第58話 安くても高級志向?だって好きなんだよ
色々用意していたらもう10時半か。
外に出るとテーブルと椅子が適当な感覚で並べられていた。うん、良い感じ。
タープテントの会議テーブルと椅子を無限収納に戻し、調査隊テント方向に対面する形で簡易テーブルを5つ、その後ろにも2つを置く。
その他に休憩用の机や椅子も用意しているところへ4人が戻って来た。
「おちゅかえ、しゃま、でちた」
タープテントの休憩用テーブルに座ってもらう。
「テーブユ、イシュ、あにあと」
「あんなモンで大丈夫かい?」
「あいっ、良い感じ!」
私が両手を挙げてフリフリすると、4人が笑顔を浮かべてくれた。
「販売、12時。しょの前、味見ちて?」
ここで販売物の説明がてらお昼の食事をしてもらう。
用意したのは、肉巻きおにぎり弁当とお肉たっぷり焼肉サンド弁当。
オレンジジュース、グレープジュース、アップルジュース、水、珈琲(冷・暖)、紅茶(冷・暖)、ビール、赤ワイン。
飲み物は一応材料がこの世界にあるものを選択した。
珈琲は珍しいけれどあるにはあるんだって。紅茶も含め冷たくして飲む習慣は無いらしいけれど、季節が夏の終わりでまだ暑いし、皆が飲まなくても私が飲むからいいのだ。
それらをすぐに出せるよう、ジュースとアイスティーとアイスコーヒーはピッチャー(氷入れ付き)、水は普通のピッチャーに氷をたくさん入れ、暖かい珈琲と紅茶は耐熱ガラスの珈琲ポットに入れてある。
あと、蓋つきのシロップポットにコーヒーミルク、牛乳、ガムシロップ。シュガーポットにお砂糖を用意する。
シロップポットとシュガーポットは形は違うけれど陶器でアンティークなお揃いのものにした。
木製の使い捨てマドラーも再構築したのでポット一式と一緒にテーブルの両端に置き、珈琲と紅茶を選んだ人にご自由にどうぞしてもらう。
ワインは気軽に飲めるライトボディ。すでに12℃くらいに冷やしてある状態を再構築した。
ついでに真鍮製でアンティークなワインパニエを再構築。そのワインパニエにボトルを寝かせ、注文があったらワイングラスに注ぐ予定。
再構築したのは安いお手軽ワインで、澱のあるようなヴィンテージワインじゃないから必要のない物なんだけれど、憧れだったから作っちゃった。
たぶん間違った使い方なので皆は真似しないでね!テヘッ!
「ビーユ、ワイン以外、何飲む?」
そう聞くと何にするか悩んでいたので、あとで全種類好きなだけ飲んでも問題ないと言ったらホッとした顔でそれぞれが選んでいた。
マッカダンさんとピーターさんはオレンジジュース、ハイジさんはグレープジュース、クララさんは暖かい紅茶。
どちらのお弁当を食べるか聞いたら、味を知っておく為2種類とも食べていいかと聞かれたのでどちらも用意する。
「う、う、う、美味ーい!」
「美味しっ」
「どちらも捨てがたいくらい美味しい。この肉に巻かれているのはご飯?初めて食べたけれどとても美味しいです」
「俺、こんなに冷たくて甘くておいしい果実水初めてです。こんなに美味いメシも初めて!」
マッカダンさん、ハイジさん、クララさん、ピーターさんが「冷たい果実水なんて贅沢」など感想を言い合いながら美味しく食べてくれた。良かった。
「この黄色いの何だ?」
「やしゃい、ちゅけて、食べゆ」
私がブロッコリーを指して次にマヨネーズを指すと「こうか?」と言ってマッカダンさんが真似をする。
「ん、んーーーーーーー!」
「ど、どうしたの?」
「大丈夫?」
「うんまい!俺、野菜って少し苦手なんだけれどこれならガッツリ食べられる!」
そう言われてハイジさん、クララさん、ピーターさんも野菜にマヨネーズをつけて食べる。
「本当、美味しい。いくらでも食べられそう」
「俺も野菜は好きじゃないが、これなら沢山食べられそうだよ」
「この美味しいやつ、何て言うの?」
クララさん、ピーターさん、ハイジさんがインゲンを食べながらマヨネーズを指す。
マヨネーズだよと教えると、皆が何故か復唱していた。
以降はしっかり2種類食べ終わった鳳蝶丸が私に代わり、お弁当の内容や食べ方を説明してくれる。
3人は頷きながら1つ1つを味わっていた。
その間、ビョークギルマスから預かった羊皮紙を複写し再構成で文字を消去、万年筆を再構築。
それをミスティルに渡して、メニュー、値段、お弁当の内容と飲み物の内容も説明書きしてもらう。
ちなみに、お弁当の値段はどちらも5百エン、ソフトドリンク付きで6百エン。
ビールかワインにしたい場合は8百エン。
飲み物のみはソフトドリンク2百エン、アルコール4百エン。
4人に食事をしながら仕事について聞いてもらう。
ピーターさんには結界の辺りに立ってもらい、複写したメニューを順番に見せながら、お客さんに一列に並んでもらう。その時にお弁当と飲み物をどれにするか大体決めてもらう。
あと、食べ終わったらタープテント前に設置した4つの箱に食器を入れるよう話してもらう。
フォーク並びにするつもりなので、タープテント3m程前にマッカダンさんが待機して、2つの売り場の空いた方に次のお客さんを誘導してもらう。
売り場にはハイジさんとクララさんの2人。
タープテントの簡易テーブルの所に立ってもらい、お客さんの希望を聞いてトレーにお弁当と飲み物などを載せて手渡してもらう。
私は2人の間、真ん中のテーブルの所に椅子を置いて座り、頃合いを見てテーブルにお弁当を出したり、お金を受け取ったりする。
後ろのテーブルには各飲み物を用意し、鳳蝶丸とミスティルが注文された飲み物を出していく。二人のマジックバッグには念のためお弁当各種と飲み物各種を沢山入れてあるから大丈夫かな。
色々用意しているうちに販売時間となりました。
お客さん来てくれるかな……。
「しゅこし、早い。始めゆ」
「は、はいっ」
「頑張りますっ」
女性2人とピーターさんはちょっと緊張気味。
マッカダンさんはいつもと変わらずだね。
「皆しゃん、よよちく、おねだい、ちまちゅ」
まず、ハイジさんとクララさんには簡易テーブルの所で待機。
ミスティルはその後ろに。
マッカダンさんはタープテント3m前に立っていてもらう。
鳳蝶丸抱っこの私とピーターさんは帆布シートの端まで歩いた。
そこには既に沢山の人が集まっている。調査隊のメンバーは一番前を陣取っていた。
「皆しゃん、こんにちは。たくしゃん、食べてね」
「おーう!嬢ちゃんのメシ、楽しみにしていた!皆にも宣伝しといたからな!」
「アタシも、ゆきちゃんのご飯は食べなきゃ後悔するよって皆に言ったからね」
ガグルルさんとレーネお姉さん、宣伝してくれたのね。
「あにあとぅ」
私が手を振ったら、知らない人までニコニコと手を振り返してくれた。
「メシについてだが」
次に鳳蝶丸からの説明が始まる。
テント周りに結界が張られている事。悪意が無ければ普通に通れる事。結界にはクリーンが付与されている事。ご飯の種類について、飲み物について、買い方について。
そしてミスティルが書いてくれたメニューを数人に配り、後はピーターさんに任せてタープテントに戻った。
椅子に座って、5人の顔を見る。
皆が頷いたので、お弁当屋さん開店です!
「いらっしゃいまちぇ!お弁当屋しゃんでしゅ、おいちいよ!」
わっと人が押し寄せてきた。
向こうでピーターさんがあたふたしている。大丈夫かな…。
すると、マッカダンさんがすかさず誘導し始めた。
「一列に並んでくださーい!走らなくても売り切れないから安心してくださーい!この辺りにこう、こんな感じで並んでくださーい!」
一列に並ぶジェスチャーをしながら押し寄せてくる人々を上手に捌いている。
「はい、初めてのお客さん、2番目のお客さんと一緒?では右に行ってください。次のお客さんは左に。次のお客さんはここで少し待って下さいね!」
明るい声と爽やかな笑顔が良かったのか、皆落ち着き始めて一列に並んでくれた。
と思っていたんだ。
トラブルが発生するまでは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます