第28話 死の森、探索ー!

 朝起きたら鳳蝶丸が傍にいた。うがいをして顔を洗う。

 今日はバーベキューなので動きやすい洋服にしようと思い、再構築、再構成で白い半そでのTシャツ、ショートパンツのデニムサロペット。紺色の靴下、白いスニーカーを自分サイズに合わせて作る。

 ベッドの上に服を並べると鳳蝶丸が着せてくれた。



 おはようと二人に挨拶すると、おはようと返ってくる。

 独りぼっちだった島もそれなりに楽しかったけれど、やっぱり誰かが傍にいてくれるのは嬉しいな。


「昨日、ミシュチユ、だいじょぶだった?」

「え、何かありました?」


 ソファに倒れてたじゃん。…触れてほしくないのかな?


「んーん。何でもにゃい」



 気持ち切り替えて、朝食にしよう。

 今朝はサンドイッチ。ツナとポテサラとたまごサンド。あと、イチゴジャムとピーナッツクリームサンド。コーンクリームスープ、牛乳、オレンジジュース、ベーシックブレンドの珈琲。


 三人で美味しくいただきました。

 ちなみに、鳳蝶丸は全種類を5皿くらい、ミスティルも2皿くらい食べた。私はたまごサンドといちごジャムとスープしか食べられなかったよ。

 大きくなったらたくさん食べたい!




 今日のバーベキューは死の森のセーフティエリアで行うことにする。火を使うし、煙や匂いを結界外に出す予定なので、荊棘ドームに影響あったらいけないしね。

 2ルームテントとタープテントは私の無限収納に仕舞った。



 まずはこの荊棘ドームの薔薇が欲しいって思ってるんだ。


「ミシュチユ、バヤ、貰ていい?」

「聞いてみたら良いのでは?」

「?」


 そう言えば、荊棘ドームは私達の行く先を開けてくれたりしているよね。まるで生き物みたいに。


「イバヤドームちゃん。お願い、あゆ」


 するとザワザワと荊棘の茎が応えてくれた。


「きえいな、バヤ、しゅき、しゃいてゆ、お花ほちいの」


 そう言うと、茎付きの薔薇全色がフワリフワリと頭上から落ちてきた。地面に落ちる前に慌てて全て収納。間に合って良かった。


「あにあと。こえ、しゅくないけよ、どうじょ」


 薔薇専用の堆肥と活力剤を再構築してお礼をした。

 荊棘ドームちゃんが茎を震わせている。喜んでくれたことが何となく伝わって来た。スルスルと茎の一部が伸びてきて堆肥と活力剤を回収、どこかへ持って行った。


「良かったですね」

「うん!」


 硝子の温室に飾ろうかな。



「次はどうする?」

「ちゅぎは、薬しょうとか、あったらほちい」

「やくしょう、ですか?」

「くしゅい、材料よ」

「ああ、薬草」


 実はこの世界でやってみたいことの一つにポーション作りが入っていたりする。せっかく死の森の奥にいるんだから、何か材料を採取したい。

 私は小説で読んだ知識を生かして思いついたことをやってみる。





「たんしゃく、くしゅい、材料!」


 地図に緑の点がたくさん現れた。うん、コレコレ。やってみるモンだね。1つタップしてみる。



 名称 ヒャクレン

 品質 良質

 説明 植物

    病気用ポーションの材料

    基原は根の部分

    乾燥させてすりつぶし、粉末にしてから使う

    採取の時は土ごと掘り起こし、土を丁寧にはらうと良い



 あれ?ヒャクレンってどこかで見たような…。

 無限収納を確認してみると、海の底の白い花畑で採取済みだった。鑑定しながらだったのでしっかり根も採取している。

 しかも、海底の白いヒャクレンの方が高品質だった。



 この森の植物を何個かタップしてみたけれど、海の底で採取したものばかりみたい。



 探索、無限収納に無いもので薬の材料



 特に何も起こらない。流石にそれはダメかぁ。でも、地図に表示されている薬の材料を一つ一つ調べるの大変なんだよね。

 このことを二人に相談したら、


「あなたの持っている’何々’以外と言ってみたらどうです?」

「何回かやれば絞れるかもしれないな」

「あにあと!やってみゆ」



 無限収納と地図を表示して確認しながら頭の中で言ってみる。



 ヒャクレン以外の薬の材料を表示。



 すると、たくさんあった緑の点の一部がスッと消える。このやり方でいけそう。



 カラエン、コルヒサフラン、イタンポ、ギオウヒ、オホウ、コホネ…………以外の薬の材料を表示。



 少しずつ緑の点が消えていき、自分の持っていない材料のみとなった。それでも緑の点が結構あるけれど、何とかなりそう。



 良く考えたら私、ポーションの作り方自体わかってないんだけれど、大きな町に行ったら図書館くらいあるよね?作り方はそこで調べてみようと思う。

 今はとりあえず材料だけ採取しておこう。鑑定を使えばどの部分が必要かはわかるし。



 緑の点を押してみる。

 ズズの根と、その近くにリンドの羽って出てる。湖近くの湿地あたりにあるみたい。ウショウの樹皮は山の中腹、その近くにモチモチの樹皮とモコモコ草の葉か。


 二人にも地図が見えるようにしていたので一緒に覗いている。


「飛べばそれほど時間がかからないだろう。お嬢、念のため結界3を張ってくれ」

「うん」



 では、森を探索!



 鳳蝶丸に抱っこされ、飛行ひぎょうで湿地へ向かった。ミスティルもその後に続く。

 そういえば、浮遊じゃなくて飛行ひぎょうみたいな空中を自由に飛べる魔法を創造しようと思っていたんだった。

 自由時間に考えよう。



 湿地到着。


「こえ、ズズ。根っこちゅかう」


 鑑定で良質と出ているものを選び地上に出ている葉をつかむ。


「う~ん!」


 引っ張ってみたけれどビクともしなかった。


「わたしが引きますよ」


 ミスティルが葉をムンズと掴み、ゆっくり引き抜いた。土がどっさり付いたズズの根は牛蒡にそっくりだ。

 清浄で泥だけ排除。すぐに無限収納に入れた。


「あとは、リンドだったか?」


 湿地からもうちょっと湖に寄ったところに虹色に光る綺麗な羽が落ちていた。ちょっと蜻蛉の羽に似ている。

 鑑定によると、20年土の中で過ごし21年目の春に羽化して交尾をし、雄はすぐに、雌は卵を水中に生みつけた後3日で命を終える昆虫の羽。薬効は雄の羽の方が効果は高い、と書いてある。

 リンド雄君、約1日しか外にいられないんだね。お疲れ様でした。ありがとう、羽は私が有効活用します。


 合掌。


 雄のもので品質が良いものを直接触らず収納した。汚れは使う前に清浄をかければ良いかな。



「ちゅぎは山に行く」

「了解」


 再び鳳蝶丸抱っこで山の中腹に向かう。

 地図に印があるのでウショウはすぐに見つかる。薬効の高い木を探して枝を一本切ってもらい即収納した。



「次は変な名前の植物ですか?」

「ムキムキだかムチムチだか、そんなヤツな」


 全然合ってないよ。



 山道を歩いて(私は抱っこ)緑点方向へ行くと洞窟の入り口があった。

 モチモチの木とモコモコ草は洞窟の中みたい。

 地図上で探索、魔獣も危険生物も引っかからなかったのでそのまま三人で洞窟へ突入した。


 どんどん歩くと暗くなってくる。

 光源は入り口のみのようで奥に行けば行くほど暗闇が濃くなってきた。


「ランタン出しゅ?」

「いえ。記憶は曖昧ですが、暗闇の中でしか育たない植物をつくったとウルトラウスオルコトヌスジリアス神が話していた気がするんです。なので、念のためこのままで行きましょう」

「何も見えないよ?」

「大丈夫だ。俺達には見えているから安心して良いぞ」

「んう?」


 伝説の武器達は暗闇でも戦えるようにつくられたんだって。だから真っ黒の世界でもちゃんと見えているらしい。

 ダンジョンコアの所に行った時、湖の中でランタンいらなかった?って聞いたら、光が無いと怖いかと思って灯りをつけて水に潜ったんだって。

 うちの従者は優しいね!ありがとう。


 もしかしたら、半分神である私にも見えるんじゃないかって言われて挑戦してみる。

 その間、二人はどんどん下へ向かっているようだった。時々飛行ひぎょうで下に降りたり、水の中にチャプンと入ったりしている。

 結界があるから濡れないし息もできるし便利だね。



 う~ん、どうやったら見えるんだろう。

 モノクロではっきり見えるタイプの暗視スコープをイメージしてみる。



 私も暗闇で動けますように。



 すると、パッと視界が広がる。モノクロの世界だけれどハッキリ周りが見えた。

 今はミスティルに抱えられた状態で小さめの穴を通り、私達の後ろを鳳蝶丸が進んでいるところだった。


 見えた!けれどずっと夜このままはイヤだな。

 通常の目に切り替えたい、と考えると元の暗闇に。暗視、と考えるとモノクロの世界に切り替わる。


 これで良し!


 少し開けた場所に出たので早速報告する。


「真っくや、見えゆ!」

「そうか、頑張ったな、お嬢」


 鳳蝶丸が私の頭を撫でてくれた。

 嬉しくてフフッと笑うと、ミスティルがギュッと抱きしめてくれた。



 やがてかなり開けた場所に出る。

 地底湖と珍しい形の鍾乳石。他に道はなくここが行き止まりみたい。

 でも、地図の緑点はまだ奥を指していた。


「下から行けるんじゃないですか?」

「そうだな」


 躊躇なく地底湖に突入。進めそうな穴を発見した。

 スイスイと進んでいくと浮上出来そうな場所に出る。二人はゆっくり水から上がった。



「わあ…!」


 そこはとても広い場所で、立派な木が1本茂っていた。その木の足元には草がモシャモシャ生えている。

 鑑定をしてみると、やはりモチモチの木とモコモコ草だった。

 暗がりの中にのみ育ち、少しでも光りが当たると枯れてしまうらしい。

 ランタン使ってたら枯れてたかもしれないね。ミスティルがウル様の話を思い出してくれて良かった!



 モチモチの木は枝を切ってもらい、モコモコ草は一株根まで抜いてもらって即収納。この二つは加工がちょっと難しいな。テントに作業部屋と暗室つくらなくちゃ。



 とりあえず希望してた材料は手に入ったので、時短のために転移の門戸を使うことにする。モチモチの木の広場では門から光が漏れそうなので、ひとつ手前の鍾乳洞に戻ってもらった。


 転移の門戸、洞窟の入り口。

 格子戸を開けて山の中腹に帰る。


「便利ですねぇ」

「一度行く、登よく、出来ゆ」

「では、いつでもモジモジとモリモリを採取出来ますね」


 全然合ってな………、ミスティルもかいっ!



 コホン、気を取り直して…。

 死の森で欲しかった薬の材料は採取完了。

 転移の門戸を解除して、せっかく山に来たから山菜や果実を採ったり、鉱石を採掘したり目一杯楽しんだ。



 その後、深層部のセーフティエリアに向かいそこに2ルームテントとタープテントを設置する。

 念のためテントを中心に広めの結界1を張っておいた。



 早めのお昼はパスタ。

 日本の持ち物の中に、乾麺のパスタと温めるだけのミートソースを発見。

 フライパンで麺を茹で(吹きこぼれにくい)、その間レンジでミートソースを温め、湯切りした麺をお皿に盛り付けソースをかけて完成。

 粉チーズとタバスコはお好みで。


 好きだった焼きたてフランスパンを再構築して、以前つくった生野菜のサラダを出して完成。

 飲み物は珈琲や紅茶、冷たい緑茶、オレンジュースなどを用意して好きなものを飲んでもらった。



 その後、歯を磨いてから1時間ほどお昼寝。起きると二人の姿はなかった。

 何だか色々あって忘れていたので、リビングのキング魔石に魔力を充填。

 あちこちで清浄が発動されてテント内全ての掃除も完了。

 これで終わっちゃうなんて超絶便利。日本でも使いたかった~清浄!

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