第47話 我がファミリーのルール、完成!

 三人でゆっくりと蕎麦湯を飲みながら、今後どうするかの話になった。



 これから人(を含む全種族)が住み、また行き交う町で交流が始まる。

 その前に、私達の間にルールを作ろうと思う。今後仲間が増えたとしても、以下のことを伝え遵守してもらいたい。



 まず、基本はお互い自由であること。ただし、出かける時は必ず誰かに伝言すること。


「伝言は了解した。自由に関してはありがたいんだが、あまりお嬢から離れたくない。もし火急の用事が出来て外出するにしろ、誰か一人は近くに控えさせてくれ」

「主も一人で過ごしたい時間があるでしょう。でも、何かあった時すぐ動ける距離にいたいのです」

「あい、あにあと。よよちく、おねだい、ちまちゅ。あと、」


 この世界で私の考えは甘いと思うので各自に判断を委ねるけれど、希望としては魔獣討伐、又はやむを得ない場合を除き命を奪う行為は避けて欲しい。

 特に、言語を理解し知能のある者とは意思疎通を図ってから判断して欲しい。

 悪とみなされる者達は出来るだけ捕縛し、各種族の法で裁かれるよう手配して欲しい。


 ただし、全てにおいて身の危険が生じる場合は定かではない。


 二人は私を守るためにその約束は難しいかもしれないと難色を示したけれど、身の危険が生じる…、を付け加えて何とか承諾してもらった。



「ウルトラウスオルコトヌスジリアス神から主の住んでいた世界の話を聞きました。ニホン?の死に対する考え方も全てではありませんが聞いています。そして今後も理解していこうと思っているんですよ」

「ああ。俺達はお嬢の思いを優先する。だが、俺達の判断で行動する場合がある事を心に貯めておいて欲しい」

「あい、わかってゆ。たくしゃんあにあと。よよちく、おねだいちまちゅ」



 これで大体良いかな。


「ゆち、ファミイー、ユーユ、かんしぇい!」



 ゆきファミリーのルールが完成したよ!



 家族ならば、言葉にしなくとも時間をかけて少しずつ決まって行くんだろうけれど、何しろ私は出自が違いこの世界の事に疎い。

 小説や物語での知識は何となくあっても、実際に体験していないので、この世界を生きていくにはかなり甘い考えなんだろう。


 私の甘い部分と、譲れないもの。


 その誤差は、互いに話し合い少しずつ歩み寄って解決行こうと思う。と、言うか、その部分はある程度二人に委ねてしまおうと思う。


 とりあえず、ギリギリのラインを守ってくれれば良い。


 その他も思いつく事柄を三人で話し合おう。と、思っていた。

 ……でも………段々眠く、ねむく、にゃい……ぁ…。



 ガクン




 2時間ほど寝ました。

 この体になってから眠さに勝てずカクンッと寝てしまうことが多いな。

 赤ちゃんだから仕方がないけれど。


 目覚めてからは、また温室で自動収集箱のドロップ品整理の続きをする。


 大体終わったその後、堆肥と活力剤を沢山複写、転移の門戸で移動。いばらドームちゃんにお別れの挨拶に行った。

 いつでも来られるけれど、一応一区切りと言うことで。


「イバヤドームたん、ミシュチユ守ってくえて、あにあと。あちたバイバイ。また来ゆね。こえ、どうじょ」



 ザワザワザワ



 ドーム全体が震える。堆肥と活力剤、喜んでくれたのかな?

 そしたらまたハラハラと色んな種類や色の薔薇がたくさん落ちてきた。慌てて無限収納で受け取る。

 お礼とお別れの挨拶をして温室に戻った。


「こえで、いちゅでも、しゅぱちゅ、だいじょぶ」


 もらった薔薇を整理しておこう。薔薇のアイコンをタッチ。ん?前回貰った時と違う名称な気がする。



【永遠の聖なる薔薇】



 あれ?

 前回のは【聖なる薔薇】だったような?


 確認してみるとやはり前回と今回では名称が違っていたので、どちらも鑑定してみる。



【聖なる薔薇】

 創造神ウルトラウスオルコトヌスジリアスの神域に咲く薔薇


【永遠の聖なる薔薇】

 創造神ウルトラウスオルコトヌスジリアスの神域に咲く薔薇

 半神から授かりし力を受け永遠に枯れない薔薇となった。



 びっっっくりした!

 ドームちゃんにあげた堆肥と活力剤で力増し増しになったんだね!


 それならアレ作ろうかな。

 そのままになっていた白い噴水!



 噴水の天辺にある聖杯をイメージしたコップの中に、魔力を繋げる魔法陣プレートと水が出る魔石(夜になるとライト、魔力を流すと清浄付き)を投入。

 コップから水が溢れて貯水の部分に流れ落ちるようにした。


 聖杯下の柱はロココ調のモチーフにして、柱の土台部分にレインボーアコヤと薔薇を彫刻した。

 伝説の武器はあと四人。仲間になったらモチーフを増やす予定。


 その下には貯水部分。

 土台と貯水部分の中所々に魔法陣プレートとライトの魔石(清浄付き)を埋め込む。

 貯水部分は二重構造で、内側の層に水が一定量貯まると内と外の間に排水するようにする。その後の排水方法はお風呂と同じ。


 ちなみに、噴水のお水は飲用可能。日本の天然水を設定してみました。


 飲まないけど。


 ではでは、貯水されるまで少し待ちましょう。



 その間、色々と考え事をする。


 町に行く道中は何が必要かな。

 おんぶって言ってたよね。おんぶも抱っこも出来るおんぶ紐を再構築しておこう。

 あと、おんぶされたままお水が飲めるように両手で持てるストローマグ。

 赤ちゃんの体なので間に合わなくなる場合も想定してパンツ型の紙オムツ。


 あとは、簡易トイレか。

 魔石を埋めたり結界を張る時は無限収納内で作れないので外に出して作成する。


 大人が2、3人入れる位のドーム型テントを再構築してこの世界用に再構成。以前作った便座を複写してテントの中に設置。便座のうしろ、目立たない場所に魔石を埋め、人がトイレから出ると清浄にした。

 魔力は私が入った時注入すれば良いよね。

 便座のリモコンはどうしよう‥。うーん。あ、便座横に小さめの棚を作ってそこに置こう。


 あと、トイレの時って無防備だから、ドームに沿って結界3を張る。


 必要なものを考えながら作成し、無限収納に入れていった。




 そうこうしているうち、噴水の貯水が完了。


 【永遠の聖なる薔薇】を複写して全色出し、茎の部分を少し残しナイフで切り落とした。

 1歳児の手でナイフを使うのは怖かったので、自分に結界3を張っちゃった。

 途中何回かゴリッてしちゃったけれど、手が切れなくて良かった!


 そして、茎を切った色とりどりの薔薇を大量に複写して噴水に浮かべる。


「きえーい…」


 これ!これがやりたかった!

 とある植物園で見てから憧れていたんだよね、噴水の薔薇。

 水に揺れる色とりどりの薔薇はとても綺麗で、しばらくの間眺めていた。

 ライトアップ用の魔石も仕込んだし、夜には昼と違う美しい景色が見られるだろう。

 暗くなったらまた来ようっと。




 さて、二人の所に戻ろうかな。

 半神の体は例えずっと寝ていたって筋力が落ちることは無いと思うけれど、何となく気になって自分の足で歩く。

 温室を出るとリビングのソファーにミスティルが座って冊子の様なものを読んでいた。


「主。ギルド長が来たので、鳳蝶丸が話を聞きに行きました」

「あにあと。ミシュチユは何読んでゆ?」

「これですか?これはこの世界の最新情報です」

「おお…」


 ミスティルの話によると、伝説の武器達は生まれた時からウル様の側にいて、この世界の成り立ちや進化度、ウル様が希望する未来の姿、自分達の役割などを勉強していたんだって。

 地上に降りてからも時折この世界の最新情報【フェリア通信】がウル様の眷属神様から届くので、それを読んだり、実際に見に行ったりしているんだって。


「見ても良い?」

「ええ。良いですよ」


 手元の冊子を覗かせてもらうと、真っ白で何も書かれていない。


「なんにもにゃい」

「そうなのですか?もしかしたら閲覧制限があるのかもしれませんね」


 そうなんだ。残念!

 けど、何も知らないまっさらの方が、発見したり聞いたりした時に感動あるからいいかな。


「もち、おもちろい事、載ったら、おちえて?いっちょに、見に行こ」


 するとミスティルが嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「ええ、もちろん」

「鳳蝶まゆもいっちょよ」


 すると困ったような表情を浮かべ、


「‥‥‥、まあ、仕方ありません」


 と言ってから二人でクスクス笑ったのだった。



 ミスティル膝抱っこで真っ白な冊子を見て、ここに新種の魔獣を配置したって書いてあるんですよとか物騒な事を教えてもらいながらまったりしていると、鳳蝶丸が戻ってきた。


「お嬢の用事は終わったのか?」

「うん」

「いつ頃出立すると言っていましたか?」

「ああ、明後日の早朝6時に決まったらしい。それまではこの辺りの探索だと」


 じゃあ、明日は遊んだり散歩したり、念の為もう一度分体のとこに行ったりしよう。


「今のうち、渡ちとく」


 私が寝ちゃった時対策の為、テント型トイレ、両取手付きストローマグ、おむつ、下着数枚、洋服数種、おんぶ紐、、猫ちゃんロンパース数枚、ブランケット、タオルや髪用ブラシ、歯ブラシなど、その他食べ物や飲み物を、それぞれを二人に渡してマジックバッグに仕舞っておいてもらう。



 その後は夜ご飯を食べたりお風呂に入ったりしてから早めに就寝した。

 明日も楽しいといいな。

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