第9話 1歳で黒歴史を刻む
少し生々しい描写と汚い描写があります。
苦手な方はご注意ください。
********************************************
周りがよく見えない。
真っ暗だけど、柔らかい何かが蠢いているのがわかった。
そう。ここはでっかい魔物の体内。私はさっき食べられたばかりなのだ。
ガリッて音がしたのは歯が結界に当たった音かもしれない。でも、結界は私をしっかり守ってくれた。
常に頭部を空に向け直立の浮遊にしたのでゴロゴロ転がることもなく、私の許可がないものは全て遮断にしたから現在結界内は音も聞こえず、臭いもない。
良かった~!
だって、魔物の体内だよ?音も臭いも感じたくないもんね。
結界で自分自身が無事だったので、今、結構冷静だった。
ええと、それで私を食べたのは誰だ?
口と歯しか見えなかったけれど、大きなサメに襲われるあの映画を思い出す感じの口だったよ。
鑑定、
名称 アビサルメガロドン・クイーン(メス)
海魔獣
品質 高品質
説明 食用不可(一部を除く)
堅硬の滄海を縄張りとする凶暴なサメ型魔獣
この海域のナンバー2
皮や牙は武具に加工出来る
肉と血液には毒がある
肉は食用不可だがヒレには毒が含まれず食用可
ヒレのみ絶品(極上)
メガロドンって…あの映画まんまだったね。地球では絶滅したはず。
海魔獣って書いてあるし、このアビサルメガロドンは地球の生物とは全く違うんだろうけれど。
って言うか、クイーン。
ナンバー2ってことは1位がいるってことだよね?
そして、ヒレが絶品しかも極上とたたみかけてくる鑑定ちゃん。
サメのヒレと言えばやっぱり中華だよね。フカヒレ姿煮!フカヒレのスープ!
食べたことはあるけれど流石に料理したことないな。
いや、私……今、クイーンのお腹の中にいるんだった。フカヒレどころじゃないよ。
現実逃避しちゃった。
地図は普通に開いていた。
私の島から結構遠いところまで来ている。
何とか口から出られないだろうか?
柔らかい蠢いている何かが内臓なのはわかっている。今、どの部位あたりまで動いちゃったの?
ちょっとだけ…見てみる?
私は無限収納からLEDランタン(複写済み)を取り出した。
怖い、けれど見てみたい。
好奇心に駆られ、目を瞑ってからスイッチオン!
恐る恐る目を空けた。
ギャーーーーー!
驚きすぎて声が出なかった。
だって、だって、目の前にでかいカツオみたいな魚の頭が!ギョロッとした目が!その他わからないものが!
即消灯!
こ、こ、こ、怖かった。
ドキドキドキドキドキドキ…。
ヤバイ、これ消化活動中でしょう?ここまで来たら進むしかないの?
嫌だな…。アレから脱出するの。
でも、このまま待っても結局いつかアレから出ることになってしまう。
嫌だと言っている場合じゃない。
仕方なく、浮遊に魔力を込めて結界を先に進める。
もうゴリ押しである。
しばらくすると竜巻の中みたいな、螺旋みたいな器官に突入した。真っ暗で見えないけど結界ごとガタガタ動いているのがわかる。
魔力を込め続け先に進むと、周りが少しだけ明るくなってきた。
良く見えないからいいけれど、認めたくないものに結界が埋まっている。
私がゴリ押しで進んだからか、小刻みだった振動が激しくなり、やがて、
スポーーーーン!
と、海に飛び出した。
目の上には激しめに尾を振り泳ぎ去るクイーン。の、お腹側。
ああ、やっと外に出た。
結界があるから冷静でいられたけれど、でも、ちょっと。
自分がどこから出てきたのか考えたくないよ。
飛び出した勢いで深海方面に流された私。
ここからどうやって海の上に出ようか。
浮遊じゃ遅すぎて、他の危険生物にまた食べられちゃうかも。
そうだ!船のスクリューみたいに水ジェット出して勢いで外に出よう。
とりあえず、周りの様子を知るため”音”を聞こえるようにして…。
ん?
そんなことを考えていると、目の端に光が見える。
え?光?海底なのに?
下を見ると、暗い群青色の世界でトンネルの入り口のような穴から淡い光りが漏れていた。
洞窟?あれ、海底洞窟の入り口だ!
怪しい。
もしかして宝物あそこにあるんじゃない?このまま行ってみようかな。
一応地図…………。
OH…。
ガボボと水の動く音が聞こえ、ひときわ大きく不気味な影が見える。
ちょ、待てよ。
いや、待って待って!こっち来ないで、来ないでって!
キターーーーーーーーー!
ガアアア!
デジャヴ感じる大きな口。いや、クイーンより大きいかも。
「ややーーー!」
思わず水ジェットを口に向かってぶっ放す。
グンッ
結界に負荷がかかり、
ザアアアーーーーーガボガボガボ!!!
凄い勢いで海の中を突っ走った。
結界が結構な速度で進んでいるのに、後を追うヤツの速さも半端ない。
大きなサメは動きが遅いって何かで読んだけれど、この世界のサメは当てはまらないらしい。
魔力を更に使って加速する。何とか海上に出たいー!
ガガガ…と揺れながら明るい方角に向かい、やがてザブン!と海上に出た。
でも、ヤツはまだ追ってくる。
結界の中の私を捕食しようと海上へ巨体を跳ね上がる。
「お鼻ー!」
私は水ジェットの塊でヤツの鼻面にガツン!と一発お見舞いした。
「おめめーーー!」
鼻面を殴られて怯んだ隙に、今度は水ジェットを細くしてヤツの目を狙った。
バッシャーーン!
左右にくねらせながら海面に巨体を打ち付ける。
目に水ジェットは当たらなかったけれど、多少のダメージは与えられたみたいだ。
少しの間のたうち回り、海面に浮かんでいた。
クイーンじゃない。
クイーンは20mくらい?だったけれどそれよりも大きい感じ。
体中に古傷らしきものがいくつもあった。
鑑定、
名称 アビサルメガロドン・キング(オス)
海魔獣
品質 高品質
説明 食用不可(一部を除く)
堅硬の滄海を縄張りとする凶暴なサメ型魔獣
この海域の頂点
皮や牙は武具に加工出来る
肉と血液には毒がある
肉は食用不可だがヒレには毒が含まれず食用可
ヒレのみ絶品(極上)
やはりキングだ。
二匹ともこんな小さい私をなぜ食べようとしたんだろう?
とにかくキングが正気に戻る前に空高くまで登り、浮遊で自分の島に帰ることにした。
はあ、酷い目に遭った。
島に着いた頃はすでにあたりが暗くなっていた。
島の結界に入るとすごく安心する。ホッとしたら急に眠くなってきた。
お腹すいているけれど、眠気の方が勝る。
自分に清浄して水着のままお布団にもぐった。
気持ちよく眠っていたのに、瞼に光を感じ目が覚める。
「ん~?」
目をこすってから見上げると、神様ラインが開いていた。
「あえ?」
『そなた、どうしたのじゃ』
『桃様?こんばんは』
『あの、どうしたんですか?』
『いや、その』
『そのな』
『はい』
『言えぬ』
『え?』
『我からは言えぬ』
『ステータスを確認せよ』
『は、はい?』
『その、気を確かにな』
『我はどんなことがあろうと』
『そなたを受け入れるぞ』
『落ち込むでないぞ』
『桃様?』
『ではな』
『桃様?!』
私は慌てて起き上がり、ステータスを確認した。
一体どうしてあんなに慌てていたの?桃様。
別に変わって………。
は?
はあぁ?!
何ぞーーーーーーーーーーーーーーー!
称号が…。
称号がぁぁああぁぁ。
いやーーーーーーーーーーーーーーーーー!
私は立ち上がり、布団の上で地団駄を踏んだ。お行儀が悪いけれど、そんなこと言ってる場合じゃない。
何で、何で!酷い!
名前 ゆき(朝宮ゆき)
年齢 1歳
種族 半神半人
称号 神の御神子、三神の愛し子、生きているフン
嫌だあぁぁぁああぁぁ!
誰か嘘だと言ってぇぇぇええ!
こ、こ、これ、隠せないの?
非表示!
指で押しながら強く強く念じたら、スッと表示が消えてホッとする。
もしかして称号から消えた?
表示にしたらやっぱり消えていなかった。
私、ゆき。
半神半人。
そして………生きているアレになりました。
シクシクシクシクシク………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます