二十三話 黒と赤(4)
弟・信行を完全に始末して勢力を再編成した織田信長は、尾張の残り三割を支配する親戚連中をサクサクと攻略し、尾張統一を完了した。
永禄二年(1559年)一月下旬。
朝廷&室町幕府に「尾張の統治者」として公認して貰う為に、信長は八十名の側近&五百の兵で上洛する。
誰かをぶっ殺す為ではなく、陳情です。
信長だって、正式な手順を踏みます、この頃は。
ちなみに、先代の信秀が上洛した時の陳情内容をダイジェストで説明すると、
信秀「尾張の正式な国守を追放して、実効支配しました。尾張守に公認してください」
室町幕府「なめとんのか、この犯罪者一族は? お前の一族、奉行職やろが? クーデターしといて調子に乗るなよ(放送禁止用語)野郎!!」
信秀「これ、朝廷&室町幕府への、献金です(大金を払う)」
朝廷「お茶、飲んでいきます?(むふ)」
室町幕府「お話は、前向きに検討します(うふ)」
信秀「ほっ(安堵)」」
朝廷&室町幕府「はい、これが返礼品(貴族認定の官位&備後守&三河守の称号)」
信秀「…あのう、官位は有難いですけれど、備後と三河は、他の戦国大名が支配している土地ですので、絵に描いた餅レベルの称号ですよね、これ?」
朝廷「今の朝廷に出せる返礼品は、『絵に描いた餅』だけなんやでえ〜〜!!」
信秀「コスパ悪っ」
朝廷&室町幕府「要らんの?」
信秀「もらう(たは〜)」
という手続きを、踏みに行きます。
※注意! この方式は、戦国時代だけのシステムです。現在は行われていませんので、真似しないでください。
コスパの悪い陳情だが、今回は手続きを成功させないと、織田家は色々とヤバいのである。
今川家も上洛する為の大軍勢を編成中で、その推定数は、最低二万から最大四万。
通り道の尾張に対して、ついでに何をするのか、誰も楽観しない。
一番有り得るのは
「わー、大変だー、尾張がチンピラ一家に乗っ取られてしまったー。これは由緒正しい今川家が成敗しないと。えい」
という、スタイリッシュ成敗ルート。
親の代から三河を巡って戦いを続けているので、通過するだけという平和な結末は、ない。
尾張を統一した段階での、信長が使える兵力は、二千から三千。
朝廷&室町幕府から公認されれば、十倍以上の大軍勢に蹂躙される可能性を、減らせる。
かもしれない。
朝廷&室町幕府の方から、今川家に対して「休戦協定」を持ち掛けてくれれば、それで長年の抗争も止められる。
かもしれない。
何故に「かもしれない」を連呼するかというと、この時代の人々は、朝廷&室町幕府には「戦争を止められるような実力がない」事を知っている。
国同士の戦いに介入出来るような、戦力がない。
京の周辺を維持するだけで、精一杯。
そんなにも弱体化した朝廷&室町幕府に、わざわざ挨拶に出向く必要が、有るのだろうか?
有るのである。
何故なら…
京都に、行けるから。
京都に、行けるから。
尾張の存亡に関わる、重大事だからという名目で、京都に遊びに行けるから。
茶の湯、蹴鞠、芸能、ワンダフルな雅、整理された都市(戦火で、かなり破損しているけど)、個性豊かな観光名所の数々。
京都はこの時代でも行きたい観光地ナンバーワンなのです。
この旅路を最も楽しみにして、最も満喫しているのが、金森
「足、大丈夫? 自分の馬に乗りますか?」
「水分不足ですね、近くの井戸で、水を貰ってきます」
「お弁当の惣菜、分けてあげるね」
「まだ告白していないのか? 恋文の代筆をしてあげよう」
「あ、鼻毛出ているよ、切ってあげよう」
京都に行けるので、通常の三倍はハイテンションで、親切になっている。
まるで、初めて秋葉原に行く時の、趣味人の心境なのだ。
少々ウザいが、日頃サボりまくる男が、積極的に(趣味の事以外で)働いているのである。
皆は暖かい心で、見守った。
京都への旅行でウキウキしているのは、皆も同じだし。
とはいえ、織田信長と一緒の旅行なので、観光に専念は出来ない。
京都の宿に到着すると、厄介ごとが先回りをして待っていた。
別ルートで京都に向かっていた小隊から、
「自分が一番暇な人だと、思われていますね」
可近が大真面目に言うと、同僚かつ趣味仲間の蜂屋頼隆も大真面目に頷く。
「拙者も金森殿と、同類に見られていたとは。不覚」
周囲がツッコミを入れないので、二人は緊急っぽい報告を聞きに行く。
二人とも、京都での自由時間が減るのではないかと恐れているので、先延ばしにせずに速攻で解決する気でいる。
丹羽兵蔵は、金森と蜂屋が現れるや、急行した訳を報告する。
「途中の渡し(船着場)で、美濃から派遣された武士六名と兵三十名の一団と遭遇しました。内情を探ると、『
「仔細を最初から報告して下さい」
大マジの暗殺案件だったので、金森と蜂屋は、自由時間を諦めた。
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