第11話 初めての宝物
展示台には美しい短剣が鎮座していた。
いや、見た目は西洋のものではなく、日本刀に似ている。短剣というより短刀と言った方がしっくりくるかな。
鑑定、
名称 ???
品質 ???
説明 創造神につくられし伝説の武器
「でんしぇちゅ…。こえ?ウユしゃま、おたかや、こえ?」
わからないけど、創造神ってことはウル様だよね?さ、触ってみる?
そ~っと手を伸ばし、人差し指で柄の部分をちょんと触ってみた。
特に危険なことはなさそう。
とりあえず一緒に置いてある鞘に納めよう。
柄を握って持ち上げようとすると、
「やっとこの時が来たか」
と、低めの男性の声が聞こえた。
???え?誰?
「眩しいからちょっと目を瞑ってな」
慌ててギュッと目を瞑ると同時に、剣からもの凄い光が放たれる。
パアアァァー!
眩しい~~~!
「良し。もう開けても大丈夫だ」
光が収まったころ、男性から声がかかりゆっくり目を開く。
話しかけてくれたその人は、目の前に立っていた。
「ん?」
耳に心地良い低めの声だったのでてっきり大人の男性かと思ったら、儚げな美少年だった。
美形キターーー!
剣がとても綺麗だったし、人型となれば納得の美少年だよね。
しばらくボーっと見つめちゃったけれど、とにかく挨拶!
第一印象、大事。
「こんにちは」
「こんにちは、嬢ちゃん」
「わたち、ゆちでしゅ」
「俺は
「もう、ちいてゆ?こちやこしょ、よよちく、おねだい、ちましゅ」
浮遊で展示台の前に立つ彼の目線に合わせる。鳳蝶丸と名乗った少年は微笑んでいた。
真っ白い髪はサラサラストレート。顎より少し上で切り揃え、後頭部は短め。
瞳は右水色、左藤紫のオッドアイ。
見た目15歳くらいの儚げな美少年だが、どこかに艶っぽさが漂っていた。
「お兄しゃん、たかやもの?」
「ああ、そうなるか。俺はこの台にあった剣。ウルトラウスオルコトヌスジリアス神がつくった伝説の武器の中が一振りだ」
「おお~。剣、人のかたち?」
「つくられた時から基本人型だな。理屈はわからないが動物にも変化出来る」
「どうぶちゅ?」
「動物にも」
動物に変化可能とか嬉しいな。私はアレルギー持ちで、体毛のある動物はNGだったから飼った事がない。
でも今の私ならアレルギーにならないし、剣が動物になるならそういうの問題なさそう。
「顔がにやけてるぜ、嬢ちゃん」
「どうぶちゅ、だいしゅき」
「それは良かった。でも、人型の俺も好きになってくれると嬉しい」
「もちよんよ」
だって、こんな美少年とお知り合いになれるなんて嬉しい。
なんて以前の私が発言するとアレな感じになるけれど、今なら問題ないもんね。
すると、スッとウルちゃんラインの窓が開いた。
『とうとう宝を発見したか』
『おめでとう(スタンプ)』
『ありがとうございます!』
『彼は伝説の武器なんですか?』
『そうじゃ』
『いつか勇者が現れたら手にするだろうと』
『設置したんじゃが、誰も見つけてくれなんだ』
『ウル様』
『この海底を人間が探索するのは難し過ぎます』
『そのようじゃのう』
『結果、
『それで良いんでしょうか?』
『良いんじゃよ』
『さあ、その武器におぬしの神力を注ぐのじゃ』
『さすればおぬしだけの従者となろう』
『わかりました』
「どうした?嬢ちゃん」
「今、ウルしゃま、おはなち、ちてた。神力、しょしょぐ」
「ああ、そうだな。そうすれば正式に嬢ちゃんの従者になる」
「いいの?」
「何だ?」
「わたち、従者」
そういうと、鳳蝶丸が破顔した。
「危険な海の底まで来てくれた嬢ちゃんを俺の主とすることに異存はない。一緒にいると楽しそうだしな。遠慮せず早く正式に嬢ちゃんのモノにしてくれ」
と、両手を広げる。
いや、モノにしてくれって語弊が…。ま、まあいいや。
「じゃあ、しょしょぐね」
「おう」
鳳蝶丸は片膝をついて片手を胸に当て、私の瞳を見つめた。
私は神力を意識して手から放出する。
淡く優しい光が部屋中に満ちた時、低く耳に心地よい声が響いた。
「ウルトラウスオルコトヌスジリアス神につくられし伝説の武器が一振り、
やがて光が消えて、鳳蝶丸が立ち上がった。
どう説明したらいいかわからないけれど、確かな絆のような、繋がりのようなものを感じる。
「あやためて、よよちく、おねだい、しましゅ」
「こちらこそ、よろしくお嬢」
こうして鳳蝶丸が私の従者となったのだった。
『良かった良かった』
『おめでとう(スタンプ)』
『仲間が出来て嬉しいです』
『うむうむ』
『宝としてフェリアに降臨させてからまさかの19万8千年』
『武器達に対して心苦しくての』
『じゅ、19万8千年…』
『さて、ここで神命じゃ』
『はい』
『わしがつくった伝説の武器達があと5名おる』
『その者達を探しおぬしの従者とせよ』
『………』
最低でもあと5回危険に晒されるんですね。
『謹んでお受けいたします』
『うむ』
『よろしくの』
あ、そうだ。あれを聞かなくては。
『ウル様、質問です』
『何かの?』
『この部屋に来る前にレインボーアコヤやレインボースズランや薬草を見つけたんですが』
『採取して良いですか?』
『おお、良いぞ良いぞ』
『全て持って行っても問題ない』
『減ればその分増えるよう定義してあるからの』
『おぬしの無限収納に入れてゆけば良かろう』
『無限収納に植物以外の』
『命あるものは入れられません』
『そうじゃったかの?』
『では水産物も許可しておこう』
『ありがとうございます!』
やった!シーフード!海辺でバーベキュー!
『あと、伝説の武器は人型と動物に変化出来るのはなぜですか?』
『それか……言うなれば』
『言うなれば?』
ゴクリ。
『閃きじゃな!』
閃き…。
『色々変化出来れば何かに役立つのでは、と思うたのよ』
『良いではないか(スタンプ)』
何となく思いついたんだね。そして面白そうって思ったんでしょ、ウル様。
『まあ、今後とも武器達をよろしくの』
『大切にします』
『ありがとうございました』
『そうそう』
『せっかくなのでそこから転移してみると良い』
『それではの』
ここでウル様との通信は終わった。
「待たしぇて、ごめん。鳳蝶まゆ」
「かまわない。ウルトラウスオルコトヌスジリアス神と話していたんだろう?」
「うん」
「で、何だって?」
「転移で、帰ゆって」
そう言いながら半人スキルを呼び出す。
転移の門戸
魔力 0
行ったことのある場所、景色をイメージ出来る場所へ転移できる門戸
一緒にいる相手が景色をイメージできる場合も転移可
島のパラソル付近をイメージする。
転移の門戸
すると、何もない空間に和風建築でよく見る門戸がスウッと現れた。数寄屋門のような立派なつくりで、日本瓦の屋根も美しい。
格子戸からは向こう側の景色が見えた。
「おお、しゅごい!」
「本当にすごいな。どんなカラクリだ?」
二人で格子戸を覗く。
ここは海底洞窟なのに、格子戸から見える景色は青い空、白い雲、でお馴染みの、私が最初に降臨した島。
左側の引き戸を開けてみると、白い砂浜が見え、すぐ近くにパラソルとビーチチェアがあった。
「おもちろ~い」
私は楽しくて駆け出した。
「あっ」
そして、すぐ引き返す。
「どうした、お嬢」
「貝、お花、採ゆ」
「ん?」
「あっち」
鳳蝶丸の手を握り、海底洞窟の入り口方面に向かって歩き出す。
「欲しいものがあるのか?」
「うん」
すると、私をヒョイと抱き上げてくれた。
「じゃ、一緒に採ろうな」
「うん!」
レインボーアコヤは生きたまま、レインボースズランとその他薬草は根ごと採取。
全部は取らず、それぞれ大きなものを3個だけ無限収納に入れる。
水産物も入れられるようになって大満足の私だった。
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