第90話 やべータイプの武器が仲間入り!
ミスティル抱っこのまま奥の道を抜けると、物凄く大きな火口だった。
空が見えて、今は昼間なんだな、とわかる。
火山岩や脆そうな土の間からは水蒸気か火山ガスが拭き上げ、火口底には灼熱のマグマが煮えたぎっているのが見えた。
あれ?
やっぱりここに直接
「気をつけて」
「あいっ」
ミスティルが私を地面に降ろした。
私達には結界3を既に張ってある。二人はこれで充分だしこのままが良いとの事なので、私だけ更に結界2をかける。
ズズズズズ…
私が
ザバァ!
ベタ、ベタ、ベタ………
粘度のあるマグマが滴りながら現れたのは、それはそれは大きな紅蓮の炎に包まれた美しい炎の鳥だった。
「この地に人が足を踏み入れ…………ん?」
炎の鳥は私達を見て、一瞬キョトンとした。
「鳳蝶丸様とミスティル様ではありませんか。お久しゅうございます」
「よう、久し振りだな」
「お元気でしたか?」
「相変わらずにございます。この地にヒトが来るとは初めてだと思っておりましたが、お二人ならば納得です。レー………」
「待った!今日は試練にやって来た」
「試練?!」
鳳蝶丸が掻い摘んで説明をする。
「左様にございますか。これはこれはウルトラウスオルコトヌスジリアス神の神子様。挨拶が遅れ申し訳ございません。初めてお目にかかります。ワタクシ種族は火焔鳥にございます。と、言いましても、ワタクシ1羽しかおりませんが。名はございません。どうぞよしなに………あ、そういえばワタクシの、」
「あー、悪いが先に進んでいいか?」
「はっ!そうでした。大変失礼いたしました」
「取り敢えず、お嬢の従者である俺達が戦うことになる」
「いえいえ、そこは割愛でしょう。既に3221年前にボッコボコにされましたので」
「いやいや、もう一度腕試しをしようぜ」
「そんなことをしたら、また岩漿山が大噴火してしまいます」
ちょ!
それは駄目!
しかもまたって言ったよ。またって!
ミスティル解説によると、この国の2つの島が大きく隆起したのは、3221年前に火焔鳥さんと鳳蝶丸が楽しく戦ったかららしい。
何その壮大なスケール。
「噴火、やめ!鳳蝶まゆ、しぇんとう、ちない」
「ん?」
「火焔鳥しゃん、たたかう、ちない、ダイジョブ?」
「戦わなくても大丈夫ですか?と、聞いています」
ミスティル、通訳ありがとう。
「ええ。ワタクシは既に鳳蝶丸様を強者と認めており、その主たる貴女様も然りにございます。但し、貴女様自身にも試練をお受けいただかなければなりません」
私が戦うの?
噴火しないようにしなくちゃ。
どうしよう。
火焔鳥さんを結界に閉じ込めてお水を満たせば良いの?
ゾゾゾ…
「今、良からぬことを考えましたか?降参!降参いたしますっ」
まだ何も言っていないのに。
火焔鳥さんの話だと、ここでの試練はウルトラウスオルコトヌスジリアス神がお決めになった理で、火焔鳥さんが強者と認め、且つ自力で伝説の武器を手に入れると言うこと。
既に鳳蝶丸が認められ、その主である私もクリアと言うことなので、後は私が自力で見つけるだけ。
「わかた。わたち、しゃがしゅ、でんしぇちゅのぶち」
「?」
「お嬢は、伝説の武器を自力で探す!と、言っている」
鳳蝶丸も通訳ありがとう。
「鳳蝶まゆ、ミシュチユ、、火焔鳥しゃん、ゆっくい、ちてゆ」
戦っちゃダメだよ?
たぶん、伝説の武器はマグマの中。
地図を確認すると、マグマの真ん中に青くキラッキラ輝く?マークが浮かんでいるからね。
念の為、自分にもう一重の結界3を張る。
「よち、行くじょ!」
フンスフンスと鼻息荒く、短い両腕をブンブンさせる。
そして
「何と言う胆力!」
火焔鳥さんの言葉を背に受けながら。
ドップン
マグマに突入。
結界ちゃんは熱くもならないしビクともしない。
良かった。信じてたよ、我が結界ちゃん!
グググっと下に下がって行く。
マグマは粘度があるからかなり重く、下降する
周りはもちろん真っ赤……いや、濃いオレンジ色。
普通の人が入ったら一溜まりもないよね。
ウル様は勇者に厳しすぎる。超スパルタだよ!
ゆっくりと下降すると、やがてスポンと古代遺跡の様な部屋に抜けた。
見上げると天井がマグマで、光源が無いのに明るい不思議な空間だった。
祭壇らしき場所には展示台があり、そこには熱した鋼の様に赤く、チロチロと炎が上がる大振りの剣が鎮座している。
「やあ、姫。ずっと会いたかったよ」
咄嗟に目を瞑る。
瞼の裏がピカーッと明るくなり、収まってから目を開く。
「やあ、初めまして我が姫。俺はレーヴァ。炎の剣だよ」
や、やべーのが来た。
第一印象はコレだった。
何というか………ヤバイほどセクスィー。
甘い顔立ち、赤い瞳、甘く優しい声色。臙脂色の毛先を遊ばせた少しクセ毛の無造作ヘアー。襟足だけ長めで1つに結いている。
そして、鳳蝶丸やミスティルより随分と大人な雰囲気だった。
ミスティルよりも背が低いかな。体型は程よく筋肉のついた細マッチョ。
服を少しはだけさせ、胸の筋肉がチラリと見えている。
そして姫呼び。
日本にいた頃の私なら、照れてしまって近づかないタイプの男性だった。
驚いて見つめていたら、バチコーン!と綺麗にウインクされる。
「俺に見惚れているのかい?嬉しいよ、姫」
「………ううん。おどよいてゆ」
「うん?」
「おどよいて、いゆ」
「おど…驚いている?」
「あい」
「そう」
レーヴァは余裕の笑みを浮かべていた。
うん、どうしたら良いのか分からないので、とにかく話を進めよう。
私の家族になる場合にはルールがあること。
鳳蝶丸、ミスティルにも説明した内容と同じ話をする。
そして、強制ではないけれど、その条件で良ければぜひ私の仲間になって欲しいとお願いした。
「もちろん承諾するよ。姫に興味があるし、楽しそうだしね」
「一緒、いてくえゆ?」
「喜んで」
レーヴァが跪き胸に手を当て、私の瞳を見つめる。
私が手から神力を放出すると、淡く優しい光が部屋中に満ちた。
「ウルトラウスオルコトヌスジリアス神に造られし伝説の武器が一振り、レーヴァ。生涯、半神半人である御神子の従者であることをここに誓う」
光が収まったその時、2人と同じようにレーヴァと私の絆のような繋がりを感じた。
「あにあと、イェ、ネェ、………イェーバ。よよちく、おねだい、しましゅ」
「俺の名は言いにくいかな?可愛いね。こちらこそよろしく。我が姫」
そして私を抱き上げ、嬉しそうに笑う。
「やっと会えたね、姫」
「ひめ、ちあう」
「いいや、俺にとって君は大切なお姫様だよ」
うん。
嬉しい、嬉しいけれど、恥ずかしいのほうが上!
「これからも姫って呼んでいい?」
「ひめ、ちあう」
「俺はそう呼びたいな?」
甘い雰囲気を漂わせ、普通の女性だったら失神しそうな笑みを浮かべる。
ただ、如何せん私は幼児。恥ずかしいけれど、トキメキはない。
それでもセクスィー過多で、私に姫呼びの承諾を要請してくる。
「いいよね?姫?」
「……………あい」
スンッて真顔になっちゃう。
思わず離れた場所にいる鳳蝶丸とミスティルに結界2をかけて、2人を呼んだ。
「鳳蝶まゆー!ミシュチユー!抱っこー!」
ドップン
2人が直ぐに神域にやって来る。
そして、ミスティルがレーヴァの手から私を奪った。
「主に何かしました?」
「してないよ?」
「レーヴァは行動と言動が妖しいからな」
「ん?褒め言葉?」
しれっと言葉を躱し、肩をすくめるレーヴァ。
困るくらいのセクシーな炎の剣。
でも、絆で感じるのは彼の性質が誠実だと言うこと。
どうであれ、新しい家族になってくれて嬉しい!
「かじょくよ!」
「嬉しいね。これからはずっと、かたわらに置いて欲しい」
「あい。よよちく」
新しい従者、ううん、家族のレーヴァを無事迎え入れることが出来たのだった。
良かった!
さあ、外に出ようと話をしていると、
ズボッ!
天井マグマから、大きな火焔鳥さんの顔だけが現れた。
「ワタクシも行きますよ」
「うん?まあいいよ。お前は俺の眷属だからね」
「おっちい?」
「大丈夫です。小さく変化も出来ますから」
そう言うと、真っ赤な羽の美しい小鳥になりレーヴァの肩に止まる。
シジュウカラくらいの大きさで、尾が長く、羽が艶々していた。
「わあ!ちえい!」
「ありがとう存じます」
「あちゅい?」
「いいえ。体温は調節しておりますので何処かに触れても問題ありません。通常はお側におりませんがいつでも馳せ参じます」
「火焔鳥は俺の眷属なんだよ。これからは頻繁に会うと思う」
「しょうなんだ。よよちく」
「はい。よろしくお願いいたします」
外からは火口に入れないけれど、中からは外に出られると言う事で、気配遮断して上昇する。
先に火焔鳥さんが飛び立って先導してくれた。
火焔鳥さんが通るとマグマが綺麗に割れ、人が通れる状態になる。私達はそこから
今度はマカマカの海岸に降り立つ。
ダンジョン生活(?)長かったなあ。どれくらいいたんだろう。
とにかく町なかに移動しようか、と歩き始めると、火焔鳥さんは「それでは」と言ってスゥッと姿を消した。
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