第94話 幼児、今度はジュンジになる
眷属の名付けから数日経った。
その間無限収納のフォルダ整理をしたり、コテージのプライベートビーチで遊んだり、鳳蝶丸にとある製品の魔道具をお願いしたりしていた。
それから朝宮家では、新しい仲間が増えた時に南の島でバーベキュー大会を開催すると決めました!
と言う事で、早速転移の門戸で南の島に移動。
色々なものをたくさん用意して、レーヴァにコンロやビールサーバーの使い方を覚えてもらいつつ、それぞれ自分の好きなものを食べまくりました。
食べ物はもちろんのこと、酒の美味さに感動した!とレーヴァから感謝された。
喜んでもらえて嬉しい!
ちなみに、彼はビール好きの模様。
色んな種類のビール樽を取り付けて、途中在庫が足りなくなって複写するくらい消費していたよ。
南の島では恒例の結界滑り台や砂遊び!
そして、今回新しい遊びを考案しました。
それは………。
「ッキャー!」
楽しくて楽しくてキャッキャと笑ってしまう。
「もったい、しゅゆ!」
「よし。次は俺だ」
結界内にいる状態で私達を排除にする。
ッパイーーーン!
結界外に勢いよく飛ばされる。
そう、結界おはじきです!
3人の誰かに抱っこしてもらい、一緒に結界からはじき出される遊び。
海に落ちる瞬間の、お腹がヒュンってなる感じが何かのアトラクションみたいでめちゃくちゃ楽しかった。
海に落ちては飛ばされるを繰り返す。従者達も私の遊びに付き合って一緒にッパイーーーンと飛びまくってくれた。
何度かに1回現在のキングに出くわす。
おお!まだ若い個体だね。頑張れ、若者よ!
私達が出す水音に警戒して近付くけれど、気配完全遮断にしてるので襲われることは無かった。
夜は布団敷いて皆で横になる。
満天の星空と波の音。
初めて来た時は独りぼっちだったけれど、今は鳳蝶丸もミスティルもレーヴァもいる。
そしてきっとこれからも家族が増えるのだろう。
南の島の眺める景色が孤独から幸せにどんどん変わっていく。
何だか不思議に感じながら、私だけ眠りにつくのだった。
「今日、町、あしょび、行く」
「わかった」
「俺が抱っこするよ。おいで、姫」
「うん」
翌日はデリモアナ観光するよ!
レーヴァ抱っこでホテルを出る。コテージの鍵はフロントに預け、朝早く出発した。
「あれが宮殿だよ」
丘の上に、壁が真っ白で屋根が濃いコバルトブルーの宮殿が建っている。3階建てくらいかな?横に広くて大きな美しい建築物だった。
私達は今、海岸近くの小高い場所に建つ教会の屋根に座っていた。
ここからはマカマカの全体図が見られる。もちろん私の地図でも確認できるけれど、肉眼で見たいとおねだりした。
宮殿周辺の建物は立派なものが多く、岩漿山に近付くほど小さな建物になって行く。
こう見ると、コアコアは観光リゾート地。マカマカは国民の居住区って感じかな?まだじっくり観光していないのではっきりとはわからないけれど。
「あの辺りに商店街がある。行ってみるか?」
「うん!」
そろそろ行こうかと
教会の周辺は森。生えている木は幹も太く、背も高い迫力のある樹木だった。
ハロハロの入口付近で見たなと思って鑑定すると、オッコソルトと出る。
「オッコ、ショユト」
「ああ、この木はオッコソルトだよ」
ゆっくりと歩いているとカーンカーン、トントントン、カンカン、ギゴギゴと言う様々な音が聞こえてくる。
「この辺りは木こりや大工、家具職人が多いんだ」
そう言って作業現場が見える場所で立ち止まる。屈強な男性達が太い幹を切り分けているところだった。
「あ!あえ、おにょ」
「ああ。岩漿山でドロップするマカマカの斧だね。あっちはマカマカの鋸」
歩きながら、時々立ち止まっては作業現場を見せてくれるレーヴァ。
私はワクワクしながら、アレは何?アレは何?と聞いていた。
「姫、楽しい?」
「うん!」
今度は家具職人の作業所らしい。
壁のない小屋のような屋根の下で、職人さんたちが何かをしている。よく見ると、彫刻刀で浮き彫りをしているところだった。
「しゅごい!」
パチパチと手を叩く。
すると、筋肉ムキムキの男性がこちらにやって来る。何故か会ったことがあるような気がしてちょっと不思議な感覚。
厳ついけれどとても優しそうな男性だった。
「こんにちは、嬢ちゃん」
「こんにちは」
「あれ、近くで見てみるかい?」
「いいの?」
「おう、いいぞ。って、突然すまん。あんまり可愛いんで声かけちまった。大丈夫か?」
「ええ。大丈夫ですよ」
地図では青点だし、悪意が無いことがわかるから了承したんだろうけれど、ミスティルは私を可愛いと言う人に甘い傾向がある。
嬉しい、でも恥ずかしいよ。
私達は遠慮なく作業場に入らせてもらうことにした。
「これは食器棚になる。ここは浮き彫りで、モチーフはこの国の国旗にもあるプルメリアの花だ」
「プユユ…メイア」
言いにくい、そして言えなかった!
「ちえいねえ」
誤魔化してみる。
「女の子は可愛いなあ。おじちゃんの子供達は男なんだ。もういっちょ前になって冒険者やっているよ」
最初に声をかけてくれた人が破顔して言った。
「俺の子も男だ。女の子は可愛いね。俺も女の子供が欲しかったなぁ」
「ウチんトコは女だ。最近父ちゃんウザイ、何て言われて泣きそうだよ」
「あの子が嫁に行くことになったら、お前大泣きしそうだよな」
「うっせーな!」
「赤子の前で大声は止めろ。おじちゃんの作品は武器用の飾り棚だよ。モチーフはドラゴンで自信作だ」
職人さんが一斉に話し出してちょっと驚く。
「あんたら!何サボってんのさ!働き……ん?あらまっ可愛い子。どうしたの?」
「俺達の浮き彫りを凄いって言ってくれてな。見学してもらっているんだよ」
「そうなの〜ありがとね。うちの製品気に入った?」
「うん」
「出来上がった物があるけど見るかい?」
「いいの?」
「もちろんさ。はい、あんたらは仕事仕事!」
「お、おう………」
「お前のカカアはおっかねえな」
「なんだい!昼飯抜くよ!」
うへえ〜い、と言いながら皆さん持ち場に戻って行く。
「さあて。こんにちは」
「こんにちは」
「ここは家具工房よ。ここの主人はさっき一番喋っていたデッカイので、名はカライカライ。あたしはティナティナ。ここの女将だよ。さ、商品はこっちにあるから来てくれるかい?もし気に入ったら中心街に卸している店があるから買っとくれな」
「あいっ。わかた」
大きめな倉庫に案内されて、衣装箪笥や化粧机、文机など沢山見せてもらった。
ん?
別室の扉が空いていて、豪奢な食器棚?が見える。
「ちえいよ」
私が指差すと、女性がごめんね、と言いながら扉を閉めた。
とある高貴な方からの注文で、デザインを真似されたり少しでも傷がつくといけないから秘密なんだって。
特注の商品だし仕方がないよね。
ゆっくり見られなかったけれど、透かし彫りや浮き彫りが美しかった。
もっと近くで見たかったな、残念。
その部屋以外の作品を見せてもらって、お礼にダージリンの茶葉とパウンドケーキセットを3つほど渡すと大層喜んでくれた。
「こんな豪華なもの貴族様になった気分だよ。ハッ!貴女様はお貴族様?!」
「ちあうよ」
鳳蝶丸に、商業ギルドカードを提示して旅の行商人だと説明してもらう。
「ちょっ!優秀商じゃないか!噂には聞いていたけれど、初めてこのカードを見るよ!」
何だか慌て出す。
「貴族ではありません。行商人なので美味しい茶菓子を持ち合わせているのです」
「その菓子は我が姫からお嬢さんへの礼だよ。遠慮なくいただくと良い。食べなきゃ損する美味さだからさ」
「ひ、姫!」
「ちあう」
「あー。こいつは女性全般を姫呼びするから気にすんな」
「全般とは失礼だね。俺が姫と呼ぶのは我が姫だけだよ」
「ちあう」
私達の会話が混戦模様。
プッ!
ティナティナさんが吹き出した。
「驚くほど綺麗な兄さん達だから取っ付きにくいなぁって思ってたけど、そうでもないんだね」
ひとしきり笑ってから私が渡したものを大事そうに抱える。
「これ、ありがとう」
「あい。おじたん、皆、食べゆ」
「もちろん!皆で食べるよ」
帰り際、外で作業している皆にお礼を言って、また中心部に向かうのだった。
大通り広場はとても賑わっていた。
真ん中に大きな噴水があって、大きな彫像から水が吹き出している。
「あれはこの国の神話をモチーフにしているんですよ」
雄々しい男性が短めの剣を持ち、大きな鳥と戦っている。
大きな鳥の嘴と、剣の根本から勢いよく水が流れ、貯水皿に落ちてゆく。
変だな~、変だな~。見た事あるなぁ~。
何だか記憶にあるなぁ~、知っているなぁ~、何だろうなぁ~。
「あ!鳳蝶まゆ、シュジャク!」
「はい、正解」
確か、スザクと鳳蝶丸が戦った時の大噴火で隆起してこの島が出来たって言っていたはず。
「鳳蝶まゆ、逞ちい」
当の本人を見ると、苦虫を潰したような顔をしていた。神話の本人が隣にいるって不思議。
「この公園から城方向に行けば行くほど高級店が立ち並んで、岩漿山方面に行けば行くほど庶民向け価格のお店になるんだよ」
「冒険者ギルドは岩漿山近くにあって、商業ギルドはあの通りを少し入ったところだな」
商業ギルドは高級店方面の通りにあるらしい。
「家具屋しゃん、どっち?」
「そう言えば店名聞いてなかったな」
「わしゅえたね」
鳳蝶丸が苦笑する。
「また明日行って聞けば良いのでは?」
「そうしよう、姫」
「わかた」
その後は、お店のあちこちを周り、量り売りしているお菓子屋さんで買い物したり、木の実屋さんで味見しながら数種類のナッツを買ったり、八百屋さんを覗いたりした。
あと屋台でお肉やお魚、果物を買ってお昼ご飯にした。
のんびり観光って楽しいね!
高級店のある通りで、美しい群青色の花瓶や飾り皿が置いてある陶器屋と書かれたお店を見つけた。
「これは瓦と同じ製法で作られているみたいだよ。あの青くないものもオッコソルトを使っているんだ」
レーヴァ説明によると、マカマカクレイにオッコソルトの果実汁を混ぜて練ると青くなるんだって。化学反応みたいな感じ?
釉薬に混ぜて焼くと透明だけれど塩分に強いお皿になるらしい。
すごいなオッコソルト。大活躍だね!
「ちゅくってゆ、見てみたい」
「確か岩漿山近くに色々な工房があったと思うよ」
「行ってみますか?」
「うん」
レーヴァの案内で岩漿山近くの工房に連れて行ってもらうことになった。
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