第93話 薔薇と執事とオネエ様

 さて、お姉さん関係は終了。次は清浄ダンジョン関係かな。

 思いつくものはウル様フォルダに大分入れたけれど、ちょっと気がかりだったアレを作ろうと思う。


 そう、冒険者や旅人が使える持ち歩き用のトイレ!

 考えたんだけれど、もうトイレに特化した清浄カードで良いんじゃないかと思ったんだ。


 だから、声に出して言うのは憚られるアレやコレやソレや臭いを含む、発動場所中心に直径2m以内清浄を魔石のカードに付与して複写。

 鳳蝶丸に使用回数1回の魔法陣を定着させてもらった。

 魔力を1回分強充填。

 本当は誰かに試して欲しいけれど、何しろ伝説の武器達はトイレに行かないので仕方なく自分で試してみる。



 ※※※乙女の秘密※※※



 うん。

 1回使ったらちゃんと消えたし問題ない。



 って事で、体や衣服を綺麗にするのと同じトイレ用の清浄カードを作成して完了。


 カード表面には[髪・体用]、[トイレ用]と分かりやすく表記。ついでにカードを緑と青に色分けしてみたよ。文字が読めない人でも、1回誰かに教えてもらえれば色で解るかなと思って。

 もちろんトイレ用も使用回数100、200、300、400、500回分を作る。ただし、トイレ用は6ヵ月使わないと消滅は抜いてもらった。冒険中に消えたら困るからね。


 ちなみに、なぜ髪・体用に6ヵ月使わないと消滅にしたかと言うと、体を清潔にする事があまり重視されていない世界なので使わないと消滅にして、勿体ないから使用する方向に持っていきたいからです。



 カードが出来上がったのでウル様共有フォルダに入れ完了!

 清浄ダンジョン計画は進んでいるかな?楽しみ!




 その後は外にテーブルと椅子を出して、美しい薔薇を眺めながら従者3人も一緒にティータイム。

 本日は緑茶と芋ようかんです。芋ようかん大好きなんだ!


「素朴で美味いな」

「これは何て言うんだい?」

「いもようかん」

「芋羊羹?」

「おいも、ちゅかってゆ」

「おいも…芋ですね?」

「うん」

「芋でこんな美味いものが作れるのか」

「おいも、おいちい、お菓子、おかじゅ、一杯あゆ!」

「主の国は美味しい食べ物や飲み物が沢山ありますね?」

「うん、しょうよ」

「姫のそばにいると美味しいものが沢山食べられそうだ」

「まかしぇて!」



 ふんふんふーん♪ふんふんふーん♪ふんふんふんふんふんふんふーん♪



 ちょっと得意になって鼻歌を歌うと、荊棘ドームちゃんがそれに合わせてサワサワと揺れた。

 あ、そうだ。荊棘ちゃんに栄養をあげよう。いつもの堆肥と栄養剤を出す。


「イバヤちゃん、どうじょ」



 フルフルフル〜♪



 喜びながら(たぶん)、いそいそと堆肥を運ぶ荊棘ちゃん達。


「いつもありがとうございます、主。良かったですね?イバヤ」



 フルフルフル〜♪



 うんうん良かったイバヤちゃん…………ん?イバヤ?

 イバヤは私が舌足らずで言えないだけなのに、ミスティルまで何故イバヤ?


「イバヤ?」

「はい」

「わたち、言えない。ミシュチユ、イバヤ?」

「?……ああ!何故イバヤかと言うことですね?この子達は私の眷属ですが、主に呼ばれているうちに、イバヤを名と受け入れたようで、わたしもそう呼んでいます」


 え、ええ!

 私、名前つけちゃったの?


「ミシュチユ、けんじょく、わたち、名前、ちゅけゆ、テイムちた?だいじょぶ?」

「テイム、ですか?ああ、大丈夫ですよ。私達の眷属は私達以外の者にテイム出来ません。ましてや貴女はわたしの主です。名付けても問題ありません」


 異世界小説界隈では、魔獣や精霊のテイムは名付けることが定番(かな?)なので焦ったよ!

 特別な存在の特別な眷属だもんね?テイムじゃなくて良かった。



 すると、ブワッと火焔鳥さんが現れた。


「羨ましい!羨ましいです!ワタクシめも名をいただきとうございます!」


 え?いいのかな?

 チラリとレーヴァを見ると、ニッコニコで頷いた。


「俺達は、眷属に名を付けると言う発想がなかったから、ずっとそのままだったんだよ。もし良かったら名付けてあげてくれるかい?」

「うん、いいよ」


 実は初めて遭遇した時頭に2つ浮かんだことがあるんだよね。1つは火の鳥フェニックス。もう1つは南方を司る神獣朱雀すざく


 火焔鳥さんの喋り方って丁寧で何だか執事さんみたいなんだよね。だったら火の鳥フェニックスかなあってちょっと思ったんだけれど。でもやっぱり…。


「うーん、うーん、」


 迷いに迷って、レーヴァの掌に文字を書く。


「ス、ザ、ク?スザク?」

「うん。しゅじゃくちゃん、どう?」

「いいね、神秘的で良い響きだ。お前はどう?」

「ええ、ええ、とても気に入りました!ありがとうございます。ワタクシ、今日からスザクと名乗ることにいたします」


 良かった。喜んでくれたみたい。


 そういえば、2人に眷属がいるってことは鳳蝶丸には?と疑問に思い聞いてみた。

 答えはもちろんいるとのこと。

 今まで会ったことがないって言ったら、何故かミスティルとレーヴァに苦笑される。


「???」

「俺にも眷属がいるにはいるが、普段は好きにさせている。前回会ったのは……1700年くらい前か?呼べば来る」


 えええ!

 好きなだけ自由にさせている鳳蝶丸って、大らかなの?どうなの?


「液体のあるところならばどこにでも来られる。良し、久し振りに呼んでみるか」


 久し振りすぎやしませんか?


 鳳蝶丸は私の驚きはお構いなしに、スープボウルを出し緑茶を注ぐ。

 パチンと指を弾くとスープボウルの中が段々盛り上がり、やがて緑茶の亀になった。



「ちょっと〜!今いいところだったのにぃ!ん?あら、鳳蝶丸様。随分と久し振りじゃない?」


 野太い声の亀さんだった。


「おう、久し振りだな」

「今日はどうした…………あら?あらあらあら?まあ!可愛らしい娘じゃないのっ。鳳蝶丸様との絆を感じるわ。とうとう出会ったのね」

「こんにちは、初めまちて」

「こんにちはっ。ご挨拶出来て偉いわね。初めまして、あたくし鳳蝶丸様に使える水の精霊よ。これでも高位なの。よろしくね」

「俺の主だ」

「よよちく、おねだい、しましゅ」


 緑茶の亀さんがヒレで抱きかかえるような仕草をして体を左右に振る。


「かあ〜わいいわぁ。こんなに可愛い主様なら、あたくしも頻繁に顔を出すことにするわ」

「頼む」

「ええ。お任せをっ。ところで何の話をしていたの?」


 キョロキョロして、他の眷属達を眺めた。


「姫が俺の眷属に名を与えてくださったところだよ」

「あら、レーヴァ様!今日もいい男ねぇ。ところで、名を?え?名をいただいたの?」

「はい。ワタクシはスザクと言う名をいただきました。エターナルローズはイバヤだそうです」

「ああん、羨ましいわ!あたくしにも名をいただけないかしら」

「うん、いいよ」


 緑茶色の亀さんだから、エメラルドはどうだろう?

 ちょっと長いかな?

 イバヤちゃん、スザクさんだから3文字シリーズがいいかも。

 エ・メ・………エメルはどうだろう?

 エメルって神話に出てくる英雄の妻だったような……?まあ、エメラルドのエメルってことで。



 鳳蝶丸の掌に文字を書きながら名を伝える。


「エ・メ?」

「エメユ」

「エ・メ・ル?エメルか?」

「エメル、エメルね?素敵な名前!主様、ありがとう存じます」


 エメルがウットリとしてお礼を言ってくれた。


「良かったな、エメル」

「ええ、とても嬉しいわ。これからはちょくちょく顔を出すし、鳳蝶丸様からも私を呼んで頂戴」


 ヒレをパタパタさせる亀さん可愛いです。


「それで、今更だけどあたくしを呼んだご用事は何かしら?」

「主にお前を紹介したかっただけだ」

「あら、そうなの?」

「もう行っていいぞ」

「わかったわ」


 緑茶の緑が段々透明になって、ただのお湯になる。


「主様の飲み物って美味しいわね?御馳走様。じゃ、あたくしはこれで。またお会いしましょ♪」



 ザプン!



 お湯がイルカに変形して飛び上がり、器の底に消えて行く。残ったのは空のスープボウルだった。

 鳳蝶丸の眷属は賑やかなおネエ様なのね。


「では、ワタクシめもこれにて」


 スザクさんも姿を消す。


 フルフルフル


 イバヤちゃんも土に消え、私達4人が残った。



「五月蠅かったろう?すまんな」

「ううん、とても、楽ちかた!」


 両手をブンブン振って、とても楽しかったアピールをする。

 だってまた皆と会いたいからね!

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