043.シルヴァの幻影
アルトとノーアはボス部屋の前で銀と黒で覆われたドラゴンを見ていた。
部屋の中は月明かりに照らされた夜空が広がり、その光を反射して銀色の鱗が輝いている。
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種族:シルヴァーノクサドラゴンの幻影
夜と銀の星を司る龍型の幻獣の姿を模したドラゴン型の魔物。Sランク。その体は銀と黒の鱗で覆われ、夜の闇に溶け込むことができる。影を操り相手を拘束したり攻撃の手段としたりする。複数の分身体を生み出して攻撃を引きつけ、分身体による錯覚を起こす。光と闇の両方のブレスを操り闇を消し去り、光を侵食する。自身の空間座標をを操ることができ、瞬間転移し敵を翻弄する。弱点はない。
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シルヴァの幻影らしい。そして弱点がない。〈天眼〉で確認できた中で弱点がないのは初めてかな? かなりの強敵かもしれない。
『シルヴァの幻影だね』
「いつも通り」<いつも通りでいこう>
「ですね」
アルトが双剣とノーアの剣に魔法を付与する。ホーリースパークとアビスファイアだ。雷と炎を纏った剣を構えながら二人はボス部屋の門を駆け潜っていく。
『後ろ!』
『ホーリーライト!』
アルトが聖なる光を発した。一瞬何をしたのかと思ったが
そうか!
「GJ」<よくやった>
ノーアが
「ホーリーサンクチュアリ!」
アルトが聖域を展開する。これで
不意に
複数のドラゴンが爪を突き立てようとアルトとノーアの元に迫る。二人はそれをかわし光の剣で切断していく。切断されたのは分身体だろう。それが白い煙になって空気中に溶けていく。
ドラゴンの群れを二人が次々と斬り飛ばしていく。次々と迫り来る竜たちに押されることなく白い霧へと帰していく。
一条の光線が二人に向かって放たれた! 光のブレスだ。応戦していた分身体もろともアルトたちを消し去ろうとする。
「ホーリーバリア!」
光のバリアが展開された。それがブレスとぶつかりバリアが光の破片となって消え、軌道を逸らしたブレスが横にそれていく。ホーリーバリアが破られた?
「ブレスが強いです」
再度ブレスが放たれた。先ほどよりも巨大な光線がアルトたちに迫っていく。
『バリアを二重にして!』
「ホーリーバリア!」『ホーリーバリア!』
アルトがバリアを二重詠唱した。ブレスの前に2枚の光のバリアが生成される。巨大な光線は一つのバリアを突き破り破壊する。しかしもう一つのバリアがそれを阻む。
『アルト! 後ろ!』
アルトは後ろを見ずに剣だけ後ろに回して
「ウインドブロウ!」
ノーアの風魔法が
「転移が厄介ですね」
「ん。予測?」<うん。予測するしかないかも?>
「ですね。予測して拘束できれば」
「試す」<試してみる>
再度
「〈影操〉」
「アビスシャドウ!」
ノーアが副技〈影操〉を発動した。操った影が
二人が剣を振り下ろした。その剣はドラゴンを捕らえ、2対の翼を削ぎ落とす。
黒と白の光線が
「ホーリースパーク!」『アビスファイア!』
アルトが聖雷と冥炎を二重詠唱した。闇と光のブレスと雷と炎が入り混じったエネルギーが衝突し一瞬進退をせめぎ合い均衡が崩れた。闇と光のブレスを突き破り聖雷と冥炎の魔法が
「やった?」<倒した?>
『フラグ!』
「む。転移厄介」<やっぱり転移が厄介だね。倒したと思ったのに>
「ですね。あの。ノーアさんにお願いがあるんですけど」
◇◇◇
ノーアが
実は〈気配遮断〉と聖魔法の付与は相性が悪く、付与によって光ってしまい気配がバレてしまっていたため併用することはできなかった。しかしアビスシャドウは影。〈気配遮断〉と相性がいいため気配を断ったまま敵に近づくことができる。
影剣が
「アルト!」<アルト! 任せた!>
アルトが
「やっぱりそうだと思いました」
初めてアビスシャドウを使ったとき
アルトが走りながら精神集中をする。射程圏内に入ったところでホーリーサンクチュアリを展開した。
アルトが
「ホーリースパーク!」『アビスファイア!』
聖雷と冥炎の奔流が放たれる。至近距離で放たれたそれは
◇◇◇
アルトたちはドロップアイテムを拾うとボス部屋の外へ出てシルヴァに近づいていった。
アルトはとてもにこやかな表情をしている。激戦を制した達成感そうさせているのかもしれないね。だけど、勝って兜の緒を締めよと言う。
「シルヴァさんの幻影を倒してきました」
「お疲れ様です。ですがあんな魔物とわたしを一緒にしないでいただけますか?」
アルトが口を滑らせた。シルヴァが柔和な相貌を崩して額に青筋を立てている……。魔物と一緒にされるのは幻獣としては看過できないと言うことかな? アルトさん。やってしまったね……。
えっわたしのせい? わたしが戦い始めに『シルヴァの幻影だね』なんて言ったから? そんなことないよね?
アルトさん。やめて。恨めしげな顔でわたしを睨まないで……。
<天命ポイントが更新されました>
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すみません。ちょうど1章が書き終わったのと、ちょっと思うところがあるので1章完結まで更新ペースを上げようかと思います。
次話は2/7の12時投稿予定で本日6話投稿いたします。
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