第40話 枝豆とビールのコンビは最高だよね
タープテントの外では2名を除く十数人の人がバーベキューをしていた。
皆、武具を装備したままだけれど、楽しそうに飲んだり食べたりしている。
よちよち歩いて行くと、大柄で美人なお姉さんと目が合う。
朱色の髪、小麦色の肌、そしてお胸バインバインなダイナマイトボディのお姉さんだ。
「やあ、お嬢ちゃん」
「はじめちて、おねしゃん」
「おお!挨拶出来るんだ。いい子だね」
ニコッと笑ってしゃがみ、頭をなでなでしてくれた。
「食べてゆ?」
「ああ、御馳走になってる。ありがとな。どれもこれも絶品。美味すぎてびっくりしているトコロ」
すると、上品そうな超絶美人と、快活そうで可愛い猫ちゃんみたいなお姉さん達も声をかけてくれる。
「おおお!かンわいい!」
「本当に、何て可愛らしいのかしら」
「はじめまちて、おねしゃん。わたち、ゆちでしゅ」
「ゆちちゃん?」
「ううん、ゆ、ち」
通じなかったので、大柄美人のお姉さんに手を出してほしいとお願いした。
「ん?これでいいか?」
「あい」
手の平にフェリアの文字で<ゆき>と書く。
ウル様が全言語取得をつけてくれたので、読み書きも難なく出来るのだ。
改めて、ウル様、ありがとう!
「ゆ、き?文字を書いているのか?えええ!」
「え?赤ちゃんでしょう?」
「字、書けるの?まさか…」
三人で顔を合わせる。
「ええと、ゆき、で合ってる?」
「あい。ゆちでしゅ」
「文字が書けるのですか?」
「うん」
「今、何歳?」
「いっしゃい」
人差し指を立ててみる。
まあ、本当の年齢はアレなんですが、ステータスには1歳と書いてあったもので。
お姉さん達は「天才…」と呟きながら驚愕している。
赤ちゃんが文字書いたら驚くよね、わかります。
すると、大柄美人のお姉さんがハッとした顔をした。
「遅れてすまない。私はローザリア。ローザって呼んでくれ」
「
「アタシはレーネ」
三人とも美人揃いで格好いい!
ローザお姉さんは人族で、セクシーボディな美人。レーネお姉さんは猫族なのね。お耳がピコピコして可愛い!エクレールお姉さんはエルフ族。エルフの人って本当に美しい。
「私達は【虹の翼】というパーティーの冒険者なんだ。よろしく」
おおお!冒険者!
「よよちく、おねだい、ちまちゅっ」
ワクワクして声が弾んじゃった。
そこに制服みたいな服の上から胸当てのような武具を装備したお姉さんが参加する。クルクルフワフワなピンクの髪、ラベンダーの瞳の可愛らしいお姉さん。
「こんばんは」
「はじめまちて、おねしゃん」
「わあ!可愛い。私はピピ。冒険者ギルドの受付をしているの」
おおお!冒険者ギルドの受付嬢!
とても可愛いお姉さんだ。冒険者達からモテモテに違いない。
「ゆちでしゅ」
「ゆきちゃんと言うのですって」
エクレールお姉さん、通訳ありがとう。
「この料理、どれもこれも見たことなくて凄く美味しいね」
「あにあと。いっぱい食べて」
ピピお姉さんも美味しく食べているみたいで嬉しい。
「トマトは生でしか食べたことないけど、お肉で巻いて串焼きにすると美味しいって初めて知った」
「ええ、
こっちにはトマトベースのソースってないのかな?
「トマト、煮る、炒める、焼く、おいちい」
「へえ、色々あるんだね?っていうかゆきちゃん物知りだねぇ」
ピピお姉さんが驚いた顔で私を見つめる。
あ、1歳の私が作ったら変だよね?どうしよう。
鳳蝶丸とミスティルが作ったことにしておく?
……。
ま、いっか。
「ちゅくいかた言う、わたち。ちゅくゆ、ふたい」
「ちゅくい?…あ、作り方を伝えるのがゆきちゃん、調理がお二人、と言う事で合っていますか?」
「あい」
またしても、エクレールお姉さん、通訳ありがとう。
「これ、ゆきちゃんのレシピなの?凄くない?」
レーネお姉さんのお耳がピーンってした。
まあ、普通は信じられないよね。私だってきっと信じないよ。
「本当に凄いな、君は」
「エヘヘ…」
私が考えた料理じゃないから心苦しいけれど、この世界では初めてだし…いいかな?地球の料理を作り出した皆々様に感謝!
そして、フェリアでお披露目することを許してください。
「ねえ、ゆきちゃん」
「あい」
「抱っこしても良い?」
ローザお姉さんがちょっと恥ずかしそうに申し出てくれた。
綺麗なお姉さんの抱っこ!もちろん大歓迎です!【幼児の気持ち】発動開始です!
「あい、おねだい、ちまちゅ」
両手を広げて抱っこしてポーズをすると、ローザお姉さんが立ち上がってから私を抱き上げてくれる。
しゃがんでいた他のお姉さん達も立ち上がった。
あ、ずっとしゃがませてごめんなさい。
「可愛いね、本当に可愛いね」
なでなでなでなで…
頭なでなでがエンドレスで止まらないローザお姉さん。
恥ずかしい、けど嬉しい。
えへへへへって照れ笑いしちゃったよ。
よし!
「だっこ、嬉ちい。あとれ、おねしゃんたち、シャーベットあげゆね」
「シャーベット?」
「ご飯、しゃいご、ちゅめたい、甘い、デジャート」
「冷たい、甘い、デザート?どんなモノかわからないが、楽しみにしてる」
「うん!おたのちみに!しょの前、こえ」
楽しくなってきたので、無限収納から作りたての塩ゆで枝豆とニンニク胡椒醤油の枝豆を出す。
そして、テーブルの飲み終わったビールジョッキを指さして、飲むふり、枝豆指さして、食べるふりをした。
パア!っと顔を輝かせたレーネお姉さん。
「冷たいエール、持ってこよう!」
「ええ、
「私も!ローザさんの分も持ってきますね」
「ああ、頼む」
レーネ、エクレール、ピピお姉さん達がタープテントに向かった。
「おお、良い匂いだなぁ」
すると、獣人のお兄さんがやってきた。
胡桃色のツンツン髪、栗皮色の瞳、耳と尾が犬っぽい明るそうなお兄さん。
「こんばんは、嬢ちゃん。肉、すっごく美味いよ!肉自体が吃驚するくらい柔らかくて、肉汁がジュワッと出てきて、その油にほのかな甘みがあって、物凄い美味い肉だよ。それが、数種類のハーブが入ったピリリとした辛さと隠れた甘さのタレに漬け込んである!焼くと少し焦げた部分が香ばしくて、ああ、俺、この味を忘れられなくなっちゃったよ。罪な肉とタレだよ」
へにょーんと耳と尾を垂らす姿が可愛くて、思わずきゃっきゃっと笑ってしまった。
私が笑っていると犬のお兄さんも嬉しそうに笑う。
「俺、サバンタリア王国の近衛兵、マッカダンって言うんだ」
「わたち、ゆち。はじめまちて」
「ゆちちゃん?」
「ゆきちゃんって言うんだ」
「ありがとう、ローザリア殿。ゆきちゃん、よろしくね」
「あい、よよちくでしゅ」
ところで、良い匂いの正体は何?と言われたので、二種類の枝豆をオススメしたら俺もエール貰ってくる!とタープテントへ走って行った。
皆がビールを取りに行ったので、無限収納から再構築で作ったダッチオーブンを出す。
コンロを清浄で綺麗にして、ダッチオーブンにハッセルバックポテトのアルミホイル包みを入れ網の上に載せる。
そしてローザお姉さんにお願いして、ダッチオーブンの蓋の上に熱い炭を置いてもらった。
「これは何?」
「いも」
「いも?銀色なのに、いもなの?」
「中味、いも」
その後、何故かアルミホイルに食いつくローザさん。
何で出来てる?ミスリルを伸ばしたもの?と呟き繁々と眺めている。
私はアルミホイルの作り方なんてわからないしフェリアの物でもないので、必殺!幼児だからよくわかんない?を発動してだんまりを決め込むのだった。
「お待たせしましたぁ」
「ん?レーネは?」
「何か、ギルマス達が用事あるらしくて足止め食らってますぅ」
エクレールお姉さんとピピお姉さん、マッカダンさんの三人で多めのジョッキを運んできた。
このまま黙っていると皮まで食べちゃいそうだったので、枝豆の食べ方を説明する。
「ふんふん、なるほど。俺、皮ごと食べるんだと思ってたよ」
あ、やっぱり。
何となくだけれど、マッカダンさんはそういうのヤッちゃいそうな雰囲気だよね。
「んじゃ、とりあえず、乾杯!」
マッカダンさんの音頭で四人がゴクゴクとビールを飲む。
「クーッ!喉ごし最高!」
「はぁ、美味し」
エクレールお姉さんが頬を赤らめてため息をついた。美人のため息って色っぽい。
「枝豆食べて、」
プチッ
「エールを飲む」
ゴクッ
「枝豆食べて、」
プチッ
「エールを飲む」
ゴクッ
「止まらない!」
「本当に!」
すると、ダダダダダー!っとレーネお姉さんが走り込んできた。
「あー!ちょっと!アタシの分は?」
「ちゃんとあるよ。ところで、何の用事だったの?」
ローザお姉さんが足止めの理由を聞いた。
「良くわからないんだけど、斥候で活躍したから褒美にって焼いた貝柱食べさせてもらった。残り1個しかないんだって」
ん?貝柱?
「そしたら、何かめっちゃ体力上がったって言うか、元気爆発な感じになっちゃった。今なら単独でSS級と戦えそう」
「何の貝?」
「それが教えてくれないんだよね。商業ギルドのフィガロギルド長からの提供だからちゃんとした物だって」
「わからない物を口にしたんですの?」
「うん。毒系の匂いも腐った匂いも無かったし、直感でコレ食べなきゃ後悔する!って思ったんだよ。ビョークギルマスからも勧められたし」
「しょの貝、だいじょぶ」
たぶん、レインボーアコヤだよね。身は日持ちしないから、食べてしまうことにしたのかな。
「何なに?結局あの貝、何だったの?」
「貝、わたち食べた、ポンポン、痛いない。だいじょぶ」
「ああ、そういう……」
さっきのフィガロギルマスやビョークギルマスの反応を見ると、レインボーアコヤだって言わない方が良いよね?
とりあえず、私も食べたけれどお腹痛くなってないから大丈夫ってごまかした。
「ま、いいか。元気になっただけで具合悪いわけじゃないし。ゴクゴクゴク…ハア!美味いっ」
レーネお姉さんがそのままグッとビールを飲み干した。
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