第124話 ふふっ。快適体験を堪能するが良い………
「なあ、アンタらは冒険者?……には見えないよな。ただの旅人か?綺麗な兄ちゃん達と姉ちゃんと子供の組み合わせだから不思議でよ」
「誰が姉ちゃんです?」
「え?アンタだけど」
「わたしは男性ですが?」
「なっ、男か!すっげぇ美人だから………その、すまん」
ミスティル女子に間違われがちだよね?
ちょっと見れば男性ってわかるのに。
トイレを清浄して、魔石の魔力を満タンにして外に出る。
そしてミスティルに向かって両手を伸ばした。
「…………」
ミスティルが速攻私を抱き上げてスリスリしている。
うんうん、癒やされてください。
その間に鳳蝶丸がトイレテントを仕舞ってくれた。
「はあ、見事ですね」
マウイさんとマケイさんが話に加わる。
「解体無しで仕舞うなんて初めて見たな、兄貴」
「ああ。ちなみに今のテントは何ですか?」
「トイレだ」
……………。
「え?!」
「お嬢専用のトイレだ」
「え?で、でも、その、そのままマジックバッグに仕舞うのは、その………」
「清潔だから大丈夫だよ」
「ちゅかって、みゆ?」
「えっ!」
まだ20分弱あるし、大丈夫だよね?清潔に過ごす快適さを普及するのだ!
「主の許しが出ました。私達が所有するトイレを使ってみますか?」
「お、おお。そちらが良いなら。まずは俺が体験しよう」
冒険者の男性が名乗り出る。
「大ちい、トイエ、しぇちゅめい、ちて、くだしゃい」
「わかった」「了解」「わかりました」
今度はミスティルが出している風にして、屋台や調査隊の時に使った大きなトイレテント(男性用)を無限収納から出す。
長く設置するわけではないから、ペグ打ち無しでいいよね?
鳳蝶丸が冒険者と御者の男性達と中に入る。
説明書も屋台の時設置したままなので問題無し。
男性達がトイレテントを体験している間、皆で食事は何にするか話しながら待つ。
しばらくして3人の男性達が出て来た。
「臭くない」
「快適。あと、洋服の汚れが消えているぞ」
「体まで綺麗になったのがわかる。髪もスッキリだ」
うんうん。
これを期に、衛生に関心を持ってくれるといいけれど。
「体を清潔にすることはとても大事だ。病気にかかりにくくなる」
「衛生も大事です。汚物から流行り病が蔓延することだってありますよ」
鳳蝶丸達には衛生についてしっかりと説明済み。
そして、機会があったらフェリアの人達に話して欲しいともお願いしてある。
まずは臭くないな、快適だな、と感じてくれるところから始めるよ。
「凄いな。ここまで大きくなくてもいいから1人用が欲しいぜ」
「残念だが、解体無しで入れられるマジックバッグが必要になる」
「うう!そこだよな!」
「冒険者や商隊他に便利な持ち歩けるトイレは開発中だよ」
「えっ!本当か?!」
「ああ。そのうちわかると思うから、もう少し待つといいよ」
「期待して待っているぜ!」
そのうち清浄カードが普及するからね?……たぶん。
「ところで、この旅の間トイレを借りることは出来ますか?」
マウイさんが真剣な表情でミスティルに話しかけた。
「貸出料はいただけますか?」
「もちろん。借りるとしたらおいくら位ですか?」
「とある町の冒険者ギルドでは、2日で10万エンでした」
「10日で50万エンか……」
マウイさんが少し考える。
「良し、借りよう」
「兄貴!」
「この旅の間だけでもお客さんと弟に快適に過ごしてもらいたい。もちろん自分自身もな。俺の資産から出すから大丈夫だ」
「それなら俺も半分出す」
「俺達【雷虎の牙】も多少になるが資金を出すぜ」
兄弟と冒険者が視線を合わせて頷く。
「2つ先の町で金を用意します。トイレの貸出をお願いします」
ガヤガヤ………
その時お客さん達が馬車に戻って来た。
「次の休憩所までに返事をいたします」
「はい。お願いします」
全員乗車して、馬車は予定通りの時刻に出発した。
周りの人達は買ってきた、若しくは自分で用意していた携帯食を食べ始める。
朝食の時間なんだって。
私達も食事にしようか。
馬車の中だからあまり匂わないように、ミックスサンドとアイスコーヒー&アイスティー。
本当は温かい飲み物のほうが良いけれど、ガタガタ揺れる馬車の中で熱いものは危険なので諦めて、大人用のストローマグに飲み物を入れたよ。
一番後の席にしたから食事に関してはあまり目立たずゆっくり(ガタガタだけれど)食べられた。
馬車を止めたのはお昼頃。大きな一枚岩の抉れている部分だった。
「1時間の休憩となります。休憩場所はこの一枚岩の下でお願いします。冒険者の皆さんが立っている場所より先には行かないでください」
冒険者の皆さんはすでに外に出て、3人は岩の下に複数の布を敷き、5人は岩を囲むようにして周囲の警戒を始めていた。
マケイさんはスレイク達に水と飼葉をあげている。
私達は馬車の車輪を点検しているマウイさんのところに行った。
「先に伝えるが、俺達は行商人だ」
鳳蝶丸が商業ギルドカードを差し出す。
「えっ!ゆ、ゆ、優秀商!え?は、初めて会いました。いや、優秀商の方は俺達のような馬車ではなく、立派な商隊を組むものだと思ってました」
「他は知らん。俺達は商隊での移動を好まないだけだ」
「はあ……」
そして本題に入る。
「トイレを貸し出す。料金は特別にこの旅の間で10万エンとする」
「えっ!」
「今回の貸出は本当に特別価格だから、俺達を引き合いに出して他の商人に無理難題を言わないようにね」
「それはもちろんです…本当に良いんですか?」
「お嬢…俺の主が良しとしたからな」
「ありがたい。本当ありがとうございます」
マウイさんがとても嬉しそうに喜んだ。
すぐにトイレテント(男性用・女性用)を出す。ペグ打ちを始めると、マウイさんも一緒に打ってくれた。
「説明書きは置いてありますが、男性トイレの使用方法を皆さんに説明してくださいね」
「はい!」
マウイさんはまずマケイさんのところへ行き、今回の貸出について説明している。
マケイさんは嬉しそうに笑って私達に頭を下げた。
「皆さんお聞きください。この旅の間だけではありますが、こちらの皆様がそれはそれは快適なトイレを貸出してくださることになりました。緑が男性用、橙が女性用です」
敷物に座っていたお客さん達が集まってくる。
「これがトイレなの?普通のテントではなく?」
「そうなんですよ。清潔で臭くなく、とても快適です」
「男性は俺達が説明します」
マケイさんが男性達を誘導した。
「女性はわたしが案内します。ついて来てください」
私とミスティルが女性用トイレを案内した。
はあ。
誰かがため息をつく。
こんなに快適なトイレは初めてだ。
トイレに入ったら、私の体まで綺麗になってスッキリしたわ。
本当に凄い綺麗で快適なトイレだな。
この旅だけなんて、私達幸運ね?
体が綺麗って、とても気持ちの良いものだね。
皆さん口々に感想を言い合っている。
そうそう。
そして衛生について関心を持つんだ、みんな!
私達は端の方に小さめの帆布シートを敷いて、お昼ご飯を食べるよ。
何にしようかな?オニオンスープとオムライス弁当でいいかな?
無限収納に、昔私が作ったオムライスのお弁当を再構築、複写する。
ちょっと厚めに焼いた卵でチキンライスを包み、ウインナー、プチトマト、ブロッコリーと、わりとスタンダードな感じ。
あと、硝子の器に苺を入れて出した。
「いただきます」×全員
「ん、美味しい」
「青空の下で姫と食べるお弁当は美味しいね」
「卵に少し甘みがあって、酸味のあるトマトの飯と相性が良いな」
「よかた」
私はレーヴァ抱っこで食べさせてもらった。
うん、我ながら美味しいよ!
何だか周りからの視線を感じるけれど、キニシナイ!
お昼を美味しくいただきました。
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