第2話

「…違う」

 低い声で誰かに囁かれた。

 夜が明けるかのようで視界が覚めた。

 真っ暗なトンネルか薄暗い洞穴に頭を突っ込まれたかのような感覚だ。男は違和感を覚えながらも身を低くしその場を後にしようとした矢先のことであった。

 ドス!

 じんわりと広がる赤い模様。それが己の血であることが理解したときにはバラバラにされたあとだった。振り向いた先にはフードで顔をすっぽりと覆い仮面をかぶった謎の人物が鋭利な刃物を片手ずつ持ちその刃の先から血が垂れ落ちるとこだった。


「コイツも違うか」

 男の首を持ち上げジロジロと見やる。仮面の人はなにやら探し物のご様子のようだ。

「ちと金にはなるか」

 バスケットボールのように手で上空に投げてはキャッチを繰り返しながら例の店へ。

 その様子をただ黙って見ることしかできない少年がいた。殺された男の相棒だった。

「地味(チミー)…? 嘘だろォオオオ!!」

 頭を両手で押さえながら絶叫をした。

 数分前まで他愛無い会話を繰り広げていた相棒がちょっとアイスを買いに行っている間に殺されているのではないか。少年は殺した相手が何者なのかはわからない。ただ奇妙な仮面をつけた自分よりも背が高い人であることだけがわかる。

「地味(チミー)の魔法ならあんな奴瞬殺だろ!?」

 少年は殺された相棒(チミー)の魔法がどんなものなのか知っていた。舌でなめた相手を箱(キューブ)にする魔法だ。サイズは本人がイメージしたサイズに変化する。地味な魔法だが、相手を油断させてからの瞬殺。強力すぎるこの魔法に圧倒され相棒を志願したつい四日前。それがこうもあっさりと殺されるとは少年も本人(チミー)も知らない現実だった。

 少年は敵討ち…脳裏に思い浮かべた。だが、少年は扉を出現させ、これ以上手を出さないことを決めた。

「俺の魔法じゃ相性が悪すぎる」

 少年はドアを潜り、殺された相棒の仇を討つために新たな相棒を探すことともっと自分が強くなることを誓い魔法使いの世界へ帰還した。

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