第3話
重くるしい空気が部屋を流れる。
今の話を聞く限り拒否権はないだろうと誠は思った。
何より自分の父が何をしていたのかを知りたかった。
「行きます。それでいいんですよね?
拒否権はなさそうですし、
父が何をしていたのかも気になります。」
わざわざ一学生を総理大臣が読んで一対一で話している。
丁寧な対応であるとはいえ半分は脅迫のようなものだ。
霧島が求めている答えは自分が了承する以外の何物でもないだろうと
誠は考えた。
しかし、霧島からの答えは異なっていた。
「いや、拒否権はある」
「そんな、今のお話ですと、
僕がいかないと大変な事になるという風に聞こえましたが」
「その通りだ、現状はそうかもしれない
だが
それでも君には拒否権残されている。
私は現状を伝えただけだ。
そしてあくまで提案しただけだ。
強制はしていない
その上でどう判断するかは君自身だ。」
「そんなこと言われたって、
内閣総理大臣に言われたんですよ?
聞くしかないでしょう」
「勘違いしないで欲しい、
これは命令でもなければ強制でもない判断するのは君自身だ」
誠は思った。
きっと何かあった時追及の手が及ばない様にしているのだと。
なんてずるい大人だと。
「学校や親からはなんと習った?
上の人いう事は黙って聞きなさいと習ったか?
残念だがそれは違う。
それはね誠君、
組織や個人が君を都合がいい様に使う為の嘘だ」
突然、言い始めた事に誠は戸惑う。
しかし霧島は構わず続ける。
「自分が言われた事を素直になにも考えず
信じてほいほいと従う、
私ももし君が一般人ならばこんな事は言わない、
だが残念ながら今、
君はそうではない
自分自身の頭で考え判断を下さなければならない
立場の人間になってしまった。
そして私は君をその判断が
できる人間にしなければならない何故だかわかるかね?」
「・・・・・・・・分かりません」
「時間をかけてもいい、
即答は求めていない、
自分で考えて答えを出しなさい」
「分かりません、僕は頭が悪くて学校の成績も中ぐらいで」
「これに関しては頭の良し悪しは関係ない、
重要なのは自分で判断して
自分で考える事ができるかどうかだ」
異常な緊迫感ができる。
誠にはなぜそこまで言われるのかが分からなった。
考えるってそもそも何?
この人から話してきてそうして欲しいって事じゃないのか?
自分で行くっていってるんだからそれで終わりなんじゃないのか
思考がグルグル回る、
じゃあ、なんだ
こんな話をした後で本当は拒否することを求めている?
何かの理由で?
コンコンとノックがの音が聞こえる。
扉から秘書らしき人が出てきて総理お時間ですと伝える。
誠は助かった思った。
が霧島は「まだ話している最中だ。終わったら行く」
と言って追い出してしまった。
思いがけず誠は
「これ、意味があるんですか?」と尋ねる。
「ある、君にとっても私にとっても大臣の執務以上に価値がある。
君これからどこに行くんだ?今ここで誰かに頼れるかね?」
誰かに頼れるってどういうことだ。
今ここには二人しかいないのに。
答えを求めても教えてはくれない。
これから特使として会いに行くってことじゃないのか?
「総理大臣はこれから今と同じ状況が起きると言いたいのですか?」
「そうだ、その上で自分で判断し、何が必要なのか考えてほしい」
何が必要なのか?
多分自分の意見でいいんだ、それ求めている。
そもそも日本は相手の国の事をどこまでわかっているんだこの状況で
「日本は相手の国の状況どこまで分かっているんですか?」
霧島はニヤッと笑う。
「何もわかっていない」
「じゃあ、情報が必要って事ですよね」
「その通りだ。
誠君、困ったときは考えなさい。
それもできないではなくできる前提で考えなさい。
そうすることで初めて答えへの道が開ける」
「分かりました」
「後の事は
そういうとそっと、退出を促される。
誠もそれに応じて退出する。
霧島一人部屋の中で物思いにふけっていた。
信じがたい事だが異世界を含めた世界の超大国同士の
情報戦このグレートゲームに勝たなければならなかった。
その判断を誤れば巨大な戦争に日本は巻き込まれることになる。い
やもうすでに巻き込まれている。
一手、一手チェスの駒の様に慎重にささなければ多くの命を失うことになる。
最善の手を打ったところでそもそもどうなるかは分からない。
全ては羽黒 誠という青年が持ってくる情報にかかっていた。
霧島は判断力決断力には自信があった。
だからこそ内閣総理大臣になれたのだ。
そして誠はその中で重要なコマになってもらう必要があった。
成長してもらう第一歩。
当事者意識を作り自分で何が必要なのか考える人間を作る為のものだ。
大の大人でも当事者意識を作るのは難しい、意識の問題だからだ。
だが、そうなってもらなければ困る。
自覚があるにしろないにしろ
今はもう羽黒 誠という青年はそういう立場にあるのだ。
本来であれば自分の手元に置いて学ばせてから送りたかったがその時間はなかった。
こうして言葉を交わして成長を促すことが一人の大人として教える事ができる
唯一の事だった。
霧島の次の手は決まっていた。
—総理官邸内に銃声が轟いたのはその後の事である。
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