第61話 びっくりした?でも詳細は秘密!
そこへ慌ててマッカダンさんとエレオノールさんがやって来た。
「ごめん、集合時間だったか?」
「ううん、まだよ」
他の商業ギルドのメンバーはまだ他の仕事があるのでエレオノールさん1名だけれど、せっかく集まったので宿泊や休憩の話と制服の話をする。
「え!アタシ達もその制服着ていいの?やった!」
「さっき見た時、格好いいって思った」
「あたしが着られる制服ってある?あるならぜひ着てみたい」
レーネお姉さん、ミムミムお姉さん、リンダお姉さんが口々に言っていた。
「その制服の形は初めて見たけどなかなか良いじゃない」
「この胸の絵は何だ?」
ローザお姉さんとマッカダンさんが私達が来ているギャルソンユニフォームをまじまじと眺めている。
「これはお嬢が店を開く時名乗る、言わば店名だ」
「サクラフブキと読みます。まるで吹雪のごとく風に舞う桜の花びらという意味です」
「あの桜が舞う美しい光景のことですのね?とても素敵ですわ」
エクレールお姉さん、ごめんなさい。
実は名奉行のキンさん…うん、説明できないので言いませんが。
「それに、このデザイン。月と桜でしょうか?とても美しい。この部分が文字ですか?」
「あい」
「
「あにあと」
「ところで…どちらの国の文字でしょうか?」
「ひみちゅ」
エレオノールさんの問いに、必殺!幼児の秘密を炸裂させましたよ。
そして、何も聞かなかったかのように話を続けるのだ。
「皆しゃん、服、ちてくえゆ?」
「もちろん!」
マッカダンさんが爽やかな笑顔で応えると、他の皆さんもにこやかに頷いてくれた。
と、言う事で、お着替え用テントを案内する。
女性はミスティルと私、男性は鳳蝶丸が説明する事になった。
「テント、しょとに音、聞こえない。安心しゅゆ」
入って、と言ってまず私とミスティルが、続いてローザお姉さん達が入ってくる。
そしてポカンと部屋を眺め固まっていた。
………………………………………………………………。
「び、びっくりした!この部屋ゆきちゃんのテントと同じ造りだね」
「泊まって良いんですの?本当に良いんですの?」
「あい、もちろん、泊まって。こっち、ハイジしゃん、もう1個、ローザおねしゃん………」
振り向くとローザお姉さんとエクレールお姉さん以外口をポカーンと開けて固まったままだった。
あ、そうか。2人のお姉さんは私のテント体験済みだけれど、皆初めてだもんね。
「ゆき様。こ、こ、このテントは何ですか?」
エレオノールさんがようやく声を出した。
「このテントは主の錬金魔法で作りました」
ミスティルが説明してくれる。
「空間魔法に錬金魔法…ゆき様は何者……、いえ。何でもありません」
「まあ、普通ありえないよね。これを1人の赤ちゃんが作ったんだよ?」
「うん。ありえない」
「アタシ、すんごい人と知り合いになったかも」
エレオノールさんが弱々しく首を振った。
リンダお姉さん、ミムミムお姉さん、レーネお姉さんがうんうんと頷いている。
【虹の翼】の皆さんとエレオノールさんは流石に立ち直りが早いね。
うん、そうだよね。自分でもわかってる。でも、作り始めるとあれもこれもってなっちゃうの。
そして、皆に使って欲しい!って思っちゃうんだ。
自重しないのは自分で自分の身が守れるし、何よりも鳳蝶丸とミスティルの存在が大きい。
心の支えがあるから安心して爆走しちゃうんだ。ウル様からダメ出しもないし、もういいかなって。
時間がないので未だにポカンとしたままのハイジさんとクララさんを引きずってお部屋の説明を続ける。
最後にシャワールームの説明が終わるとレーネお姉さんが不思議そうに言った。
「でも、入る時にクリーンかかるから体を洗う事は必要ないんじゃない?」
他の人たちも頷いている。
「クイーン、綺麗なる、でも、ケアちない」
「ケア?」
「クリーンで確かに汚れは落ちますが、ただそれだけです。肌や髪には保湿や保護が必要なのです。シャンプーやリンスには髪の絡みを解したり保湿成分を補ったりしますし、ボディソープも肌に保湿成分を与えたりします。その後にこのスキンケアやヘアケアを行えば…」
「アナタやゆきちゃんみたいな肌と髪になれる?」
ミスティルは肌も白くきめ細かい、髪もサラサラで美しい。
今の私は…ムゥ様と桃様を足して割った感じなので、自分で言うのもナンだけど綺麗だと思う。
私達は神様達が与えて下さった体なので同じ肌や髪になるかはちょっとわからないけれど、お姉さん達は綺麗だし可愛いのでスキンケアやヘアケアをすれば更に輝きが増すはず。
すると、私や鳳蝶丸以外に笑顔を見せないミスティルがニッコリ笑った。
「主ほど美しくなると思えませんが、今よりは艶めくかと。それぞれそれなりに」
ちょっと言葉に棘があるよ?ミスティルさん?
ただ、ミスティルの笑顔にポーっとなった皆さんの耳には届いてなかったみたい。
良かった…良かったで良いの?
とりあえず一通りの説明が終わった。
わからないことがあれば声をかけて?と言うことで外に出た。
男性陣はもう外に出ていてタープテントの椅子に座っていた。心なしかぐったりしているけれどどうしたんだろう?
「お待たしぇ……」
「なあ、あれなに?あのテント!」
マッカダンさんがテーブルに突っ伏しながら言った。
「俺、驚きすぎてテントを飛び出しちまったよ。ピーター何て腰抜かしてたし」
「だよね。ハイジとクララなんて未だに戻って来ていないしさ」
レーネお姉さんがハイジの目元でヒラヒラと手を振って苦笑した。
「ほら、しっかりしな!」
ローザお姉さんがバンバン!と2人の背中を叩くと、ハッ!として瞬きをしていた。
「時には理解できないことや不思議な出来事が起こる。その度に魂を飛ばしてたら身が持たないよ。それに遠征先の敵前で体が止まっちまったらその先は死だ。冒険者として生き残り、困難を乗り越え、ランクアップしたいならどんな時でも冷静に判断出来るよう精進しな」
「は、はい!ありがとうございます!」
ハイジさん、クララさん、ピーターさんがビシッと姿勢を正した。
さすがローザお姉さん、格好良い!
「まあ、呆けてしまう気持ちはわかるよ」
「あれを何の躊躇もなく無料で貸してくれるんだもんね」
ローザお姉さんとリンダお姉さんが苦笑した。
「アタシは何か心配になって来たよ。ゆきちゃん良い子すぎるもん。借りるのに言うのもナンだけどこんな凄いものを簡単にタダで貸しちゃダメだよ」
「ええ。それにこのような素晴らしい技術を簡単に披露するのは危険だと思いますわ」
「貴族には欲深いヤツがいる。闇深い悪もある。気を付けた方が良い」
レーネお姉さん、エクレールお姉さん、ミムミムお姉さんが心配してくれた。
「ちんぱい、あにあと。わたち、悪いちと、わかゆ」
「本当に危険だと判断するヤツら相手ならば俺らがいる」
「人の子など敵にすらなりません」
私達に悪意があったり利用しようと思っている相手はわかる。
その人たちには手を貸さないので大丈夫だと言う事を皆に伝える。
「まあ、詳しいことは知らないけどあの森の中心にいたんだもんね」
「スタンピードの最中、あの場所にいた人達だしね」
マッカダンさんとローザお姉さんが乾いた笑いを漏らす。
何となく納得している風な調査隊の面々。
私には鳳蝶丸もミスティルもいるし、地図には悪意ある人の表示もされるから大丈夫なんだ。
「しょえは、置いといて、ギユド、皆しゃん、泊まゆ?」
「え…」
「泊まゆ、テント、増やしゅ」
商業ギルド職員さんの分はまだテントを立てていない。
すると、エレオノールさんは物凄く悔しそうな表情で首を横に振った。
「お気遣いありがとうございます。とてもとてもとても魅力的なお話ですが、我ら職員は商業ギルドの業務もありますので宿泊は遠慮させていただきます。ああ……残念でなりません。お肌が…髪が………」
使ってみたいよね、スキンケアやヘアケア用品。
「テントふたちゅ、増やしゅ。着替え、シャワー、自由、ちゅかって」
「え?」
「女性用と男性用に追加でテントを設置しておくから着替えとか風呂に使ってくれ。面倒じゃなければギルドの仕事が終わってから戻って来てもかまわないし、シャワーだけ使って自宅に帰っても良いしな」
「あ、ありがとうございます!他の職員にも伝えておきます!」
エレオノールさん大喜び。
まあ、好きに使ってください。
じゃあ、早速と言う事で皆に制服を支給した。
男性用と女性用それぞれ1つずつテントを追加して、そこに商業ギルド職員さん用の着替えを置いておく。
エレオノールさんには他の職員さんへの説明をお願いした。
皆さんにはサイズが合わない場合錬金で手直しすると伝えて解散。
私はローザお姉さんにお願いして【虹の翼】テントへ連れて行ってもらい、ローザお姉さんとリンダお姉さん、ミムミムお姉さんの制服を手直しながら着替えてもらった。
ローザお姉さんは迫力のあるワガママボディだし、リンダお姉さんは巨人族だし、ミムミムお姉さんはハーフリングなので大幅な手直しが必要なのだ。
あ、レーネお姉さんとマッカダンさんの尻尾問題も解決したよ。
うん、皆さん似合っててカッコ良い!
やっぱりいいよね?ギャルソンユニフォーム。
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