第46話 なるよね、大人。なれるよね?

「パンが柔らけえ!それに挟まっている具も美味い!こりゃ何の肉だ?」


 美味い、美味いと照り焼きチキンサンドを頬張るビョークギルマス。

 そして、鳳蝶丸とミスティルもがっつり食べ出した。あれ?二人はさっき朝ご飯食べた気がするよ?

 いいけど…………サンドイッチ追加しておこ。


「おしやしぇ、あゆ。ダンジョン、かちゅどう、かいち、時間」

「……そうか。どれくらいだ?」

「あしゃって、夕方、くやい。ここ、早め出ゆ、おしゅしゅめ」

「貴重な情報感謝する。他の奴らと相談してみるな。で、ゆき殿はどうするんだ?」


 うーん。

 冒険者ってどんな事しているのか興味あるんだよねえ。


 とりあえず調査隊の人達と一緒に移動して良いか鳳蝶丸とミスティルに確認。

 無理強いしたくないし、二人が嫌なら止めようと思う。


 そして二人の答えは、私には好きな事をして、思い通りに過ごして欲しいので自分達は他者と一緒でもかまわない、だった。

 なのでビョークギルマス達と町に行く事にする。


「ああ、大歓迎だ。一応言っておくが森の中は歩き辛い。ゆき殿の足では難しいかもしれんぞ」

「大丈夫だ。お嬢は俺達でおぶって行く」

「おんぶー?あかたん、みたぁい!」

「いや、ゆき殿は赤ん坊だぞ。普通ではないが赤ん坊だからな」


 とツッコまれてしまったよ。


「ギユマシュも、おんぶしゃえゆのよ」

「ん?いいぞ。俺で良けりゃおぶるぞ?」

「ちあうよ。ギユマシュ、だえか、おんぶしゃえゆの」

「何でだ」

「くちゅ、片方ちか、にゃい」

「あ…」


 そう、ギルマスは足が生えたから片方裸足なのだよ。


「予備の靴は片方しか持って来てねえな。俺と同じくらいの足の奴に予備を借りるか」


 その人が水虫だった場合伝染るよ?


 良し。

 足を生えさせたのは私だし、最後まで面倒見ますか。


「くちゅ、わたち、ちゅくゆ」

「ん?」

「主があなたの靴を用意するそうですよ」

「いやいや、足生やしてもらっただけでもありがたいのに、靴もだなんて…、ん?そもそもどうやって作るんだ?」

「主は錬金魔術も使えるんでな」


 厳密には違うんだけれど、面倒くさいので錬金魔術って事にしておく。


「ゆき殿は何でもアリだな」

「わたし達の主は凄いでしょう?」


 いや、自慢気に言われるの恥ずかしいです、ミスティルさん。


「おいちい、お菓子、食べたい」

「ノッた!」


 契約成立。

 ギルマスには靴下を脱いでそこに座っていてもらい、ミスティルに抱っこされて玄関へ向かう。

 そしてギルマスに背を向けるかたちで座った。

 片足分の靴と靴下を再度清浄し再構成で新品同様に作り変える。

 そして一旦無限収納に仕舞い複写してから取り出し、片方を再構成で左右逆転させた。

 これで、形的には両足揃う。


「ギユマシュ、ちてー!」

「おう、もう出来たのか?ん?し、新品じゃねえか!」

「しょうよー」


 玄関で早速靴下と靴を履いてもらう。


「痛いトコ、あゆぅ?」


 ダムダムと足を踏みならしたりクルリと歩いて、当たって痛い所を指してもらう。


「ひみちゅ、見たあヤメよ」


 上を向いていてもらい、痛い箇所を見た目変わらない程度で微調整する。


「こえは?」

「おお!当たるところもねえし履きやすいぜ!」

「あゆく、痛くなゆ、言って?」

「何から何まで悪いな。心から感謝する。必ず美味い菓子を手に入れるから楽しみにしていてな」

「あい!」


 嬉しそうに足踏みしたあと、やっぱり自分の足で歩くのは嬉しいなと破顔しているギルマス。

 本当に良かったね。私も嬉しいな。


「じゃあ皆に出発の時間を相談してくる。夕刻までには返事をするがどう連絡したらいい?」

「ギユマシュらけ、テント入ゆ良ち、ちとく」

「わかった」


 了承の返事をしてからギルマスはテントから出て行った。




「おちゅきあい、あにあと。おしゃけ、ちゅじゅき、どうじょ」

「お嬢のそばにいたいだけだから気にすんな」

「その通りです。さあ、お部屋に行きますか?」

「うん!」


 ミスティル抱っこで私の部屋に連れて行ってもらう。 

 二人はリビングで酒盛りの続き、私は一人で温室に向かった。


 白い椅子に座り、温かい珈琲とクッキーを出す。そしてゆっくり珈琲を飲みながら自分のインベントリを開いた。


 ステータスはあんまり変わらないけれど、半神スキルに【暗視】が追加されている。

 モチモチの木とモコモコ草を取りに行った時のだよね。


 色々確認して最後に無限収納の食べ物チェックをしようと窓を開くと、見たことない項目が目に止まった。


【自動収集の箱】?


 あ!ヒミツさんのくれた神具!

 そういえば【時間操作の杖】【自動収集の箱】【变化の輪】なるものを貰っていたな。

 自動収集の箱は無限収納と連結しているんだ?

 開いてみるとスクロールバーが物凄く小さくて、ドロップ品が大量に入っていることがわかる


 各種魔石、ホーンラビットの角、ジャンピングフォックスの毛皮、ファントムウルフの毛皮、フォレストアントの顎、フォレストタランチュラの糸、レッドアリコーンの角、リングボアの牙と肉など他多数。


「うわぁ」


 浄化の時、穢れが強い魔獣は討伐されるんだっけ。それにしてもこの量って森中のなんじゃ…。

 ま、まあいいや。


「ん、ふんん!」


 気合を入れて物品整理に取り掛かる。もともとこういうの好きだしね。


 無限収納に鑑定で確認しながらフォルダを作って行く。

 安価そうなもの、希少価値の高い物。食料、薬草等、武具などの材料、その他もろもろ。


 これは鳳蝶丸が倒していたデッカイ猪みたいなの?従者が倒したものも回収されるんだね。


 ホネホネのは希少価値が高そうだから売ろう…ん?ポーションの材料になるなら取っておこうかな。

 それにしてもホネホネの魔石大きいな。スカスカの体の中のどこにあったんだろう、頭蓋骨の中?

 あと、ドラゴンの血液もドロップしてる。骨なのに?ダンジョンだから関係無いの?



 ブツブツブツブツ呟きながら整理していたら、誰かが頭を撫でてビックリする。

 顔をあげると鳳蝶丸が苦笑していた。


「すまん。声をかけたが反応が無かったから勝手に入った」

「うん。どうちたの?」

「もう昼だ。少し休んだほうがいいぜ」


 おう!整理に夢中で全然気が付かなかった。



「ご飯食べゆ?」

「いや、俺達は酒飲みながら色々摘んでいるからいいが、お嬢が食べるなら付き合うぜ」

「わかった」


 鳳蝶丸抱っこでリビングに戻る。テーブルのお酒やおつまみは綺麗に片付けられていた。


 お昼はあれにしよう。天麩羅蕎麦!二八蕎麦とカラッと揚がってサックサクの天麩羅。

 お出汁の効いた少し甘めのつゆが美味しい私が大好きだったあのお店の味!


 ってことで、早速再構築する。

 氷水で締めたツヤツヤのお蕎麦(再構築だけど)、揚げたてのパチパチとした音がまだ残る天麩羅各種(再構築だけど)、お出汁の香ばしく深い豊かな香りのつゆ(再構築…しつこい)を、再現。


 もちろん天麩羅のつゆや大根おろし、薬味、蕎麦湯等も用意。



 我ながら最高の出来です。

 複写します。



 二人に食べ方を教え、いざ、実食!


「いただきましゅ」

「いただきます」「いただきます」


 蕎麦つゆは先だけつけて食べるのが通って聞いたことあるけど私は気にしない。

 しっかり浸して食べるのが好きだから!


 良し、食す!



 ちゅるちゅるちゅる…



 赤ちゃんだから啜れないって忘れてたよ。ラーメンの時もそうだったっけ。

 仕方がない。大人になったらって事で!例えお行儀悪いと言われても!


 そう、大人になったら。


 ………ん?なるよね?大人。

 なれるよね?ウル様?



 ちゅるちゅるちゅる



 美味し〜い!

 でもやっぱり蕎麦と箸に苦戦してしまう。結局鳳蝶丸膝抱っこで食べさせてもらった。


「ソバだっけか?これ、美味いな」

「テンプラもとても美味しいです。特にこのナスとアスパラが気に入りました」

「俺はクルマエビとイカだな」


 付き合う程度かと思ったらおかわりまでして美味しそうに食べてくれる。何か嬉しいな。

 皆で食べるご飯は美味しいし、この時間に幸せを感じるよ。母が亡くなってから1人が多かったから余計にね。


 ちょっぴり涙が出そうになったけれど、2人には内緒にしておこう。

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