第113話 My name is みつっ、ん?
「おはようございます!」
一番にやって来たのはアスナロリットさん。
「おはよ、ごじゃいましゅ」
私は眠い目を擦って起き上がった。
「お休み中でしたか?すみません」
「だいじょぶ。起きゆ」
事前に各人のサイズに合わせた桜吹雪の
あ!そういえば、お着替えテントを出してなかったな。
私は屋台の裏側にテント(男性用・女性用)を出した。
鳳蝶丸とレーヴァに男性用テントとアスナロリットさんの着替えをお願いして、私とミスティルはまだ誰も来ていないので女性用テントでお着替えする。
ミスティルに髪を結ってもらい(今日はポニーテール)外に出ると、肩で息をしているアスナロリットさんが屋台で蹲っていた。
「だいじょぶ?」
「ああ、いつものヤツだ」
「すっごい驚いていたよ。面白かった」
面白がらないでください、レーヴァさん。
マッカダンさんみたいにテントを飛び出して驚くという、いつもの光景だよ!
お手伝いに来てくれたリンダお姉さん一家と、ミムミムお姉さん一家も皆テントを飛び出したと言う。
合掌。
10時になりました。
目の前には長めの列。まだ誰も食べていないのに何で?と思ったら、調査隊に参加した面々が、桜吹雪の食事が美味かったと周りに言ったらしく、食べてみたいと早めに来たらしい。
急いで本日のメニューをアドバルーンもどきで空中に浮かべる。
[食べ物]
塩唐揚げ4個・醤油唐揚げ4個・フライドポテトセット 8百エン
塩唐揚げ8個 6百エン
醤油唐揚げ8個 6百エン
フライドポテト 3百エン
[飲み物]
果実水・水・紅茶・珈琲・コーラ 2百エン
エール・ワイン(赤・白)・ウイスキーハイボール 4百エン
※箱やフォーク、飲み物のカップは返却・お持ち帰り等、ご自由にどうぞ
「いよいよ始まるのね?」
「そう。凄いから覚悟して」
ミクミクお姉さんとミムミムお姉さんは気合い充分。
「俺達は列の整理をしてくるよ」
「よろしく、兄さん!」
リンダお姉さん一家の男性陣は列の整理に行ってくれた。
さて、始めよう。
フライヤーを再度清浄して油を満たす。
唐揚げ用は温度設定をしてスイッチオン!
頃合いを見て肉やポテトを揚げ始めた。
ちょっと早いけれど、ウチはコンテスト参加していないので、早めに始めても良いと許可を取っているのだ。
辺りに唐揚げの良い匂いが漂い始めると、お客さん達がザワザワし始めた。
「何だ?この良い匂い」
「んは〜俺朝早くから来てよかった!」
「子供達のおかずになるかしら」
唐揚げの匂いって食欲をそそるよね?
アスナロリットさんに唐揚げをどんどん揚げてもらい、リンダお姉さんがポテトを揚げていく。
油が汚れてきたら私が清浄する。
良し。ある程度整ったので、桜吹雪、開店します!
レーヴァ抱っこで並んでいる列の先頭に行く。
「皆しゃん、おはよ、ごじゃいましゅ。おまたて、ちまちた。しゃくや、ふぶち、たい店でしゅ」
ウヲヲーーーーー!
リンダパパとリンダお兄さんがお客さんを捌いていく。
窓口は3つ。今はミムミムお姉さん、ミクミクお姉さん、ミムミムママが接客している。
鳳蝶丸とミスティルはビールやワイン、ソフトドリンクの用意。
私は屋台全体を見渡し、不足がないか確認&フライヤーの清浄です。
「うんめーーー!」
「ンハッ!何だこのエール!喉越し最高だな!肉と合う!」
「最初ガリッとして、中はジュワ〜と旨味が出てくる」
「ちょっと、これ胡椒じゃない!ああ、贅沢で美味しい…」
テーブル席はすぐに埋まって、座れなかった人たちは空いている場所で立ち食いを始めた。
あちらこちらから美味しいと言う声が聞こえて嬉しくなる。
美味しいって幸せだよね。
「ゆきちゃん、揚げが間に合わなくなってきた」
ローザお姉さんが作業の遅れを教えてくれる。
「箱、入えゆ。しょこかや、だしゅ」
「例の箱に揚げたて追加するそうだよ」
「了解」
屋台の隅に大きな箱を用意して、私の無限収納と共有してある。
もし揚げが間に合わなくなってきたら、その箱の商品を渡す手はずなのだ。
私は各セットを箱にどんどん入れていく。
そして、入れるそばから売れていった。
「あえ?もう無い」
「姫、見て?あの長蛇の列」
はわあ!
気付けば最後尾が見えないくらいの列が出来ていた。
レーヴァに屋台の陰に行ってもらい、清浄カードの付与を少し書き換える。
油と揚げカスと汚れのみ清浄。
そしてカードに最大まで魔力充填をする。
私がフライヤーから離れられないので、応急処置として清浄カードを作成、複写した。
「鳳蝶まゆ」
「ん?」
「こえ、ちゅかって」
鳳蝶丸に油と汚れの除去用と説明をして渡す。
「了解した。任せてくれ」
そして、レーヴァ抱っこで列を辿った。
列は外まで出てしまっていた。
箱に商品を補充しているので列の進みは早いけれど、更にどんどん伸びている。
ポールチェーンを伸ばして増やそう。
急遽ポールチェーンと結界を追加して、外に溢れている列を緩和する。
うん、とりあえず応急処置は出来たかな?
「クレープは明後日ですよね?」
「恐ろしいですわ……」
私達が屋台に戻ると、アスナロリットさんとエクレールお姉さんが戦いていた。
凄いとは思うけれど価格設定がちょっとお高めだし、お酒組が来ないんじゃない?え?考えが甘い?
暫くすると、見知った顔ぶれを発見した。
市長さん、領主さんとお子さんかな?護衛と執事さんや侍従、侍女さん達も一緒に大人数で並んでいる。
ちゃんと並んでくれたんだね?ありがとう!
周りの人達が驚いて、列の前後にちょっと隙間がかるのはご愛嬌。
じゃあ、私が窓口別で接客しようかな。
「いやったい、ましぇ」
「ゆき殿。とても美味しいと耳にしました」
「あい!なやぶ、あにあと」
「並んでくれてありがとうと言うことだよ」
「いやいや。こういうことも我が子に経験させたかったんです」
領主さんが楽しそうに10歳くらいの女の子の背中を押した。
「やあ、お嬢さん」
「!!!」
「お嬢さんは何をご所望かな?」
レーヴァの笑顔にもじもじする伯爵令嬢。
「………ン、ンン。さあ、シトリン。注文をしてごらん」
「はい、お父様。初めまして。
「初めまちて、ゆち、でしゅ。こちやは、イェーバでしゅ」
「我が主の名はゆき。俺はレーヴァだよ。よろしくね」
レーヴァが珍しく私を姫呼びしなかった。
伯爵令嬢に対してちょっぴり気を使ったのかな?
「あ、あの。唐揚げとフライドポテトのセットを50セットいただけるかしら?飲み物は必要ありませんわ」
「お買い上げありがとうございます。飲み物無しで50セットだね。もちろん出せるけれど、持ち歩けないかな?どこかに届けるかい?」
すると侍従さん達がササッと来て袋を5つ出したので、鳳蝶丸が受け取った。
そして唐揚げとポテトの入った竹籠を10個ずつ袋に入れて差し出すと、侍従さん達がそれを受け取り、頭を下げて戻って行った。
「4万エン、でしゅ」
「こちらでよろしいかしら?」
「あい…」
シトリンちゃんが金貨を1枚差し出す。や、屋台で金貨は………
領主さんはニコニコ笑顔でシトリンちゃんの様子を見ている。
お父さん。お祭りにはもうちょっと細かいお金を持たせてください。
「おちゅい、あゆ」
「お釣りの6万エンだよ」
レーヴァが男性用のコインケースを出して大銀貨6枚を渡すと、領主さんが食いついてきた。
「ほう!それは硬貨入れかね?便利そうだ」
「これかい?なかなか便利だよ。あ、お嬢さん。よかったらこれをプレゼントするね。我が主が作った財布。こうすると開くよ」
「まあ!何て可愛らしいのかしら」
レーヴァが桜柄のがま口を令嬢に渡す。
本当は、お酒の時に作ったトートバッグの小さいバージョンを、たくさん買ってくれた人にプレゼントすることになっているんだけれど、伯爵令嬢なのでコロンとした可愛いがま口にしたらしい。
「娘にすまないね。それから、その硬貨入れなんだが……」
「ご主人様、他のお客様もお待ちですよ」
「あ、ああ、すまない」
執事さんが領主さんに声をかける。
「ここは通常のお客さん達とは別だから構わないよ」
「そうかい?悪いね」
ここで、市長さんが初めて発言。
「みつっゆき様にお願いするのは申し訳ありませんが、我らで食べられる席を設けてくださいませんでしょうか?」
うんうん、もう定着しちゃったね?市長さん。
「しぇち?あい、いいよ」
「座席の用意をするそうだよ」
「はいっ!ありがとう存じますっ」
接待も大変だよねえ。
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