に入れて、落し蓋をしてじっくり煮込む。
汁が少なくなったら完成!
無限収納、複写。良し、食べよう。
「ポニイミョ、煮物、どうじょ」
「いただきます!」×全員
んっ!美味しい!
ホクホクして、でもネットリと柔らかいおイモ。
味付けも丁度良い。わが家流はちょっと薄味なんだけれど大丈夫かな?
「うん、美味いっ」
「イモが柔らかくネットリしていて不思議です」
「出汁が効いていて本当に美味いね」
あっという間に一皿完食。
3人がもっと食べたいと言うので、結局作った分は複写せず全部出した。
そして、鑑定で美味と表示されたおイモを複写して、もう一度最初から煮てもらう。美味のお芋で作った煮物は更に柔らかくネットリしていて、とてもとても美味しかった。
こちらは無限収納に即収納して、食べるときは複写するよ!
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