067.やり直し
わたしの視界が暗闇から見覚えのある祭壇に移った。
司祭が呪文を唱えて、それをミニックが祈りながら待っている。最初の光景だ。
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技能:
副技:天啓
天眼
天授
天与
天秤
天運
??
天声ポイント:100pt
天命 ★★☆
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ミニックのステータスを介して確認した〈天の声〉画面の〈天命〉は星が一つ消灯している。〈天の声〉がミニックに移ったときに〈天命〉も初期値に戻っていたみたいだ。
それに新しくまた〈天運〉という副技を得たようだ。
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副技:天運
技能保持者と運気が上がる。それが悪運か良運かは天のみぞ知る。
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いまいちよくわからない副技だね。まあ、今は無視してもいい気がする。
さてこれからどうするか。ミニックにはわたしをアルトのところへ連れていってもらいたい。そのためには冒険者になってもらう。そこまでは確定だ。一瞬さっき取得した〈鍛冶〉を使って旅をすることも考えたけど、わたしが鍛冶について素人だから教えられない。だからなし。
ただ、冒険者になってもらうにしてもミニックは弱い。特攻されるとまたすぐに死んでしまうかもしれない。
安全に強くなってもらうにはどうしたらいいか。安全に戦うための防御手段が欲しい? いやできるなら安全圏から攻撃できるように遠距離攻撃が欲しいかな?
わたしは〈天与〉を発動してみる。アルトが使っていた魔法を覚えさせられないか確認するためだ。
<供与する技能、魔法または聖遺物を選択してください>
ホーリーレイを選択。
<当該魔法は保持者が使うことができません。本当によろしいですか? はい/いいえ>
なるほど。魔法は〈天与〉で取得することはできなさそう。多分ミニックに聖魔法の素養がないんだろうね。じゃあいいえで。
見るとミニックの祝福は終わっていて礼拝の場から引きずり出されていくところだ。わたしはそれについていきながら、考えるためにミニックのステータスを再度表示する。
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名前:ミニック
種族:小人族
技能:全銃技
天の声
魔法:無
恩恵:自由神の勇者の種
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最初は無魔法に遠距離魔法があることをあてにするのも少し考えた。だけど今までの魔法を見る限り「対象に触れる」ことを発動条件にするものばかりだったのが気にかかっている。他の魔法もその条件である可能性を考えるとちょっと微妙な気がした。
だからわたしは
ミニックの技能は〈全銃技〉だ。アルトのときは最初に100pt使ったときに聖遺物の双剣が手に入った。それを考えるとミニックの場合は銃が手に入るんじゃないだろうか。
そもそもこの世界に来てから銃なんか見たことがない。〈全銃技〉がそもそも〈天授〉頼みの技能である可能性すらある。
もちろん確証はない。ないけどわたしはこれが一番ミニックが死なない可能性が高いと思うんだよね。もちろん異論は認めるけども。
ということで天声ポイントを100pt使用して〈天授〉を発動!
<天声ポイント100ptの消費を確認しました。〈天授〉を開始します……完了しました。ニュートラルアークデュオを取得しました>
ミニックの前に銀色に光る2丁の拳銃が現れる。
「なんなのです!?」
よし、賭けに勝った! 成功だ。欲しかった遠距離攻撃手段を手に入れた! ミニックが驚いているけど今はそれよりもこの拳銃を確認する。
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名称:ニュートラルアークデュオ
銀色の輝きを放つ小柄の2丁の拳銃。銃技系の技能を持つ者のみ使用でき、念じることで異空間から自由に収納、取出が可能。
特徴として以下の4点がある
・銃弾の反動を無視する
・銃弾を補充することなく自動装填される
・念じることで弾丸の種類を選ぶことができる。選べるのは空気弾、プラスチック弾、フルメタルジャケット弾のいずれか
・念じることで銃弾に魔法を付与でき、銃撃に特殊効果を与える
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なかなか強いのではないだろうか? ミニックが小人族であるのを考慮した反動を無視する効果は地味に嬉しいし、自動装填も隙がなくなるため強い。弾丸の種類を選べるのはちょっと今は使い道が思い浮かばないけど。あと魔法の付与効果は強そうだけど今はまともな魔法がないから使えないかな?
強そうな聖遺物をゲットできたけど後の問題はどれだけミニックが銃を扱えるかというところだね。
よし、そろそろわたしの正体を現そうか。見えないけど。
『さてミニックくん』
「な、なんなのです!?」
『キミにその武器を与えよう。その代わりにわたしのいうことに従ってもらう』
「これが武器、なのです? それにあなたはなんなのです?」
うん。悪魔プレイは疲れた。これからは普通に行こう。
『キミの技能の〈天の声〉だよ』
「てんの、こえ?」
前回と全く同じ反応だ。ちょっと面白い。
『それで? これから家に帰るの?』
「なんでわかるのです!? もしやあなたは悪魔なのです!?」
『いや。だから〈天の声〉だって言ってるのに。ああ、それと帰っても無駄だよ? 父親に追い出されるだけだから』
「……わからないのです」
『まあ勝手にしたらいいけど』
時間の無駄になるだけだけどね。それで気が済むなら行けばいいよ。
ミニックが浮かない足取りで家への道を歩いていく。
『そうだ。その武器はしまっておいてね? あの親父、奪おうとしてきそうだから』
「しまう、です?」
ミニックが持っていた麻袋の中に2丁拳銃ニュートラルアークデュオを入れようとする。
『違うよ。しまうように念じてみて。異空間が現れるから』
「念じる? 異空間? なのです?」
ミニックにはてなマークが浮かんでる。
あー説明するのめんどくさい。わたしが念じたら異空間出てこないかな?
「なんか黒いグルグルが出てきたのです!?」
出てきちゃったよ異空間。わたしでも使えちゃうみたいだね。
『じゃあ、その中にしまっといて?』
「わ、わかったのです」
恐る恐る異空間に近づいて拳銃を投げ入れる。
『取り出すときはその空間から取り出すことになるからね?』
「えっ?」
ミニックは青ざめた顔をしている。あの空間に手を突っ込むのは怖いみたいだね。
そういえば出し方によっては手を突っ込まなくてもいいんだよなーと後で思ったけど、まあそんな細かいことはどうでもいいよね?
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