第12話 神界にて -神界サイド-
「ああっ
その時、ウルトラウスオルコトヌスジリアス神は<嘱目の鏡>という下界を観るアイテムでゆきの動向をライブ視聴していた。
録画機能もありビデオのように再生も出来るので、常に観ているわけではない。が、そこは暇をもて余した神。わりと頻繁にライブ配信(?)を観ていたりする。
覗きじゃないかって?
神だから良いのである。
「うむ。大事ないようじゃの」
神界の葡萄ジュース片手に楽しく視聴していたところゆきが突然巨大サメに喰われた。
ただ、彼女の結界は強固でヤられることは無いだろう。
どうしても必要な時は手助けするつもりだが、基本的には見守りに徹している。
「さすが、もうすぐ神になる筈じゃった地球の子。神力も魔力も強いのう」
ニコニコと感心しながら頷いているが、上位神である自分とそれに近いムゥ神の神力で、神子が約八割神に近くなってしまった、と言うことは気付かないふりをする。
「ウルトラウスオルコトヌスジリアス」
鏡に夢中になっていると後ろから声をかけられた。
「これはこれは、万物神よ。貴方が我が神殿にお出でとは珍しい」
ウルトラウスオルコトヌスジリアス神はそう言って恭しく頭を垂れた。
ここは最高神とそれに準ずる神しか入れぬ神域の、ウルトラウスオルコトヌスジリアス神殿。
その入り口に万物神が佇んでいた。後ろには3人の女神が控えている。
万物神は見目麗しい青年の様な容姿をしている。
髪は白銀で腰まで伸び、真白いローブを羽織っていた。
眼は閉じたまま開くことはなく、白銀の長いまつげが印象的だ。
額に大きな金剛石があり、石のまわりに植物の蔦のような白銀の紋様が浮かんでいる。
「どうされましたかの?」
「いや、最近とても楽しそうなので気になってしまってね」
「そうでしたか。さ、どうぞ」
「お邪魔するよ」
万物神を鏡の前に案内すると、ウルトラウスオルコトヌスジリアス神の眷属神達が果物や蜜、葡萄ジュースなど丁寧に運んでくる。
女神達は万物神の横に座した。
「フェリアを覗いていたのかい?」
「はい」
「私も良いかな」
「もちろん。自慢の
通常、万物神が一柱の神やひとつの時空、星など特定して気にかけるかことはない。
だが、ウルトラウスオルコトヌスジリアス神は特別なのだ。彼は万物神が全世界を創造し、初めて生まれた神であった。
最も信頼し、そして気にかけている身内のような存在なのだ。
「これは?」
「
その頃、ゆきはクイーンの胃辺りにいた。
「
「……………」
万物神は眼を閉じたまま鏡に顔を寄せる。
「半神の許可はしたけれど、この子強すぎやしないかい?」
「そうですかな?」
ウルトラウスオルコトヌスジリアス神がとぼけると、万物神は眉をひそめて言った。
「この子は神になる資格を得るまで到達していないはず。でも、現状、ほぼ神だね」
「そうかも知れませんな」
「あなたの世界だから良いけれど、いきなり力を得た人の子はおごった神、若しくは邪神になりかねない。危険な存在になるのでは?」
「それはありません」
ウルトラウスオルコトヌスジリアス神がゆっくりと首を横に振る。
「魂が生まれてからの行いや性質を全て確認した上で力を与えました。それに…」
フォッフォッフォッと笑う。
「この数日間も観て参りましたが、穏やかで健やかに過ごしておりましたよ」
そしてウルトラウスオルコトヌスジリアス神の気配が鋭くなる。
「もし
「…………………そう。わかったよ。あなたを信じる」
万物神は体を引いて、ゆったりと椅子に体を預けた。
「さて、
アビサルメガロドン・クイーンの消化器官を進んでいるところだった。
「おお、移動を始めましたな」
「この子は内側から攻撃して出ようとは思わないのかな」
「そういう発想は無いようですな」
「面白い子だね」
「でも、色々工夫をして脱出を試みておりますぞ」
「ああ、ほら、もうすぐだよ」
巨大魔獣の腹の中をズンズン進む結界。
やがて、その出口近くへ到達する。
…………………っ
スッポーン!
「出た!」
「出たね!」
ピロリ~ン♪
「…………」
「…………」
ンッフッ!
二柱の神が同時に吹き出した。
「こ、これは………、ふふっ、かわいそうでは?」
「フォッ、わしではありませぬ」
「あ、あの」
すると、今までずっと黙っていた真ん中の女神が笑いを必死に堪えつつ、
「申し訳ありません。わたくしです。思い浮かべてしまいました……」
他の女神達も涙を浮かべて必死に笑いを堪えていた。
「ふふ、ふ、し、仕方がない。ふふ。あははは」
万物神が堪えきれずに笑いす。
「フォッ…わしが救済措置をしておき……ファッファッファッ」
「ウフフ、申し訳、フフフフフ」
とうとう全員で笑いだした。
生きているフン。
名誉ある不名誉な称号は、上位神によってつけられたのだった。
そして、気の遠くなるような長い歴史の中で、万物神と上位神である三人の女神に個で認識されたことを、まだゆきは知らない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます