第97話 なんで?可愛いよ?ボルケーノキングワームちゃん

 一応景品まで考えておこうと思い、皆に相談する。


 【虹の翼】のお姉さん達からは、景品提供することを最初反対された。

 抽選はすごく楽しいしぜひ採用して欲しいと思うけれど、景品までゆきちゃんが出すことはない。第一スタンピードを止めた功労者はゆきちゃん達であるし、感謝される側なのでは?

 名前を出して欲しく無いのはわかっているし、私達は勿論言わないけれど、それ以上のことをしてもらうなど心苦しい、と。



 すると、従者達が私の気持ちを代弁してくれる。


 神子の正体を知る君達だから言うが、こちら側に大きな負担はない。

 詳細は言えないが神子の仕事の一部でもある。

 やりたくないことは強要されても絶対にやらないし、抽選に関しては寧ろ主がとても楽しんでいる、と。


 その説明を受け、【虹の翼】のお姉さん達がようやく納得してくれた。

 私のことを思ってくれてありがとうね。【虹の翼】のお姉さん達は皆優しいし大好きだよ。




 さて、景品である。

 私と家族達と【虹の翼】の皆さんで意見を出し合う。


 生活に密着したものが良いんじゃないか?と、滅多に貰えないものが良いのでは?と言う意見。

 金賞は魔道具にするのはどう?って聞いたら、もし金賞を取ったのが平民の場合、魔力充填は難しいし、強盗や恐喝などの犯罪を誘発するから難しいのでは?と言うことだった。


 言われてみれば確かに。

 日本では1等賞に電化製品なんてあったから普通に考えてしまったよ。


 では、食べ物は?消えものなら大丈夫じゃない?って思ったけれど……。

 ある程度日持ちしないといけないかな?


 私が提供出来るもの、かつフェリアの皆さんが喜びそうなもの。


 うーん。

 こんな感じかな?


 【虹の翼】の皆さんや家族達の意見を反映しつつ、以下の通りに決めました。



 黒→飴5個(イチゴ・レモン・オレンジ・ブドウ・アップル味)セット

 赤→石鹸3個(バラ・シトラス・ハチミツの香り)セット

 黄→クッキー5種類(プレーン・チョコ・チョコマーブル・ナッツ・紅茶味)

   セット

 紫→パウンドケーキ3種類|(プレーン・クルミ・チョコマーブル)セット

 青→クルコッコライドのモモ肉2種×3本、タクティクスオークの

   ロース200gセット

 緑→タクティクスオークのロース500g、ホットハニー1個セット

 白→高級「ワイン・ウイスキー・ニホンシユ」セット(お酒グラスセット付き)

 銀→ラヴァマヒェーリ(ナイフ)1本、アラリアの靴1足

 金→上級ポーション、傷・病1本ずつ1セット



 ちなみにクルコッコは死の森産の鶏っぽい魔獣で、クルコッコライドは大きめの個体に何故か小さめの個体が乗っている魔獣。

 上の子は肉質が柔らかく、下の子は筋肉質で旨味が強い。

 どちらも美味しいと鑑定で出たので景品にしてみたよ。


 死の森産のタクティクスオークはオークの上位種で、普通のオークより高級なお肉なんだって。

 ホットハニーは岩漿山32階層のボス戦でドロップした常に暖かいハチミツ。

 ラヴァマヒェーリとアラリアの靴、上級ポーションは岩漿山産。


 アラリアの靴は33階層の魔獣、カフトゥスアエーラスラビットからのドロップ品。

 履いていれば5mくらい跳躍できるし、サッカーみたいに足を蹴り上げると熱風が巻き起こるんだって。


 ラヴァマヒェーリはボルケーノキングワームちゃんからドロップした小さなナイフ。

 魔力を通すと溶岩のように真っ赤で熱くなり、何でも溶かし切るナイフで、通路に詰まっていたワームちゃん産だよ。

 鞘無しだったので革鞘を再構築、再構成で作り、可愛いワームちゃんの姿をレザーカービングして、ナイフ本体を鞘に納めました。

 ちっちゃいワームちゃんをデフォルメしたんだけれど、【虹の翼】のお姉さん達からはちょっと不評だった。

 何で?!


「ボルケーノキングワームを可愛いと言えるのは、ゆきちゃん達だけだよ………」


 何かごめんなさい。でもお直しはしないよ!




 このあと商業ギルドへ行って、久し振りにフィガロギルマスと会った。

 この町を出ていたはずの私達に驚いていたけれど、何も言わず大歓迎してくれる。フィガロギルマスは私の正体知っているもんね。


「お久しぶりです。お元気でしたか?」

「あい。げんちよ。ヒナヨギユマシュ、げんち、良かた。あたらちい、かじょく。イェーバよ」

「俺はレーヴァ。よろしく」

「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」



 まずはレーヴァの商業ギルドカードをお願いするとフィガロギルマスが快諾してくれた。すぐにエレオノールさんが手続きに行ってくれる。

 そして、私達がデリモアナに行っていたことなどを話していると、カードと麻袋を持って戻って来た。



「申し訳ありません。用事を済ませてすぐに戻ります。その間エレオノールが前回の買取のお話をしますので少々お時間をいただけますか?」

「あい、いってやったい」

「はい、行ってまいります」


 フィガロギルマスは少しの間席を外すと言う事で、その間エレオノールさんから色々な説明を受けることになった。


「まずは、こちらがレーヴァ殿の商業ギルドカードです。説明をいたしますか?」

「いや、仲間に聞くから良いよ」

「畏まりました。そして、こちらが買取希望の品名と個数です。金額は査定をしてからになります。そして、こちらは先にお預かりした品の買取金額と、そしてこちらが宿の返金分です」


 渡された羊皮紙を確認する。

 1枚目は買取希望の種類と個数が書いてあった。思っていたより多くの種類と個数を買い取ってくれるらしい。2枚目はナマ物の買取価格。質が良かったからと結構良いお値段で引き取ってくれた。

 3枚目は流るる雲雀亭の返金額が記載してあった。


「じぇんぶ?」

「どれ?ああ、宿に支払った全額だな」


 鳳蝶丸に渡すと金額を確認してくれた。


「流るる雲雀亭のヒソラ殿より、この度ご迷惑をおかけして大変申し訳なくお詫びたいと申し出がありましたが、お断りいたしました。よろしかったですか?」

「あい。お詫び、いなない。他のちと、やなない、しゅえばいい」

「詫びはいらん。今後他の奴にやらなきゃいい、とのことだ」

「はい、その件につきましては、商業ギルドからも厳重注意いたしました」


 ローザお姉さんにも詫び状が渡されたみたい。お金の清算も出来たしこの件に関しては終了ってことで。


「ようしょう、ちまちた。あにあと、こじゃい、まちた」

「いいえ。こちらこそ、この度は当職員がご迷惑をおかけし本当に申し訳ありませんでした」


 深々と頭を下げる。


「もういいよ。楽ちい、お話、しゅゆ」

「はい」


 エレオノールさんが気持ちを切り替えたように笑顔を浮かべた。



「未査定分以外はこちらでよろしいでしょうか?」

「あい」

「ではこちらにサインを」


 ミスティルに代筆でサインをしてもらい、現金は私の無限収納に回収した。



「ありがとうございます。それから、大変申し訳ありませんが今回お預かりする品物の査定にお時間をいただけますでしょうか?」

「時間がかかるのか?」

「はい。祭りの件で色々ございまして、今、皆様に少しお時間をいただいております」


 そうだよね、お祭りで忙しいもんね。


「おまちゅい、後、旅出ゆ。ちょと、かんなえゆ」

「申し訳ございません。なるべく早く査定出来るようにいたします」

「いいの。ギユド、忙しい、ちってゆ」


 この町には一瞬で帰れるけれど、問題は転移の門戸を繫げる場所だよね。

 まあ、外の人気少なそうな場所に繋げて門から入ってもいいか。ちょっと考えよう。



 少ししてフィガロギルマスが戻って来たので話を再開。

 まずは屋台3日間の参加表明と、次に抽選会のプレゼンなのだ!


 【虹の翼】のお姉さん達に話したことと同じ内容を説明すると、フィガロギルマスが大いに興味を持ち、抽選器を回す体験をしてすごく楽しい!と喜んでくれた。

 ちなみに黒玉だった。


 景品提供は【虹の翼】の皆さんと同じ理由でやっぱり反対されたけれど、従者達がまた同じように説明して受け入れてもらう。



「ただ………わりと大掛かりなのでこの案が通るかどうかわかりません」

「しょしたや、わたち、自分、しゅゆ。空いてゆ場所、あゆ?」

「こんなに盛り上がりそうな企画そうそうありません。私もぜひとも開催したい。………皆様は今回いつ頃までこの町にいらっしゃいますか?私が皆様の所へ出向きます」

「ちとわからん」

「我々がこちらに来るよ」

「そうですか。ご足労いただき申し訳ございません。では本日を含む5日後。今の時間あたりにいらしてください」

「あい、わかた」

「わかりました」


 私達はフィガロギルマスにまた来ることを約束して、帰りにエレオノールさんに買取希望の品と個数を預け、商業ギルドをあとにした。


 抽選会を開催できるといいな。




 【虹の翼】邸に戻って参りました。


 久し振りに皆で夜ご飯にする。

 今夜はミニサラダ、コーンスープ、海老グラタン、バターロール。


「やっぱり美味しいっグラタン!」


 皆大好きグラタンだよ!レーネお姉さんも大喜び!

 前に出した時も大好評だったもんね。そして私も大好物なんだ♪



 食事が終わり、抽選会についてと本日を含む5日後に再訪する旨を告げ、そろそろお暇する時間となった。私達は荊棘ドームちゃんのテントに戻る。


「食事とても美味しかったよ。いつも提供してもらって悪いね」

「だいじょぶ」

「ありがとう。あと、転移の件なんだけれどさ。やっぱり祭りまでウチの邸を使えばいいと思う。来月末まで余程の事がない限り出かけないしね」

「いいの?」

「もちろん」

「じゃあ、転移、しゅゆ。手紙、入えゆね」

「わかった。取り敢えず5日後に」

「あい。よよちく、おねだい、しましゅ」


 お祭りの間はローザお姉さん達から転移するための部屋を提供してもらえることになった。

 お出かけ予定がないならお言葉に甘えちゃおうかな。ありがとう、ローザお姉さん。

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